
「もずく=酸っぱい」じゃなくてもいい
TSUKE MOZUKUの原点にあるのは、沖縄では親しまれている「ざるもずく」という食べ方です。
長いもずくを麺のようにすすり、めんつゆで味わう。
山忠食品の野村正和社長は、この食べ方をもっと多くの人に知ってもらいたいと考えていました。
本州では「もずく=三杯酢で食べる酸っぱいもの」というイメージが根強くあります。
けれど、それはもずくという食材が持つ、ひとつの顔に過ぎないのかもしれません。
開発を担当した光本茉穂さん自身も、酸っぱすぎるものは少し苦手だったそう。
だからこそ、
「酸っぱいから、もずくはちょっと……」
と思っている人にも、別のおいしさがあることを知ってほしい。
そこから、TSUKE MOZUKUの開発が始まっていきます。

1日1kg。守りたかったのは、ズルズルっとすすれる食感
めんつゆにつければ、TSUKE MOZUKUになる。
もちろん、そんなに簡単な話ではありませんでした。
開発で大きな壁となったのが、「食感」です。
一般的にスーパーなどで販売されているもずくは、加熱処理や製造工程のなかで短くちぎれたり、ぬめりが多く出たりすることがあります。
一方、目指していたのは、沖縄の海で採れた長さをできるだけ残し、麺のようにズルズルっとすすれるもずく。
その食感を実現するため、従来とは異なる「加熱せずに殺菌する」製法を、一から組み立てていく必要がありました。
光本さんは、食感や匂い、長さを確かめながら試作を繰り返します。
その量は、多い時には1日1kg。
昼食が入らないほどもずくを食べ続け、ついには「もずくを見るのも嫌になる」時期まであったといいます。
それでも試作を続けたのは、社長が想い描いた、
「ズルズルっとすすれる、あの食感」
を届けるためでした。
そして試行錯誤の末、ようやく社長から出た言葉が、
「これだ!」
だったそうです。
おいしさを守るために、あえて手でつくる
さらに驚くのが、使われているもずくです。
TSUKE MOZUKUでは、沖縄の海で採れるもずくのなかでも、食感や長さ、匂いなど厳しい条件を満たしたものを選んで使用しています。
自然の中で育つものだからこそ、海流や気候によって状態は毎年変わります。
その年、その年で状態を見ながら、適したものを選ぶ。
そして、そこから先の工程にも、もうひとつ大きな特徴があります。
異物の除去から殺菌、袋詰めまで、すべて手作業。
効率だけを考えれば、機械を使った方がいいのかもしれません。
けれど、機械による刺激が加われば、せっかくの長い”もずく”がちぎれ、目指してきた食感が失われてしまう。
だから、手でつくる。
一見すると「非効率」に見える方法をあえて選ぶことで、守れるおいしさがあるのです。

小鉢の脇役から、食卓の主役へ
山忠食品が目指しているのは、TSUKE MOZUKUというひとつの商品を広めることだけではありません。
光本さんが思い描いているのは、もずくそのものの立ち位置が変わっていく未来です。
現在、多くの家庭でもずくといえば、食卓の端に添えられる小鉢のひとつ。
けれど、いつか、
「今日の主食、何にする?」
「もずくにしよう!」
そんな会話が生まれるくらい、もずくが食卓の真ん中にやってきたら。
パスタやうどん、そばのように、さまざまな味付けで楽しめる「もずく専門店」が生まれたら。
今は少し意外に聞こえるその風景も、「もずく=酸っぱい」という私たちの思い込みがなくなれば、案外遠い未来ではないのかもしれません。

『TSUKE MOZUKU』を〝今〟届けたい理由
「もずくを、めんつゆで食べる」。
それだけ聞けば、ちょっと変わった食べ方、新しい商品として受け取ることもできます。
でも今回、Mo:take MAGAZINEが惹かれたのは、その目新しさだけではありません。
その奥にあったのは、
「もずくには、もっといろんなおいしさがある」
ということを、本気で届けようとする人たちの姿でした。
1日1kgものもずくを食べながら試作を繰り返す。
食感を守るために、効率よりも手作業を選ぶ。
そこまでして届けたかったのは、新しい商品というより、私たちがまだ知らなかった「もずくのおいしさ」だったのだと思います。
考えてみれば、普段何気なく食べているものにも、
「これはこうやって食べるもの」
という思い込みが、意外とたくさんあるのかもしれません。
その当たり前を少しだけ外してみると、知っているはずの食材に、まだ知らない楽しみ方が見つかる。
TSUKE MOZUKUをキッカケに、いつもの食卓にある食材を、もう一度眺めてみたくなりました。
ーinformationー
山忠食品工業食品