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Food Experience Story
2024.10.15. | 

【Vol.1】浅草初のCraft SAKE醸造所 『木花之醸造所』を営む 作業療法士 堀木慎太郎 

浅草初のクラフト酒の醸造所、『木花之醸造所』。そして併設する店舗「ALL (W)RIGHT -sake place-」は、自家製醸造酒や100種類以上の厳選された日本酒、オリジナルのクラフトビールが楽しめる特別な場所。酒の肴が揃い、落ち着いた雰囲気の中で食事とお酒を堪能できるこの店には、国内外から多くの人が訪れ、日本の伝統文化に触れながら至福のひとときを過ごしています。
この店のオーナーは、難関の国家資格としても知られる作業療法士として医療・福祉、保育の現場で活躍してきた堀木慎太郎さん。そんな経歴をもちながら、なぜ食の道を歩むことになったのか、そこには、どんな想いがあったのか。今回から2回にわたって堀木さんのインタビュー記事をお届けします。

恥ずかしがり屋で引っ込み思案の子供時代。

オープン前のお店に着くと笑顔で出迎えてくれた堀木さん。インタビュー前には、冗談まじりの軽快なトークで楽しませてくれた堀木さんは一体どんな人生を歩んできたのか、まずは幼少期からのお話をうかがいました。

−−作業療法士でありながら醸造所を併設する飲食店を営んでいる堀木さんについて、編集部としてもとても興味がありました!今日は堀木さんの生い立ちから現在に至るまでのお話を聞かせていただきたいと思っています!まずは子供の頃のお話をお聞かせいただけますか?

堀木さん:はい、宜しくお願いします!小さい頃は本当に子供らしい子供で、それでとにかく恥ずかしがり屋でした。人前で話したり何かをするのがとても苦手で引っ込み事案だったんです。それはもう周りが心配するくらいでした。(笑)

 

−−今目の前にいる堀木さんのキャラクターからはあまり、想像できませんね!(笑)

堀木さん:本当ですよね!でも当時、とにかく恥ずかしがり屋だった自分のことをなんとかしようと、親戚のおばさんが芸能事務所に応募をしたら、、、あろうことか合格してしまったんですよ!!(笑)そこからトントン拍子に、子役タレントとしてテレビCMを中心に出演させていただいて、幼稚園から小5まで、某ファーストフードやシチューのCMにもよく出ていたんです。(笑)

 

−−えー!子役タレントですか!?引っ込み思案で恥ずかしがり屋の少年が「TVに出てる!」って、周囲からも驚かれたのではないですか?

堀木さん:店舗のポスターにもなっていたので、地元ではちょっと有名になっちゃいましたね。(笑)だけど、自分的には、学校でも現場でも周囲から「自分は浮いてる」って感じることも多かったんですよ。撮影で学校を早退することもありましたし、現場は現場でプロ意識が高い子が多くて馴染めなかったり。例えば、「ひこうき」を演技で表現してみてと言われれば、みんな“ブーン”って演技をするけど、自分はそれがなにか恥ずかしくてできない。恥ずかしがり屋の根本は変わっていなかったんですよね!(笑)結局、当時のマネージャーさんが結婚をすることを機に子役タレントはスパッと辞めて、そこからはバスケットを頑張りましたね!

 

障害者のために、もっと根本的にできることを。

−−なるほど、そういった疎外感のようなものも感じながらの子役タレント時代だったんですね。小学5年生で芸能活動を辞めてからは、バスケですか!いいですね!なにかそれが未来に繋がっていくのでしょうか?

堀木さん:そうですね、作業療法士になったという点ではバスケでの経験が繋がっていますね!自分が所属したバスケチームでは色んな障害を持った子どもたちと一緒にやることがあって、練習では1人1人、ペアを組んで筋トレをしたり彼らと触れ合う時間も結構ありました。

その時の経験として、普段は消極的な子が自分とペアを組んだときに少しずつ積極的に動きだすということがあったんです。すると、周囲から「すごいね」って評価を受けるようになりました。でも、そういった評価を受ける自分を素直に喜べない天邪鬼みたいなところがあるので、何がすごいんだろう?ってちょっと違和感も持っていたんです。

そんなことが続いてたので自分ではよくわからないけど、やっぱり周りの評価も素直に受け止めてみようと思うようにしました。その頃から「障害を持つ人々に対してもっと根本的に何かできるのではないか」と自分なりに漠然と考えるようになったんですよね。

 

−−そういった経験が作業療法士への道のきっかけとなっていくんですね!どうして、作業療法士を選んだのでしょうか?

堀木さん:自分と一緒に住んでいた祖母が全盲だったこともあって、「人のサポートをする仕事」に興味を持ち始めていたというのと、もう一つはなにか人と同じっていうのが凄く苦手というか、人があまり選ばない道に進みたい性格もありますね!(笑)

もともと大学にいくつもりもなく、高校3年の夏に進路は全然決まってないなかで、最終的に作業療法士を目指すことを決意したんです!ところが、ここを目指す人って、本当に成績優秀な人ばかりで、すごく狭き門だということを、進路を決めてから知ったんですよね。その当時は、作業療法士はまだまだ少なくて、全国で3万人しかいなかったんです!

 

1日13時間の猛勉強、
“人を幸せにする仕事”作業療法士に

−−ちなみに堀木さんはその成績優秀者?といわれる人たちの中にはいっていたんですか?

堀木さん:全然です!もう教科書なんて買った時の状態で紐までついている綺麗なままの状態でしたから!基本的に受験するような子の評定平均は4.2なのですが、私の評定平均は2.7で、これで受かったら奇跡だぞと周りには言われましたよ!ただ、それなのに、皆勤賞でしたからね!(笑)

 

−−皆勤賞!?学校へ行くのはすごい好きじゃないですか!(笑)では勉強はそこから猛勉強をしたわけですね?

