2018.08.07. | 

野菜も料理も、その日その時しか出会えないものがある。ライブで味わう、収穫&クッキングイベント

寺島なす、東京うど、半次郎きゅうりなど、江戸時代から続く伝統野菜を含む多種多様な野菜をつくっている「小坂農園」。ここで収穫した野菜を、国分寺のカフェ「SWITCH」でシェフが調理。収穫からクッキングまで、その日のうちに行われる、“ライブ”な食のイベントに参加してきました。

名水百選の水を活かした都市型農業地域の国分寺で、江戸時代から3代続く「小坂農園」の野菜を収穫

時刻は夕方の4時。7月の4時は夕方というにはまだまだ日差しが強く、うだるような暑さです。そんな灼熱の最中に畑で収穫体験をしようという12名の酔狂なみなさんが、国分寺の駅に次々と到着しました。

2018年7月29日に開催された、ライブ収穫&クッキングイベント。「収穫やクッキングが“ライブ”とは、一体どういうことだろう?」という好奇心から、このイベントに参加してきました。
まずは「収穫」のライブからスタート。目指すは国分寺駅から徒歩約15分の「小坂農園」です。案内人は、南部良太(なんぶ・りょうた)さん。南部さんは「農業デザイナー」という肩書きをもち、国分寺市の農業と野菜のすばらしさをPRする「こくベジプロジェクト」の担当者です。

小坂農園を目指す途中、いくつかのお店を指差して、「このお店はこくベジを使ってるんですよ」と教えてくれました。現在、こくベジを使っている国分寺の飲食店は約80店舗。なんと、南部さんは野菜の配送も手がけているそうです。

「このあたりは江戸時代から新田開発が進み、それ以来、畑に寄り添って生きてきたエリアなんですよ」。
「この小川は名水百選のひとつ。この水で農作物が育つんです」。
「都市型農業はどこも同じだと思いますが、相続のタイミングでどんどん宅地化が進んでいます」。

道中、南部さんから国分寺の農業について興味深いお話を聞いているうちに、あっという間に「小坂農園」に到着しました。3代続く農園の2代目、小坂良夫(こさか・よしお)さんが、野菜の説明をしてくれました。

「小坂農園」の野菜は、六本木のマルシェや都心のお店でも愛用されている、売れっ子野菜なんだそうです。南部さんいわく、「小坂さんの野菜は、ワイルドさが魅力」とのこと。野菜がワイルドって、どういうこと?! 収穫への期待がますます高まっていきました。

 

 

畑でそのまま「ガブリ!」
味付けなんてしなくても、野菜の味は濃厚でした

「うちは少量多品目の野菜をつくっています。珍しい野菜や伝統野菜も育てていて、黄色や紫のカラフルなにんじんや、トンデビアンカという卵形のなす、ピュアホワイトという白いとうもろこし、寺島なす、東京うど、半次郎きゅうりなど、年間100種類以上はあるんじゃないかな。まあ、正確に数えたことはないけどね(笑)」。小坂さんのワイルドな説明を聞きながら、畑の中へと進んでいきます。

この日はなす、きゅうり、枝豆、にんじん、ミニとまとを収穫することに。それぞれの品種の特徴をうかがいながら、いざ、収穫。

「ここから茎が出てるでしょう? ここを持って、上を切るんです」、小坂さんが、自らの頭を野菜に見立てて収穫のコツを教えてくれました。うーん、ワイルドです!

収穫したばかりの野菜はどれも生命力でいっぱいです。その野菜を見ているうちに、思わず「これ、かじってもいいですか」と言ってしまいました。そして、本当にその場でかじっちゃいました(笑)。「瑞々しくって、甘い!」。味付けをしなくてもしっかりと野菜の味がして、ぺろりと食べてしまいました。

「ミニとまとは10個くらい収穫してくださいね。もう少しくらい獲ってもいいかな。そうだな、20個くらい」。小坂さんは終始この調子で、たずねるたびに収穫してもいい量が増えていきました(笑)。うーん、やっぱりワイルドです!

