2021.09.21. | 

[Vol.2]街に新しい流れをつくる、カフェと建築の仕掛け。ONE_THROW東海林佳介×ツバメアーキテクツ山道拓人+鈴木志乃舞×Yuinchu小野正視

今年8月、南武線宿河原にオープンした「ONE_THROW」はバスケットコート併設のコーヒースタンドです。
オーナー東海林さんの「人がつながるきっかけとなる場にしたい」との願いは、どのように具体化したのでしょうか。
オーナーとして、設計者として、カフェプロデューサーとして、「ONE_THROW」の誕生に深く関わった3組の人々が語ります。

 

「ヘトヘトになってもお客さんが喜ぶ顔がみたい」。願いを叶えるカフェのオペレーション

「バスケットコートの横に飲食サービスがあったらいいな」。そんなアイディアから出発して「ONE_THROW」を始めたオーナーの東海林さん。実は、これまでに飲食サービスの経験はないそうです。まったく未知の地点から、どのようにスタートしたのでしょうか。

 

小野:僕たちの運営するHYPHEN TOKYOは、飲食未経験の人でもトライできるサポートを手がけていて、そういった飲食オペレーションの知見をもっています。東海林さんが飲食未経験だと聞き、まずメニューはミニマムにして、オペレーションもシンプルなものにしようと思ったんです。

ところがアイディアを練る過程で、東海林さんの希望するメニューがどんどん増えてきたんです。最初はドリンクだけのイメージだったのですが、いつのまにか、「ホットドッグも入れましょう」と。

 

東海林さん:せっかく来てくれた人につまらないと思われるよりは、オペレーションが少々大変になってもメニューを増やしたかったんです。

 

小野:お客さんを喜ばせたくてメニューが増えていったんですよね。その分覚えることやることが増えて、かなり大変だったのでは?

 

東海林さん:そうですね。ついこの間も、いっぱいいっぱいになってました(笑)。

 

小野:オープン後、ちょっと疲れてるかな?とは思ってました(笑)。お客さんに喜んでほしい気持ちと、メニューを間違いなく提供しないといけないという気持ちと、バスケットスペースのボールの音を聞きながら「問題ないかな?」という気持ちが混じって、普通の3倍くらい大変なんだと思います。

 

いくつもの公園のバスケットコートを見て歩く

体育館や公園ではない場所にバスケットコートをつくるのはかなり珍しいことなのだそうです。設計や施工はどんなプロセスで進んでいったのでしょうか。ツバメアーキテクツの山道さんと鈴木さんに伺いました。

 

鈴木さん:まずはバスケットコートはどんな施工会社がつくっているのかを調べることからはじめました。その中で、公園や学校のグラウンドをつくる専門の施工業者がいることが分かって。

 

山道さん:そういった会社は、体育館など、普段は広いスペースをつくっている人たちなので、「こんなに小さいスペースは初めてです」と(笑)。でもみなさん、新しい試みに面白がって取り組んでくださいました。

 

鈴木さん:最初は、大きな建物を建てるわけではないのでそんなに時間はかからないだろうと思っていたんです。プロジェクトを進めるうちに、立地が線路際なので鉄道会社との協議が必要になったり、キッチンカーを停めるので、結局電気や水道など新築と変わらないようなインフラの整備が必要だろうという議論になりまして。当初の予定より時間をかけてつくっていきました。

また、バスケットコートのある公園をあちこち見て歩いたりもしましたね。平日の日中、保育園児にまぎれて公園の排水の様子をみたり、地面の材質を比べたり(笑)。

 

山道さん:地面の材質は、最初はアスファルトでいいと思っていたのですが、プレイした時の感覚やボールがバウンドする音の吸収面から、ゴムチップ製のものを採用しました。東海林さんにサンプルを送って、その上でボールをバウンドさせてもらったんですよね。

 

東海林さん:そうですね。バウンドしてみた瞬間「こっちの方がいいな」と。

 

鈴木さん:ネットの天井の高さを決める時も、東海林さんがシュートする動画を撮影していただいて、そこから軌道を測りボールがぶつからない高さを割り出しました。

 

山道さん:そうやって細かなディティールをひとつずつ選定していった結果、サイズこそ小さいけれど、かなり本格的なスペックの場になっています。

 

安全を見守るデザインの工夫

東海林さん:初めて山道さんにお会いした時に、山道さんが手がけた下北沢のBONUS TRACK下北沢線路街 空き地を見せていただいたんです。「ONE_THROW」の形をイメージする上で、かなり参考になりました。

 

山道さん:特に下北沢線路街 空き地が、「ONE_THROW」のイメージに近かったのではないでしょうか。アスファルトの上にコンテナが2台置いてあって、その奥に遊び場があるんです。奥に遊び場があって手前に大人の居場所がある形だと、子どもが簡単に飛び出すことがなく、大人もくつろぎながら見守ることができるんですよね。「ONE_THROW」は線路も近いですし、安全面に配慮しています。

 

東海林さん:今までにない新しいスペースができると、近くに住んでいる人の中には不安に思う人もいるかもしれません。うるさいな、とか危ないな、と思われないよう、いろんな工夫や配慮をしたいですね。

 

山道さん:そういえば、さっき、「ONE_THROW」の目の前の踏切でおばあさんが立ち往生していたのを鈴木が見つけて、声をかけていました。そういった街の見守りのような役割も生まれてきそうですよね。

こんな風に、東海林さんがつくった場によって、街にもいろいろな変化が生まれてくると思います。予想できなかったどんな変化が現れるのか、楽しみですね。

 

次回は9/28(火)に公開予定です。
設計上、オペレーション上のさまざまなチャレンジを経てオープンから約1ヶ月が経過する「ONE_THROW」。この1ヶ月の間に見えてきた手応えや今後の展望についてお伝えします。(つづく)

 

■座談会 メンバープロフィール

東海林 佳介(しょうじ・けいすけ)
ONE_THROW 代表
今ハマっていることは?ーキャンプとサウナ

山道 拓人(さんどう・たくと)
ツバメアーキテクツ代表取締役
今ハマっていることは?ードーナツ

鈴木 志乃舞(すずき・しのぶ)
ツバメアーキテクツ

今ハマっていることは?ー切り絵と版画

小野 正視(おの・ただし)
株式会社 Yuinchu代表取締役
今ハマっていることは?ーバスケ

 

– Information –

ONE_THROW
神奈川県川崎市多摩区宿河原3丁目8−3
JR南武線 宿河原駅 徒歩3分

https://www.instagram.com/one_throw0131/

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。