SERIES
Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ
2022.10.04. | 

[Vol.2]ひたすら煮詰めて凝縮させるカレーペースト。和の食材で味わい深く チキンカレー|Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ

「スパイスカレーは大好きだけど、自分で作ったことはない」料理初心者のライター谷井百合子が、Mo:takeフードクリエイターに弟子入りします。レシピを読むだけでは気がつかない、美味しく仕上げるためのコツやアレンジを、一緒にキッチンに立って「どこよりも細かいレシピ」を教わります。

今回のMo:takeフードクリエイターは、Yuinchuが運営するSWITCH STAND ODAIBAが提供するフードメニューのカレーを、Mo:takeと共同開発したダーホンさん。その開発ストーリーを以前Mo:takeマガジンでもご紹介しました。

[Vol.3] カレーとイラスト。コミュニケーションツールとしての共通性。「DAHON CURRY」 dahon(ダーホン)さん

 

前回、しっかりと炒め上げた玉ねぎが、スパイス感と食感の変化が楽しいチキンカレーに仕上がります。とびきりおいしく作るコツを、ダーホンさんに教わります!

水分を蒸発させて旨味凝縮
カレーペーストはトマトがベース

ダーホンさん:玉ねぎが仕上がったので、カレーペーストを作っていきます。まず、鍋にトマト缶をまるごと入れます。

 

谷井:ホールトマトですか?

 

ダーホンさん:ダイスカットでも、どちらでも大丈夫です。フレッシュトマトでもいいのですが味に差が出やすいのと、分量がわかりやすいので、ご家庭で作るならトマト缶がお手軽でいいかなと思います。

カレーに入れる場合、カレーにはトマトの酸味はちょっと強過ぎるのですが、加熱を続けると香りが変わってきて、酸味が甘みに変わってきます。

 

谷井:甘くなるんですね。

 

ダーホンさん:180℃以上で加熱すると成分が変わるようです。水だと温度が上がらないけど、油を多く使っているので温度が上がるんです。こうやって、しばらく煮詰めていきます。

 

谷井:加熱して水分を蒸発させていくんですね。

 

ダーホンさん:そうです。ここで煮詰めて旨味を凝縮させておかないと、最後に水分を足した時ぼんやりした味になってしまうんですよ。なのでこの煮詰めが大事です!

 

谷井:火加減は強火でしょうか?

 

ダーホンさん:ずっと強火です。ここが肝なので、コンロの前から離れられないです。水分が抜けるまでしっかり煮詰めて、味のベースを作っていきます。だいぶいい感じになってきましたね。

 

谷井:すごい、水分がほとんどなくなってます!

 

ダーホンさん:ここに、カレー粉を混ぜてカレーペーストにしていきます。スパイスは焦げやすいので、ここからは弱火にします。

 

ダーホンさん:念のため一度火を止めてから、カレー粉を残りの半量入れます。同時に塩も、用意した分の半分程度入れます。

塩分量は全体の1%が目安とお伝えしましたが、調理を進めていく過程で、他の調味料に含まれる塩分の量が読みづらいんです。なのでこの時点では半分程度にとどめておいて、残りは最後に調整しながら入れていきます。

カレー粉と塩を入れたら今度は超弱火で、混ぜていきます。

 

谷井:焦げないように気をつけて混ぜ続ける。

 

ダーホンさん:一度焦げると焦げくさい香りが全体に回っちゃって抜けないので、ここは気を使います。もったりとしてペースト状になったら、一度ここで味見をします。

 

谷井:あ、おいしい、玉ねぎの味がします。

 

ダーホンさん:ここでちょうどよかったらダメなんです。ちょっとしょっぱいぐらいに調整します。塩を足しますね。

 

谷井:えー!なぜですか?

