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意外と知らないローカルフード
2025.03.31. | 

【福岡】『意外と知らないローカルフード』地元の味を求めて。飛んで福岡!

食の歴史や文化、そして土地の魅力がぎゅっと詰まった“地域の味”を再発見して楽しく紹介する「意外と知らないローカルフード」。このコーナーでは“誰もが知っているあのメニュー”ではなく、知る人ぞ知るローカルフードや、昔から変わらないその土地ならではのこだわりの逸品、時代を超えて今もなお愛される一皿、その「食」の背景にある物語をひも解きながら、その地域ならではの味とは何なのかをカジュアルにお届けします!

第4回目となる今回は『福岡』。3月末には玄関となる福岡空港の第2滑走路が運用を開始し、国際線旅客ターミナルビルの改築工事も終了。この春、福岡は国内外から注目される都市です。

とんこつラーメンや明太子など、グルメに事欠かない福岡にどんなローカルフードがあるのか、調べてみました!

何かが違う!? アレで「すき焼き」

今回、調査に向かったのは福岡空港からおよそ20km北に位置する古賀市。九州最大の都市である福岡市に隣接し、東には緑豊かな山々を持ち、西には美しい海岸が広がる、自然に恵まれた街です。そんな、古賀市で食べられているローカルフードが「すき焼き」。誰もが知る、国民的な鍋料理です。

ここで皆さま、すき焼きといえば何を想像しますか?割り下で「煮る」関東風と、牛脂を使って「焼く」関西風の違いはあれど、すき焼きのルーツは明治時代に日本中に広まった「牛鍋」です。甘辛く煮た(または焼いた)牛肉を、思いっきり溶き卵に泳がせる……それがすき焼きの醍醐味ですよね。

しかし、古賀市とその周辺の地域では、すき焼きといえば「鶏肉」を使います。鍋で鶏肉を焼き、砂糖と醤油で味を整えたら、そこに白菜や春菊、さつまいも、ゴボウなどの季節の野菜を入れる。作り方は牛肉を使うすき焼きとほぼ一緒ですが、そこはやっぱり鶏肉! 出汁が違います。野菜から出た水分とも絡み合い、濃厚な甘辛味がおいしい「鶏すき」の完成です。

牛肉よりもあっさりなのに、旨みがしっかりと出ているのが特徴です。

 

福岡「鶏食文化」の歴史的中心地

そういえば、福岡では水炊きやがめ煮(筑前煮)など、鶏肉を好んで食べる食文化が定着しています。なぜ、福岡では鶏食がポピュラーになったのでしょう? 福岡県で鶏肉を食べる習慣が生まれた背景を知るには、江戸時代までさかのぼる必要があります。

享保の飢饉など、大規模な飢饉に見舞われ財政が枯渇したことから、福岡藩では「鶏卵仕組」という役所を設置して、天候に左右されにくい養鶏に力を入れました。さらに、古賀市から宗像市周辺などの地域を治めていた黒田藩では、鶏卵を「筑前卵」として献上品や特産品としてブランド化。この地域の農家や下級武士の間で養鶏が盛んになり、老いて卵を産まなくなった親鶏を食べることが習慣になったといいます。

現在、古賀市には、福岡県が誇る「はかた一番どり」の加工場があります。福岡県民の鶏肉愛の結晶とも言えるブランド鶏の重要拠点が置かれているのも、歴史の積み重ねがあってこそ。古賀市はまさに、福岡「鶏食文化」の中心地となっています。

 

今日の大トリは「そうめん」!

さて、ここまで読んでいただき、「鶏すき」を「水炊き」「もつ鍋」と並ぶ福岡三大鍋の一つとすることに異論はないかと思いますが、最後にこれだけ、お伝えさせてください。

「鍋のシメ」についてです。雑炊にするか、ラーメンにするか、うどんにするか……それはいつだって重要な問題です。しかし、ここでも地元民はちょっと違います。

なんと、鶏すきの締めには「そうめん」がおすすめ!
肉だけでなく、皮、肝、玉ひもなど、あらゆる部位を余すことなく使用する鶏すきのスープをたっぷり含ませるには、うどんやラーメンよりも味がよく絡む、そうめんなんだとか。

シメまでしっかり味わい尽くせば、あなたもすっかり鶏すきのトリコですね(笑)。

 

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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