2021.03.16. | 

[Vol.3]野菜で「楽しい」が広がる場を増やしたい 農家 島崎保夫さん

国分寺で農業とお店、人をつなぐ場をつくる島崎さん。「楽しい」と語るその視線は未来へと向かっています。これから挑戦したいこと、野菜と食への想いをお聞きしました。

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“おいしい”を超えて、
野菜に興味を持ってもらう工夫

島崎さん:僕は、いつも野菜に島崎農園のブランド「アグリタリオ」のシールを貼るようにしています。たとえばコンビニで野菜を販売しているのですが、「アグリタリオ」の野菜が並ぶのを待ってくれるお客さんがいるんですよ。シールを見て、「あっ、あった!」って言って買ってくれる。こんなふうにお客さんがワクワクしてくれるような工夫が好きなんです。

お客さんが野菜を買うことに喜びを感じてくれたり、野菜を使った料理を食卓に並べて食べるのが楽しいと思ってくれたり、そんな仕掛けをしたいんです。シールを野菜一つひとつに貼ることは手間はかかるけれど、お客さんや飲食店さんが「これは島崎農園の野菜なんだ」と気づいてくれた時に、野菜や農業に興味を持ってくれるかもしれないと思うとやめられないですよね。

今や、野菜や料理が美味しいのは当たり前じゃないですか。そのうえで何をプラスしてお客さんに喜んでもらえるかは外せないポイントだと思います。そこにしかないストーリーを感じてもらう、お客さんに非日常を体験してもらうことはこれからもっと大事になってくると思います。

 

「この野菜ってこういう人たちが作っているんだ」という気づきから、野菜や生産者への愛着がわき、食べるのがもっと楽しみになる。お客さんは、一つの野菜から新しいや出会いや発見を体験できるのかもしれません。

 

島崎さん:マルシェのような場を企画する農家は少ないと思うのですが、島崎農園だからこそ提供できる体験として続けていきたいですね。

おもしろいことが生まれる
プラットフォームになりたい

そんな島崎さんには、さらにやってみたいことがあるのだそうです。

 

島崎さん:東京の住宅街にある国分寺の畑で、たとえば上質なお肉のバーベキューを提供するという場をつくってみたいですね。Mo:takeさんのフードトラックにまた来てもらって、坂本さんにお肉を焼いてもらうんです。別の日には違うシェフが来て、また新しい料理をお客さんたちにふるまう。焚火や窯をメインコンセプトに、お肉を焼くのもいいですよね。シェフが畑から野菜を採ってきて、その場で料理をするのもおもしろい。一日限定の高級感を体験してもらう、畑を使ってそういった空間をつくりたいですね。

 

こんなふうに、「農家さんって、飲食店さんってこんなことができるの?」とお客さんに驚いてもらえるような体験をつくり出したいと島崎さんは話します。

 

島崎さん:想いとストーリーを持ったプレイヤーさんたちが一緒に取り組んでくれれば、決して難しいことではないし、その先にはもっと大きな可能性があるはずです。おもしろいことが生まれるプラットフォームになりたいですね。

 

その場、その地域が魅力を発信していけば、ほかの地域からもお店や食材が集まってくる。お客さんも「また、おもしろいことやってる」と足を運ぶのがより軽やかになりそうです。おいしいものを食べたい人、楽しい思いを体験したい人が集まっていく。そこからまた新しいおもしろさ、可能性が生まれるのでしょう。

 

島崎さん:野菜を野菜として売るだけではもったいないとずっと思っていたんです。たとえば国分寺を飛び出して、沖縄、また海外ではハワイなどでも実現できると、よりワクワクできそうです。

「野菜ってこんなに売れるんだ!」
生活に欠かせない食からの気づき

ここまで島崎さんに、マルシェのこと、野菜や農業とお店をつないでいく想いについてお聞きしました。島崎さん自身が、イベントに「食」を取り入れるのはなぜなのでしょうか。

 

島崎さん:すべての人にとって必要なものだからだと思います。僕は農業に関わるまでの約30年間、ビジネスの世界にいましたが、マルシェでは「野菜ってこんなに売れるんだ」とすごく驚いたんです。あの場の可能性をもっと広げることができれば、地域にもより貢献できると思いました。生活に欠かせない食だからこそ貢献できることが多いと思いました。

地元の新鮮な野菜を提供しているお店はそんなに多くないと思っています。スーパーに野菜が並ぶまで4日はかかるなど、いろいろな課題をクリアするのが難しいんですね。僕は農家の息子なので採りたての野菜を食べることは当たり前ですが、そうではない方も多いのではないでしょうか。新鮮な野菜を直接届けられる意味でもあのマルシェにたくさんお客さんが来てくれたことは可能性がすごくあるし、地域にも貢献できると感じました。

 

「ナスにとげがついていることも、知らない人が多いかもしれない」とも島崎さん。新鮮な証のとげを触れる機会も、島崎さんならつくってくれるかもしれません。

 

島崎さん:新鮮なナスはとげだらけなんですよ。僕らは手袋をしないと痛くて収穫できません。でも、お客さんにとっては、とげを触る経験もすごく貴重かもしれませんよね。もっと野菜を知りたい、畑に行ってみたいと思ってもらえるきっかけをつくっていきたいですね。僕たち農家だからこそできることだし、野菜や作り手のストーリーとお客さんをつないでいきたいです。

 

– Information –
島崎農園アグリタリオ
Facebook: https://www.facebook.com/agritario/

たかなしまき

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。