 

ダーホンさん:その秘密はあとで分かります。

 

味を決めたカレーペースト
初めの水分量は控えめでシャバシャバ回避

ダーホンさん:塩分調整をして、カレーペーストが出来上がりました。ここに、下準備をした鶏肉を漬け込んだヨーグルトと一緒に入れ、強火で加熱していきます。

 

谷井:鶏肉って、焼き付けてから煮込むっていうイメージがあったのですが、違うんですね。

 

ダーホンさん:焼き付けて煮込む方法もありますが、鶏肉は火を入れすぎるとパサパサになっちゃうので、火を入れる時間には気を使っています。今回は鶏肉自体の旨味も肉に残しつつ、プリプリで食べたいので、ここから火を入れていきます。

 

谷井:なるほど!

 

ダーホンさん:ここに舞茸とえのきも入れていきます。

 

谷井:ペーストの状態で、具材も入れてしまうんですね。

 

ダーホンさん:しっかりと全体を混ぜながら火を通していきます。……そろそろ具材に火が通ってきたので、今から水を入れます。

 

谷井:水の量は重要そうですね。どれぐらいですか?

 

ダーホンさん:まずは500ml程度を入れて様子を見ましょう。

 

谷井:まずは、ということは、後から足すこともあるのでしょうか?

 

ダーホンさん:僕の作るカレーは具材を多く感じられるように、あまり水で延ばさない仕様にしています。なので入れる水の量は全体量の40%に設定しています。
これを今回のカレーの出来上がりの量、約1600gに当てはめると、入れる水量は多くても640mlくらいということになりますね。

 

谷井:混ぜながら水分量を調節していくのですね。

 

ダーホン:そうです、とろみがほしいからせっかく色々工夫してるのに、水を入れ過ぎたらシャバシャバになってしまいます。鍋によっても蒸発量が違うので、様子を見ながらですね。

 

日本人が食べるカレーだから
馴染み深い和の食材で旨味をアップ

ダーホンさん:続いて、その他の具材をどんどん入れていきましょう。ひじきと、貝出汁、にんにく、しょうが、ココナッツミルクパウダー。

 

谷井:ひじきが入るんですね!意外です。しかも、乾燥したまま入れちゃうんですね。

 

ダーホンさん:和の食材を入れたかったんですよ。海藻は味の深みが出るし、色んな旨味と調和して、バランスが取れたカレーになってくれます。

 

谷井:それと、「貝出汁」って初めて知りました。鶏ガラスープの素みたいな粉末状なんですね。貝出汁を入れるのも、和の食材だからですか?

 

ダーホンさん:日本人に馴染みがあるカレーにしたいなと思っていて、Mo:takeの坂本さんに相談した時に、貝出汁のアドバイスをいただきました。出汁は使っていたのですが、貝出汁はもっと力強いです。

カレーは結局、旨味とコクをどう出すかっていうところが大事なんです。スパイスはあくまでも風味や香りを出すもので味は出せないので。ベースを作るにはしかるべきものを入れる。日本人が食べるなら食べ慣れていたり、食べやすい馴染みの良いものがいいよね。

 

谷井:それで貝とかひじきとかなのですね。なるほど!

 

ダーホンさん:貝出汁は旨味成分が強くて、ちょっと入れるだけで何でも美味しくなります。和だけじゃなくて、パスタなどにも使えるし、お勧め調味料ですね。

 

谷井:なるほど!買ってみます。

 

スパイスと和の旨味を塩分で引き締め、
最後のバターで全体調和。

ダーホンさん:加熱を続けて煮込み、ソース内の水分と油分が分離して、濃いオレンジ色の油が浮いてきたら、火の通ったサインです。味決めの段階に来ました。

 

谷井:最終段階ですね。

 

ダーホンさん:残った塩を、ちょっとずつ入れていきます。カレーペーストの段階でも若干しょっぱいぐらいにしましたが、ここでも若干しょっぱいぐらいに調整します。その理由は、最後にバターを入れるからです。

 

谷井:バターを入れると、どうなるのですか?

