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Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ
2023.10.03. | 

[Vol.1]少しの工夫でいつもの唐揚げがプロの味に。「鶏の唐揚げ」|Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ

以前、夫の実家でお正月に作った唐揚げが大量に残ってしまったことがありました。「あれ? 私の唐揚げ、息子たちには好評なのに…」。そんな風に思っていたところ、唐揚げのプロの大高未来さん(以下:みくさん)に、おいしい唐揚げの作り方を教えていただくチャンスがやってきました!

絶品唐揚げを作るポイントはもちろん、できあがるまでのあちらこちらにみくさんの料理へのこだわりや食べてくれる人への愛情がちりばめられています。みくさんのノウハウを教えていただいて、今度こそ、みんなに完食してもらえる唐揚げが作れるようになりたいと思います!

「鶏の唐揚げ」基本のレシピ

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<材料 2人分>
鶏モモ肉 250~300g
片栗粉 分量外
米油 鶏肉が浮かぶほど

★ブライン液
水に対して5%の塩と砂糖

★★唐揚げの味付け
酒 大1
醤油 大1/2強 
しょうが ひとかけ
にんにく ひとかけ

 

<作り方>
①ブライン液を作っておく
②調味料を混ぜ合わせておく
③鶏モモ肉を広げて、骨、脂身、筋をとって下処理をする
④③をブライン液に1~2時間つけてラップをかけて冷蔵庫で保存する
⑤冷蔵庫から出した鶏肉に★★の調味料をしっかりもみこむ
⑥片栗粉を鶏肉につけて米油で揚げる

 

唐揚げは鶏モモ肉?それともムネ肉?

黒澤:みくさんは現在、お弁当、ケータリングの「kichijitsu(キチジツ)」オーナー、フードコーディネーターでいらっしゃいますが、みくさんのメニューの中でも特に唐揚げが大人気だと伺っています。今日はそのコツを教えていただけるということで楽しみにしています!

 

みくさん:こちらこそ、よろしくお願いします!

 

黒澤:さっそくお聞きしたいのですが、唐揚げにするのに、鶏モモ肉とムネ肉のどちらが最適なんでしょうか?

 

みくさん:よく聞かれますね。ヘルシーに食べていただけるのはムネ肉なんです。だから、脂質とかを気にされてる方はムネ肉がいいかもしれません。でも、ジューシーな唐揚げがお好みだとモモ肉かなと思います。今日は、食べたときに肉汁があふれるようなジューシーな唐揚げにしようと思うので、鶏モモ肉を使っていきましょう!

 

鶏肉に味をつけるまえに下処理をしっかりするのが大事

みくさん:鶏肉の下処理は味をつける前の大事な工程です。買ってきた鶏肉をパックから出したら、まず、キッチンペーパーでしっかり水分を拭き取ります。

 

黒澤:なぜ水分を拭き取るんですか?

 

みくさん:時間が経つにつれ、鶏肉のドリップや血がにじみ出てきてしまい、それが臭みになってしまうので、しっかりと最初に拭き取ってあげるんですよ。

 

黒澤:なるほど。それで、下処理とは何をどうするのでしょうか。

 

みくさん:モモ肉に残っている余分な脂身、硬い骨、大きい筋を包丁で切り落とします。そういうのをしっかり取ってあげる方が、食感がよくなります。まず、この余分な皮と脂身を取っていきましょう。

 

黒澤:肉からはみ出ている白っぽい部分のことですか?

 

みくさん:そうです。一枚の鶏肉をまな板の上でしっかり広げると長方形になりますが、ちょっとはみ出ている部分がありますね。この脂身が臭みや余分な食感になるので、下処理の時点で切ってしまいます。私は皮をつけたままにしますが、脂質が気になる方は皮を全部はがしても構いません。

 

黒澤:ちなみに、皮があっても味は肉の部分までしっかり染み込むんですか?

 

みくさん:つける時間にもよりますけど、基本的には染み込みます。フォークで皮の部分を刺して穴を開けると、より味がしみこみますね。

余分な皮と脂はある程度取れたので、次は肉に残っている骨と軟骨を取っていきましょう。

 

黒澤:骨や軟骨はどうやって探せば良いですか?

