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Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ
2022.09.29. | 

[Vol.1]スパイスカレーは比率の料理。1%の塩分が味の決め手 チキンカレー|Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ

近ごろ、スパイスカレーを楽しむ人が増えています。お店で食べるだけでなく、趣味として家でつくる人も。「家でつくってみたい、でも難しそう…」そんな料理素人のライター谷井百合子が、Mo:takeフードクリエイターに弟子入りします。レシピを読むだけでは気がつかない、美味しく仕上げるためのコツやアレンジを、一緒にキッチンに立って「どこよりも細かいレシピ」を教わります。

今回のMo:takeフードクリエイターは、Yuinchuが運営するSWITCH STAND ODAIBAが提供するフードメニューのカレーを、Mo:takeと共同開発したダーホンさん。以前、Mo:takeマガジンのインタビューにもご登場いただいています。

 

[Vol.1]作ってふるまい、また作る。楽しいスパイスカレーレシピの秘密。 「DAHON CURRY」 dahon(ダーホン)さん

 

そんなダーホンさんに今回教えていただくのはチキンカレーです。スパイシーだけど日本人の口に合う、食感の変化も楽しいチキンカレーをとびきりおいしく作るコツを、ダーホンさんに教わります!

チキンカレー基本のレシピ

<材料 8人分(約1600g)>
・サラダ油 50ml
・玉ねぎ 2個
・トマト缶 1缶
・鶏もも肉 400g
・ヨーグルト 150g
・えのき茸 150g
・舞茸 半パック(約50g)
・水 500ml〜
・カレー粉(S&B赤缶)15g
・にんにくチューブ 6g
・しょうがチューブ 6g
・クミンシード 小さじ1
・ソース 8g
・バター 15g
・貝出汁 5g
 ※粉末状の調味料。スーパー、食料品店で入手可能。
・乾燥ひじき 4g
・ココナッツミルクパウダー 30g(大さじ2程度)
 ※ココナッツミルク缶を使う場合は60−80ml程度で代用可。お好みで。 
・塩 10g

<下準備>
①玉ねぎは1cm未満平方のみじん以上ざく切り未満に切る。えのき茸は1cm幅に切る。舞茸はみじん切りにする。鶏肉は一口大に切る。

②ボウルに鶏肉、カレー粉、ヨーグルトを入れてよく混ぜ、20〜30分置いておく。(半日以上漬けると味がよく染み込む。その場合は冷蔵庫で保管する)漬け込んでいる間に次の行程(カレーベース作り)を行う。

<作り方>
カレーベース作り
③油を中弱火で加熱し、油が揺れてきたらクミンシードを1、2粒落としてみる。細かい気泡が出ていたら、全量投入し、テンパリングする。

④クミンの色が濃い茶色に変わったら、玉ねぎを投入し、塩をひとつまみ(分量外)振り入れ、火力を強火にする。玉ねぎ全体に油と塩を絡めるように木べらでかき混ぜながら、水分が抜けるまで加熱する。

⑤玉ねぎに油が染み込みテカリが出るまで加熱を続け、全体の体積が80%ほどに目減りしてきたら、20mlほど差し水をする。蒸気が上がり、鍋を擦る抵抗が減りかき混ぜやすくなる。強火で加熱を続ける。
「加水→ゆるむ→加熱→脱水されもったりしてくる(加水のサイン)→加水…」を数回繰り返す。鍋肌の焦げが水に溶け出し、全体的に茶色く色づいてくる。

⑥玉ねぎの色が濃い茶色になり、体積が最初の70-60%くらいになったらトマトを投入する。強火をキープしたまま、加熱を続ける。

⑦全体がもったりしてかき混ぜる木べらの抵抗が増えたら、弱火にして残りのカレー粉と塩を半量投入し、ペースト状になるまでかき混ぜ続ける。味見をして、ちょっとしょっぱい程度まで塩分を調節する。

⑧鶏肉を投入し、強火で火を入れていく。

⑨鶏肉に火が通ったら、水を500ml入れる。貝出汁、ひじき、ココナッツミルクパウダーを投入し、加熱を続ける。

⑩濃いオレンジ色の油が浮いてきたら火が通ったサイン。残りの塩を入れ、少ししょっぱいぐらいに調整する。

⑪火を止めて、バターを全体に溶かし込む。完成!

——————

今回は「基本レシピ」からして既に工程がたくさんです。はたして料理初心者の私にもつくれるのでしょうか……。少し不安になりますが、でも大丈夫!ここから、最高に美味しいチキンカレーを作るため、わからないことや気になることを、ダーホンさんに細かく教えていただきます!