 

ダーホンさん:まろやかになるし、とろみもでます。リッチな味わいになるのですが、まろやかさと油分の関係で少しだけ塩分を感じづらくなるんです。「うまいけど味が薄い」となりがちです。

 

谷井:なるほど。

 

ダーホンさん:塩を少し足しました。水分量は500g加えただけでしたが、とろみはちょうどいい状態なので、水は追加しません。最後に、火を消して、バターを加えます。

 

谷井:どうして火を消すのですか?

 

ダーホンさん:バターは溶けかけが一番香りも豊かで上品な味わいになるんですよ。完全に溶けたバターだと油と脂肪分に分離してしまうので、油っこくなって、香りも薄れてしまいます。

例えとして味噌バターラーメンを考えるとわかりやすいかなと思います!ラーメンのスープにバターの溶けかけが絡まる感じが一番おいしいですよね。火を消してから入れることで、その状態を作り込みます。バターは溶かしながらカレー全体に絡ませるイメージで!あとは好みで塩分を追加して、完成です。

 

小さめの具材がひと口ひと口楽しい食感
優しい味わいのスパイスカレー

谷井:味見をさせていただきます!
カレーなのに、優しい味です。すごくおいしい。えのきのちょっととろみの出た感じと、玉ねぎの食感も残ってます。確かに、何回すくっても具材が入ってきます。辛すぎないからお子さんにもいいですね。

 

ダーホンさん:通常は辛味のあるスパイスを入れるんですが、今回はそこまで辛味の強くないカレー粉を使っているので食べやすいと思います。スパイスは辛いと思っている人が多いと思いますが、辛いスパイスを入れるから辛いのであって、スパイスの中でも辛いものは一部なんです。

 

谷井:なるほど、スパイスカレーの概念がちょっと変わりました。和のテイストも入っていて、やっぱり優しい、シチューみたいに食べてもいいですね。このまま家でも再現してみようと思います!

 

チキンカレー「どこよりも細かい」レシピ

<材料 8人分(約1600g)>
・サラダ油 50ml
・玉ねぎ 2個
・トマト缶 1缶
・鶏もも肉 400g
・ヨーグルト 150g
・えのき茸 150g
・舞茸 半パック(約50g)
・水 500ml〜
・カレー粉(S&B赤缶)15g
・にんにくチューブ 6g
・しょうがチューブ 6g
・クミンシード 小さじ1
・ソース 8g
・バター 15g
・貝出汁 5g
 ※粉末状の調味料。スーパー、食料品店で入手可能。
・乾燥ひじき 4g
・ココナッツミルクパウダー 30g
 ※ココナッツミルク缶を使う場合は60−80ml程度で代用可。 
・塩 10g

 

<下準備>
①玉ねぎは1cm未満平方のみじん以上ざく切り未満に切る。えのき茸は1cm幅に切る。舞茸はみじん切りにする。鶏肉は一口大に切る。

◎どこよりも細かいレシピポイント(玉ねぎのカット)
玉ねぎのみじん切りは、少し大きめにすると、少し放置しても焦げにくい。食感が残る。みじん切りの手順は以下の通り。
・包丁の先端でくり抜いてから半分にカットする。
・芯の方から、まな板と水平になるように横に2回包丁を入れる。その際、端を1cm ほど残して、玉ねぎがばらばらにならないようにする。
・玉ねぎの繊維に対して水平になるように、7~8回包丁を入れる。ここでも、端を1 cmほど残しながら切る。
・玉ねぎの向きを変え、繊維に対して垂直になるように4~5回、包丁を入れる。
・1cmほど残った部分も、縦横に切って同じ位の大きさのみじん切りにする

◎どこよりも細かいレシピポイント(鶏肉のカット)
・「一口大」は、親指の第一関節+5mm程度(2 x 3.5cm)くらいの大きさ。
・鶏肉の大きさにもよるが、肉を横長の向きに置き、縦に5回、横に3回包丁を入れる。