 

みくさん:鶏肉全体をざっと触ると、処理した工程で取りきれなかった小さい骨や軟骨が残っているのがわかると思います。

 

黒澤:たしかに!コリコリした部分がありますね。

 

みくさん:骨や軟骨は結構分かりやすいです。血が浮いているところも臭みの原因になるので、なるべく取ってあげましょう。あとは筋。鶏ムネ肉に比べて、モモ肉は筋がすごく多いんです。肉と筋の間に包丁の先を入れて、筋を軽く引っ張りながら包丁で撫でるように切るとうまく取れますよ。

 

黒澤:下処理、ついつい省いてしまいたくなるのですが……やっぱり味にも影響しますか?

 

みくさん:そうですね、脂肪や骨、筋を残したまま調理してしまうと、食べた時にコリコリっと口に残ってしまうんです。食感で味も変わるので、なるべく食感の邪魔になるものは処理しておいたほうが良いです。

ただ、下処理で取り出すときりがないんですよね。全部取ろうとするとボロボロになってきちゃう(笑)。筋も食べられないものではないので、大きいところだけで構いません。硬い骨と大きい筋、それから余分な脂身が取れれば、大体の処理は良いかなと思います。

 

黒澤:大体でいいなら安心です(笑)。ところで、スーパーで売っている鶏モモ肉も、こういう処理をしてあるんですか?

 

みくさん:おそらく大半はそのままですね。よく見ると、骨や筋、余分な脂身が残っていることが結構あります。なので、ご家庭で調理をするときに下処理をした方が良いと思います。ちなみに、一口サイズに切ってある唐揚げ用のモモ肉も下処理はしていないものも多いんです。

 

黒澤:そうなんですね。いままで唐揚げといえばあの、一口サイズに切ってある唐揚げ用パック一択でした!

 

みくさん:たしかにあれも便利なんですが、おいしく食べたいのであれば、やはり、一枚のモモ肉を買って下処理をしっかりしてから食べるサイズにカットして味をつけた方がいいかなと思います。一旦これで余分な皮と脂、骨と軟骨は取れました。ではこれから唐揚げサイズに切っていきましょう。

 

黒澤:どのくらいの大きさにカットしたらいいですか?

 

みくさん:大体、1枚の鶏モモ肉が250から300gぐらいなので、6〜7等分にカットしていきましょう。唐揚げはあまり小さく切っちゃうと、縮んでジューシーさがなくなっちゃうので、ちょっと気持ち大きめで大丈夫です。

 

黒澤:同じくらいの大きさに切るんですね。

 

みくさん:大きさをなるべくそろえてあげるのがコツです。そうすると同じタイミングで揚がりますから。大きさが違うと出来上がりにむらができちゃうんですね。ここまでが下処理になります。

 

みくさん:大きさをなるべくそろえてあげるのがコツです。そうすると同じタイミングで揚がりますから。大きさが違うと出来上がりにむらができちゃうんですね。ここまでが下処理になります。

 

黒澤:やることはいろいろありますが、慣れれば数分で終わりそうですね。

 

みくさん:そうなんです。慣れればすぐですよ! お肉やお魚はあんまり触りすぎると人の体温で鮮度が落ちやすいので、なるべく手早くすませてくださいね。

さあ、これをブライン液につけていきましょう。

 

鶏ムネ肉をやわらかくするブライン液とは?

黒澤:ブライン液って何ですか?

 

みくさん:ブライン液は、砂糖と塩を水に溶かしたものです。砂糖と塩の量は、水200ccに対して塩と砂糖が10gです。

タンパク質は火を入れると変性し収縮します。この時に肉の中にあった水分が外に押し出され、パサつく一つの原因になります。ブライン液につけることで、塩分の作用でタンパク質が溶解されて中に水分がとどまるのと、砂糖の作用で保水力がアップするのでよりジューシーな仕上がりになります。パサつきがちな鶏ムネ肉でもブライン液につけるとしっとりしますよ。

 

黒澤:そうなんですね!初めて聞いたのですが、これからはどんどん使っていきます!