 

谷井:スパイスカレーは、ここ数年でお店でよく見かけるようになって、よく食べています。具材によってスパイスが色々で楽しいのと、ルーのカレーよりあっさりしていて大好きなのですが、スパイスを使うのは難しそうで、今まで自分で作ったことはなかったです。

 

ダーホンさん:難しいと思われてますけど、スパイスカレーはポイントを押さえればそれほど難しくないんですよ。もちろん突き詰めたら奥は深いのですが。今回は和の食材を使って、日本人にも馴染みやすいようにアレンジしたスパイスカレーです。ご家庭でも作りやすいレシピなので、ご自宅で再現もしやすいと思いますよ。

 

谷井:和の食材も入るのですか?楽しみです。

 

 

スパイスカレーは比率の料理。適正分量は塩もスパイスも1%

ダーホンさん:スパイスカレーは強い火力で、一気に作り上げていく料理です。スピード勝負なので、食材や調味料など必要なものはあらかじめ全部計って、準備しておきます。

 

谷井:材料は結構多いですね。確かに準備しておかないと、入れ忘れが出そうです。

 

ダーホンさん:そうですね!そのためにもあらかじめ使う材料と分量を計っておくことがポイントです。事前準備が、出来上がりのカレーを左右すると言っても過言ではありません!
材料と分量をきちんと把握しておくために、僕は材料を味のベース、具材、スパイスなど、グループに分けて考えています。

 

谷井:マインドマップですね。面白い!

 

ダーホンさん:分量の計算も食材の入れ替えも、こうやってまとめておくと楽なんですよ。頭の中の整理にもなりますしね。

 

谷井:あ!このマインドマップを見て気づいたんですが、全体の質量から食材の分量を決めているのですか?

 

ダーホンさん:そうなんです!僕はそうしてますね。スパイスカレーって、僕は「比率」の料理だと思っています。スパイスの量も塩分の量も、全体の質量からシビアに割り出します。

 

谷井:スパイスの量は、やっぱり味に影響するんですか。

 

ダーホンさん:いや、どちらかと言うとスパイスは風味を演出する役目ですね。味を決めるのに一番大事なのは使う食材の旨味と塩の塩分です。これは初心者の方にまず知っておいてほしいポイントです。

 

谷井:塩の方が重要なんですね!意外です。

 

ダーホンさん:適正分量は総重量の1%。これを守るのが失敗しないコツです。たとえば1kgのカレーを作るなら、塩もスパイスも10gになります。

 

谷井:なるほど!わかりました!

 

玉ねぎを切る大きさは、包丁を入れる回数で表現

ダーホンさん:まず玉ねぎをみじん切りにします。僕のカレーに関しては、玉ねぎのみじん切りは大きめにします。

 

谷井:どうして大きめなんですか?

 

ダーホンさん:ちょっと焦げても形が保てるぐらいの大きさがいいんです。玉ねぎの食感も残せます。逆に細かくすると甘さが出やすいので、お好みによって変えてもいいですよ。ただ細かすぎるとすぐに焦げてしまうので目が離せない。大きめだと、放置しておいて他の作業ができますね(笑)。

 

谷井:実は、「みじん切り」のやり方がよく分かりません。

 

ダーホンさん:まずはじめに包丁の先端で芯を浅くくり抜きます。芯のあった方を上にして、半分にカットします。さらに、芯の方から横に2回、まな板と水平に包丁を入れます。このとき、完全に切り離さずに、端は1cmほど残しておいてください。

次に、繊維に対して水平に7〜8回、これも端を残して切っていきます。それから向きを変えて繊維に対して垂直に4〜5回、今度は切り離すように包丁を入れていきます。

 

谷井:切り方を回数で表現するのを初めて聞きました!たしかに、普通のみじん切りより少し大きめですね。

 

ダーホンさん:この大きさだと、火を入れても粒感のある食感が残ります。次は舞茸、えのきを切っていきます。舞茸は玉ねぎとは違って細かめの、3mmぐらいのみじん切りに、えのきは1cmぐらいに切ります。

 

谷井:大きさを変えるのはなぜですか。

 

ダーホンさん:それぞれ役割が違うんです。舞茸は、具材というより旨味を出すために使います。舞茸をカレーペーストに混ぜ込むことでいい旨味が出るんです。一方で、えのきは具材。火を入れても、食べていて楽しい食感が残ります。

 

谷井:なるほど!役割に合わせて大きさも変えるのですね!

 

どこをすくっても具材が口に
旨味と食感が楽しいカレー

ダーホンさん:次は鶏肉の仕込みに入ります。鶏肉は一口大に切ります。

 

谷井:「一口大」!よく聞きますが、どのくらいの大きさなのか迷います。

 

ダーホンさん:目安としては、親指の第一関節より少し大きめ。切り方は、鶏肉の大きさにもよりますが、横長に置いたら、縦に5回ほど、横に3回ほど包丁を入れます。

 

谷井:やはり回数なんですね!小さめなのは、食べやすいように?それとも火の通りやすさですか?