◎どこよりも細かいレシピポイント(きのこのカット)
・舞茸はペーストに混ぜ込んで旨味成分を出す役割なのでみじん切りにする。
・えのき茸は具材として食感を楽しむため1cm幅に切る。

②ボウルに鶏肉、カレー粉、ヨーグルトを入れてよく混ぜ、20〜30分置いておく。(半日以上漬けると味がよく染み込む。その場合は冷蔵庫で保管する)漬け込んでいる間に次の行程(カレーベース作り)を行う。

 

<作り方>
③カレーペーストをつくる。油を中弱火で加熱し、油が揺れてきたらクミンシードを1、2粒落としてみる。細かい気泡が出ていたら、全量投入し、テンパリングする。

④クミンの色が濃い茶色に変わったら、玉ねぎを投入し、塩をひとつまみ(分量外)振り入れ、火力を強火にする。玉ねぎ全体に油と塩を絡めるように木べらでかき混ぜながら、水分が抜けるまで加熱する。

◎どこよりも細かいレシピポイント
・玉ねぎ投入は、クミンの香りが出て、油がシュワシュワして、クミンが濃い茶色に色づいたタイミングで。

⑤玉ねぎに油が染み込みテカリが出るまで加熱を続け、全体の体積が80%ほどに目減りしてきたら、20mlほど差し水をする。蒸気が上がり、鍋を擦る抵抗が減りかき混ぜやすくなる。強火で加熱を続ける。
「加水→ゆるむ→加熱→脱水されもったりしてくる(加水のサイン)→加水…」を数回繰り返す。鍋肌の焦げが水に溶け出し、全体的に茶色く色づいてくる。

◎どこよりも細かいレシピポイント
・熱伝導の良い鍋だと焦げやすい。テフロンの鍋がお勧め。

⑥玉ねぎの色が濃い茶色になり、体積が最初の70-60%くらいになったらトマトを投入する。強火をキープしたまま、加熱を続ける。

◎どこよりも細かいレシピポイント
・玉ねぎは、潰した時にザクッとならず崩れるぐらいの柔らかさになるまで炒める。玉ねぎの食感は残った状態でやめる。
・トマトは180℃以上の加熱で酸味が甘みに変わる。水分がなくなるぐらいまで加熱する

⑦全体がもったりしてかき混ぜる木べらの抵抗が増えたら、弱火にして残りのカレー粉と塩を半量投入し、ペースト状になるまでかき混ぜ続ける。味見をして、ちょっとしょっぱい程度まで塩分を調節する。

◎どこよりも細かいレシピポイント
・塩分は一気に入れると後戻りできない。慎重に調節する

⑧鶏肉を投入し、強火で火を入れていく。

⑨鶏肉に火が通ったら、舞茸とえのきを加える。水をまず500ml入れる。とろみが強ければ、最終的に650mlとなるよう水を加える。貝出汁、ひじき、ココナツミルクパウダー、を投入し、加熱を続ける。

◎どこよりも細かいレシピポイント
・とろみはかき混ぜる木べらの抵抗で確認する。

⑩濃いオレンジ色の油が分離して浮いてきたら火が通ったサイン。残りの塩を入れ、少ししょっぱいぐらいに調整する。

◎どこよりも細かいレシピポイント
・この後バターを入れるとまろやかになり塩分を少し感じづらくなるため、この時点でしょっぱいぐらいが正解。

⑪火を止めて、バターを全体に絡ませるイメージで溶かし込む。完成!

◎どこよりも細かいレシピポイント
・バターは溶けかけが一番香り高く、上品な味わいとなるので、火を止めてから入れるのが正解。

ライター / 谷井 百合子

会社員からライターへ転向。腰の軽さで興味に乗っかる行動力で、ビジネストレンドやブックレビュー、食や旅にも題材を広げている。 目についた野菜を連れて帰り、レシピをググって調理するのが楽しいこの頃。

Mo:take MAGAZINE > Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ > [Vol.2]ひたすら煮詰めて凝縮させるカレーペースト。和の食材で味わい深く チキンカレー|Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