赤しそを発見した南部さんが、「赤しそのジュース、美味しいんですよね。小坂さん、これ、ちょっともらってもいいですか」と言うと、「いいけど、高いよー」と笑う小坂さん。えっ、あんなにたくさん収穫してもOKだったのに(笑)。ワイルドかつ、お茶目な小坂さんです。

そんな冗談もはさみつつ、農園での収穫ライブは終了しました。小坂さんにお礼をつげ、一同は国分寺駅前のカフェ、「SWITCH」へ向かいます。

 

 

ハプニングも、“ライブ”の一部
あるもの活かし切ったシェフの料理がずらりと並びました

「SWITCH」のコンセプトは、「おなかいっぱい、野菜を」。国分寺の野菜をふんだんに使い、さらにお肉料理が乗った看板メニューのサラダは、サラダとは思えないほどの食べごたえだそうです。そんな「SWITCH」を会場に、「クッキング」のライブがスタート。畑から戻ると、すでに店内には美味しい香りが漂っていました。

クッキングの担当は、Mo:takeのヘッドシェフ・フードクリエイター、坂本英文(さかもと・ひでふみ)さん。「あれ、かぼちゃは収穫しなかったの?」という坂本さんの声が厨房から聞こえてきます。どうやら、事前の情報ではかぼちゃがあると聞いていたようです。こんなハプニングも、まさにライブならでは。

そんなハプニングに関係なく、予定通り宴はスタートしました。ビール、ワインなどが飲み放題のうえ、こくベジをつかったサングリアまで揃っていたのはうれしかったですね。収穫で汗をかいたみなさん、美味しそうに喉を鳴らしていました。

1品目は、サラダ。ドレッシングは国分寺で獲れたブルーベリーが使われており、甘くてフレッシュ。そして、収穫したばかりのミニとまとときゅうりがこの上なく瑞々しい!

インカのめざめという品種のじゃがいもとししとうのハーブソテー、赤いオクラ入りのゴーヤチャンプルー、夏野菜と若鶏のスパイス煮、収穫した野菜をふんだんに使ったリゾットなど、テンポ良く料理が運ばれて来るたび、参加者のみなさんが「わぁ!」と歓喜の声をあげます。すっかり打ち解けた雰囲気の中、会話もお酒も進みます。

そして、満を持してやってきたのは、枝豆の塩ゆで。ここにきて、素材そのままをもってくるなんて、「坂本さんの演出、ニクい!」と思いましたね。そして、この枝豆が本当に美味しかったのです。お皿が届いた瞬間から、野性味のある香りが漂い、口に入れると絶妙の茹で加減と塩加減。「かぼちゃがない!」と動揺していたのかと思いきや、まったくそんなことはなく、むしろ即興のクッキングライブを楽しんでいるようでした。

その後、メインディッシュとしてサーブされたのは、にんじんとなすの米粉クリームソテー。にんじんがまるで肉のような存在感を出していました。米粉のクリームを絡めて口に入れると、もう、満場一致のメインの貫禄!「普段はそんなに野菜を食べないんですよ」。お子さん連れで参加されていたお母さんが、にんじんをもりもり食べる子ども達に驚いていました。

デザートのパンナコッタをいただき、心ゆくまで食べて飲んだ一行は、すっかり満たされた状態になり、その日はお開きとなりました。「“ライブ”として、収穫から調理までを味わう。こんなに豊かな体験は、そうそうないかもしれない」。心も身体も満ち足りた状態の帰路にて、そんなことを思いました。

次回の開催予定は秋ごろだそうです。きっと、畑で収穫できる野菜もガラリと変わっていることでしょう。もちろん、それに合わせてクッキングも変わっていくでしょう。これこそが、まさに“ライブ”。一期一会の出会いに魅せられた、ライブ収穫&クッキングイベントでした。

ライター / 界外 亜由美

数社の広告制作会社でクリエイティブ・ディレクター/コピーライターとして活動。2018年2月14日、mugichocolate株式会社を設立。コピーライターとして培った言葉の力と、デジタル・ソーシャル・マーケティングを掛け合わせた、総合的なコミュニケーション設計を行う。夫と2008年生まれの息子の3人家族。料理、お酒、詩歌が好き。

Mo:take MAGAZINE > 野菜も料理も、その日その時しか出会えないものがある。ライブで味わう、収穫&クッキングイベント