堀木さん:そうです!勉強は作業療法士の合格という壁の高さを知ってからのスタートでした!でも「やばい」ってなると力を発揮するタイプというか、1日13時間くらいは勉強をしましたよ!結果合格することができて、周りも「奇跡を起こしたぞ!」って驚いていましたね!

 

−−すごいです、、なかなかできることじゃないですよね!作業療法士について私も少し調べたのですが、家事や仕事、お風呂に入ったりトイレに入ることなど日常生活をする上での行為を“作業”として、その作業を行えるようにするために、その人の状況に合わせたトレーニングやリハビリなどしてサポートをするお仕事だと認識したのですが、、、改めて作業療法士とはどんな役割をもつお仕事なのか教えていただけますか?

堀木さん:幸せって人によって違うけど、「人を幸せにする仕事」かなぁと思っています!(笑)
例えば、当たり前に色んなことができることを幸せと感じている人を基準として“ゼロ”だとします。そこから病気や障害で不自由になると、それがマイナスになりますよね。それを病院でなんとか処置をしたとしても、プラス1や2にはならないんです。でも、マイナスになっている人たちを、いかにゼロに近づけるかで幸せに近づいていくと思うし、そこから家族を含めてのリハビリだったりとアクティブに関わっていくことで、プラスになることだって否定できないんです。

手足が不自由で死んでしまいたいという人も中にはいらっしゃいますし、一方で有名な乙武さんは手足がなくて不幸だと思っているのかというとおそらく違うと思うんです。私たちは、使えなくなった身体機能を使えるようにすることも外せない部分ではありますが、「使えないからマイナスではないよ」という考え方と自分自身とどう向き合い、知っていくか。

作業療法士は、そういった考え方で、心の部分のケアもして導いていくことが大事な役割だと思っていますね。

 

幼児期の段階で子供や親御さんに寄り添いたい

作業療法士になってから病院や介護老人保健施設で経験を積んでいった堀木さん。昨今では、少子化が進み、また発達障害なども増加傾向にあるという背景から“作業療法士としてもっと子供たちがいる現場に関わっていこう”と考えたといいます。

現在では、小学校や学童でも作業療法士との連携が進み、堀木さんのように子供たちの現場に目を向ける人も増えているそうです。そんな中、堀木さんが関わっているのは保育園。児童との直接的なコミュニケーションを通じて指導を行うだけでなく、親御さんへのサポートやアドバイスもされているそうです。

 

−−作業療法士として、どんな想いで保育園に関わっていらっしゃるのでしょうか?

堀木さん:最近は小学生が発達障害といわれたというのをよく耳にしますよね。きっと幼児期から色々と悩んで育てている親御さんも少なくないと思うんです。
私は、子供にとっては幼児期の体験や環境が成長に影響していくので、まずは小学校に上がる前の段階から、子供とその親御さんたちに関わっていくことが結構重要なことだと思うんですよね!

特に親は、みんなわからないなりに頑張って子育てをしながら、場合によっては知らず知らずに悪影響を及ぼすアプローチをしてしまっているかもしれない。でもそれを、その幼稚園児期や保育園時期の段階で寄り添ってあげられれば、その先が変えられるんじゃないかと思っているんです。

また、障害があるわけじゃなくても運動が苦手だったり、すこしボーッとしているような子がいたり、そういう子が保育園にいても、保育士さんではわからないことや、対処できないことがいっぱいあるんですよね。だから私たちみたいな、作業療法士が小学校にあがる前の場に関わることはとても重要なことじゃないかって思います!

 

 

自分のためではなく、子供のために
小さなことでもできることをやってほしい

−−なるほど、子供達も親御さんたちも、保育士さんにもわからないことがあるわけですよね。そうして実際にコミュニケーションを取りながら、向き合い方や捉え方を一緒に考えていくんですね。子育てをされている方々で専門的な知識がなくても、意識できそうな取り組みがあるとしたらどういうところでしょうか?

堀木さん:そうですね、すごく単純な答えかもしれませんが、その子のためにできるベストはなにか、その理想を追って尽くしてあげることじゃないでしょうか。もちろん経済的な理由や環境面でできないこともあるかもしれないけど、自分のできることはやってあげる。ということじゃないかなって思うんです!

例えば、自転車の後ろに乗せたらちゃんとシートベルトをしてあげるとか、小さなことでもできる事をやってあげること。“個を尊重するのが大切”と言われているはずなのに、実際は自分だけ良ければいいという考えになっているということもよくあります。「相手を思いやる気持ち」これが大切なことだと思いますね。

 

−−ありがとうございます!相手を思いやる気持ちを意識するだけで、行動や見方に小さな変化がおきるかもしれませんね!こうした考え方が、堀木さんのお店でのサービスにも繋がっていくような気がしました。子育てという側面のお話だけでも、もっともっと聞いていきたいところですが、ここから少しこのお店を始めた理由や経緯も伺っていきたいと思います!

 

恥ずかしがり屋の少年から、子役タレント。そしてバスケットやお祖母様を通して障害をもつ方々を身近に感じながら過ごしてきた堀木さん。次回Vol.2では、“もっと根本的にできることを”という想いをもって、すさまじい努力で作業療法士の資格を取得してから、高齢者や子供達の未来を支える堀木さんが、なぜ飲食の世界に足を踏み入れたのかを伺っていきます!

Vol.2はこちら

 

–– Information –
木花之醸造所
ALL (W)RIGHT -sake place-

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