 

ダーホンさん:基本的に、どこをすくっても具材が入ってくるようなカレーを作りたいんですよね。僕はキャンプでカレーを作るんですけど、小さいシェラカップに盛り分けても、全ての人に均等に具がちゃんと入っていると喜ばれます。

 

ダーホンさん:鶏肉を切ったらボウルに入れて、ヨーグルトとカレー粉の半量を加えてよく混ぜます。混ぜたらそのまま30分ほど置きます。

 

谷井:スパイスをたくさんそろえないと作れないと思いこんでいたので、カレー粉を使うというのはハードルが下がりました。

 

ダーホンさん:本格的にやりたい人は個別のスパイスを買っていただければいいのですが、ご家庭で作りやすいように、S&Bさんの赤缶を使っています。

 

谷井:ヨーグルトで下味がつくのですか?

 

ダーホンさん:下味もつきますし、お肉を柔らかくする効果もあります。また、カレー自体の辛さがマイルドに、まろやかな味わいになり、とろみが加わります。スパイスカレーはとろみがつきにくいので、ありがたい存在です。さらに、ヨーグルトならではの酸味も加わります。

 

谷井:酸味は残るのですね。

 

ダーホンさん:酸味が加わることで、出来上がりの味わいがより複雑になって、美味しくなるんです。ヨーグルトを入れることで本格的な味になります。

 

谷井:そうなんですね。ところで、下味に塩は使わないのですか?

 

ダーホンさん:入れてもいいのですが、最初に言ったようにカレーは塩の分量がシビアです。なるべく一度で決めたいので、今回は入れていません。

 

谷井:なるほど。後から計算する面倒が省けてうれしいです。

 

ひたすら差し水と蒸発の繰り返し
玉ねぎに焦げを絡めてコーティング

ダーホンさん:肉に下味をつけている間に、玉ねぎを炒めていきますが、その前にスパイスのテンパリングをしていきます。

 

谷井:テンパリングとはなんですか?

 

ダーホンさん:油にスパイスの風味を浸透させる工程をテンパリングといいます。今日のスパイスはクミンシードですね。慣れてきたら、他にもシナモンやスターアニス(八角)など、パウダーになってない形の残ったホールスパイスをお好みで入れてもいいです。​​格段に風味が良くなり、本格的なカレーになります。スパイスを色々楽しんでみてください!

クミンシードは気をつけないとすぐに焦げるので、ここからはスピード勝負です。今のうちに、後で入れる玉ねぎを用意しておきましょう。

 

谷井:焦げ始めてから慌てないように、ということですね。

 

ダーホンさん:まず、鍋に油を入れ弱火で温めます。油が温まってきたらクミンシード1、2粒落としてみて、細かい気泡が出てくるようになったら、全量入れます。

 

谷井:香りがしてきました!

 

ダーホンさん:シュワシュワして、茶色っぽく色づいてきたら、玉ねぎを入れます。

 

ダーホンさん:玉ねぎを入れると、一気に鍋の温度が下がります。ここで玉ねぎから水分を出すために、分量外の塩をひとつまみ入れ、火を強火にします。そして分量外の水を20mlぐらい差し水をして、木べらでかき混ぜながら炒めていきます。

 

谷井:いい音がしてますね。

 

ダーホンさん:差し水をすると玉ねぎから水分が出てきます。炒め続けて玉ねぎから出た水分が蒸発したら、また差し水をして、炒める。これを繰り返します。

 

谷井:水を入れるタイミングが難しそうです。

 

ダーホンさん:加熱を続けていくと、玉ねぎ全体に粘りが出てきてもったりとした質感になってきます。その時が水を入れるタイミングです。

 

谷井:ほんとだ、重たくなってきました。

 

ダーホンさん:あ、今です!ここで水を入れないと焦げます。鍋の種類にもよるんですが、薄手の熱伝導の良い鍋だと焦げやすいです。ご家庭で作るならテフロンが安心だと思います。

 

谷井:なるほど。……しばらく炒めてますが、これ、どこまで炒め続けるのでしょうか?

 

ダーホンさん:色を見て判断していきます。炒めているうちに、鍋についた焦げが玉ねぎに絡んでコーティングされていくので、茶色く色づいてきます。

 

谷井:飴色玉ねぎってよく聞きますね。

 

ダーホンさん:そうですね!飴色玉ねぎと同じ要領ですが、今回は飴色玉ねぎまでいかず、その少し前段階で薄めの茶色くらいです。木べらで潰した時に、ザクッとならず崩れるぐらいの柔らかさ。今回は玉ねぎも具材のひとつとして、食感を残します。

 

谷井:なるほど。これだけで、なんだかもう美味しさの準備ができた感じがします!

 

次回は10/4(火)に公開予定です。香ばしく炒め上げた玉ねぎが、この後どのようにチキンカレーに仕上がっていくのでしょうか?お楽しみに。

 

ライター / 谷井 百合子

会社員からライターへ転向。腰の軽さで興味に乗っかる行動力で、ビジネストレンドやブックレビュー、食や旅にも題材を広げている。 目についた野菜を連れて帰り、レシピをググって調理するのが楽しいこの頃。

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