 

みくさん:ぜひ(笑)。なんならブライン液につけただけで揚げてもおいしいんですよ。

では、先ほど7等分した鶏肉をブライン液につけておきます。ブライン液をボウルに入れ、そこにお肉を全部つけたら、上からラップをして、冷蔵庫で1〜2時間ねかせます。ポリ袋やタッパーに入れて漬けるのもいいですね。別に揉み込んだりはしなくて大丈夫。全体がひたればOKです。

 

唐揚げの味付けはつけるだけじゃなくてしっかり揉み込む

みくさん:では、鶏肉に味付けをしていきましょう。醤油、酒、生姜、ニンニクをまぜたものを、鶏肉に揉み込んでいきます。

 

黒澤:さっき、生姜とニンニクをすり下ろす時、おろし金にアルミホイルを乗せてませんでしたか?

 

みくさん:そうなんです。おろし金に直接生姜やニンニクを乗せてすりおろすと、溝の部分に入り込んで、おろし金に残っちゃうんですよね。そうすると、そこに残った分がもったいないし、洗うのも大変です。なので、おろし金にアルミホイルをかぶせて、その上からすりおろすんです。アルミホイルをパッとはずせばすった生姜とニンニクがアルミの上に乗っているので、それを使えばOK。おろし金に生姜とニンニクが入り込まないし、洗うのも簡単です。

 

黒澤:本当だ!これ、いいですね。これも家でやってみよう。

 

みくさん:便利ですよ。時間がない人は、チューブでも構いませんが、やっぱりすりおろしたほうが香りがしっかりつきます。

では味をつけていきましょう。ブライン液につけていたので、ちょっと塩と、砂糖の下味が入っています。なので、醤油はそこまで多くなくて大丈夫です。ここではつけるだけじゃなくて、しっかりもみこんでください。ここポイントです!

 

黒澤:ぎゅっぎゅっと揉み込んでいく感じですか?

 

みくさん:はい。調味料とお肉を混ぜ合わせてしっかり揉み込むと、どんどん肉に味が入っていって、水分がなくなってきます。

 

黒澤:水分がなくなってきたら味が染み込んでいるということですか?

 

みくさん:そうですね。

 

黒澤:今まで、先に下味をつけて、時間を置いて味を染み込ませていたのですが……。

 

みくさん:今日のように、鶏肉の下処理をしたあとブライン液につけておくと、その時点で下味が入っているので調味料をお肉にもみ込んですぐ揚げてもしっかり味がついた状態で仕上がりますよ。

しっかり揉み込んで、水分がなくなってきたら、鶏肉に片栗粉をつけていきます。バットに片栗粉を広げます。鶏肉の方に片栗粉をバッといれて揉み込む方が多いのではないかと思うのですが、その逆で、片栗粉に鶏肉を入れていきます。

 

黒澤:味を付けた鶏肉に粉をまぶすのではないのですね。

 

みくさん:粉の入ったバットにお肉を入れたほうが均等に粉をまぶすことができます。鶏肉の方に粉をバーっとかけてしまうと、ムラができるし、粉がつきすぎちゃうんですね。鶏肉の表面に粉をまぶしていくイメージで、粉の方に鶏肉を入れてください。そのときに、鶏肉の皮を伸ばすようにします。皮がグジュッとよれたまま片栗粉をつけてしまうと、そこに旨味が偏っちゃうんですね。皮をしっかり外側に伸ばしてあげて、皮以外の肉の部分を包むようにすると、パリッと揚がります。

 

黒澤:皮をビローンと広げる感じですか?

 

みくさん:そうです。最後に軽くちょっと握ります。

 

黒澤:丸い状態にするんですか?

 

みくさん:はい。おはぎのような形ですね。そのときも皮がしっかり伸びているかどうか見てくださいね。

 

黒澤:粉は、皮の内側にもつけたほうが良いですか?

 

みくさん:いえ、皮が伸びた状態で内側にも粉をつけてしまうと丸まらなくなってしまうんです。なので、皮をめくって粉をつける必要はありません。丸めた状態でまんべんなく粉をつけます。他のお肉に粉をつけている間に、既に粉がついているお肉はちょっとねかせられるので、その間にも味が染み込んでいきます。

 

次回は10/12㈭に公開予定です。下準備ができたお肉をこんがりきつね色に揚げていきます!

 

– Information –

大高未来さんプロフィール

Instagram:@_kichijitsu_

ライター / 黒澤 真紀

愛媛県生まれ。5年間の都内学習塾勤務を経て、2011年にフリーライターに転身。ウェブや雑誌のインタビュー記事、教材や試験問題の作成や小論文の添削などを担当する。高校生と中学生の息子とのおしゃべりが大好き。

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