人参のラペ 基本のレシピ
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<材料 4人分>
・人参 400g(2本くらい)
・塩 2〜4g
・砂糖 1〜2g
・ドライマンゴー 20g
・胡桃(ロースト) 20g
・白バルサミコビネガー 20g(白ワインビネガーでも可)
・オリーブオイル 20g
・クミンシード 15g
<作り方>
①人参をチーズグレーダーで削る(繊維を壊しながらのイメージで削る)
②削った人参に塩と砂糖をしてよく混ぜて馴染ませる
③冷たい鍋にオリーブオイルをひき、クミンシードを加え弱火でじっくり火を入れる
④人参からエキスが出るので、ドライマンゴーを合わせて吸わせる
⑤④にローストした胡桃も加える
⑥③のクミンシードから香りが出てきたら、火を止めて、すぐに白バルサミコビネガーを加えて乳化させる。引火の恐れがあるので必ず火を止めてから行う
⑦⑥を温かいうちに人参に加えて、しっかりと混ぜ合わせて完成!
⑧温かいうちに食べても美味しいが、一晩寝かせると味が馴染んでさらに美味しい
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さあ、ここから本当に美味しい人参ラペに仕上げるため、レシピについてどこまでも細かく、ドムさんに教えていただきます。
皮むきは、ピーラーではなく人参の方に力を入れて動かす
小倉:前回教えていただいた鶏の照り焼き、とても美味しかったです!今回は、ドムさんのお弁当屋さんで人気のメニューを何かひとつ、教えていただきたいです。
ドムさん:では、「人参のラペ」を作ってみましょうか。
小倉:人参のラペ!おしゃれな洋食のイメージがありますが、お弁当に入っているメニューなのですね。「ラペ」って、どういう意味でしたっけ?
ドムさん:フランス語で「細切り」という意味ですね。人参のラペ、作ったことはありますか?
小倉:はい、人参を細切りにして、作ったことはあります。ただ、甘酸っぱい漬物みたいになってしまいあまり美味しいとは思えず、それっきりですが。
ドムさん:なるほど。僕がお店で出す弁当は日替わりなんですけど、人参のラペは毎日定番で入れている人気のおかずです。ちょっとしたテクニックや工夫を覚えるだけで美味しい人参ラペができますよ!
小倉:わあ、楽しみです!
ドムさん:今日は200gぐらいのサイズの人参ですね。大体普通スーパーで売られてる人参より少し大きいくらいです。まず、ヘタをくり抜きます。
小倉:え、くり抜くんですか?私はこれまで、ヘタのある部分をまっすぐ切り落としていました。
ドムさん:くり抜いた方が、ヘタの周りも食べられます。なるべくロスを出さないよう、農家さんへのリスペクトです。あとは、ピーラーで人参の皮を剥いていきましょう。
小倉:・・・あれ?引っかかって、ドムさんのようにスーッと行きません。
ドムさん:柔らかい人参だからかな?ピーラーを人参に沿わせたら、ピーラーではなく、人参の方を動かすのがコツです。ある程度力を入れた方がやりやすいですね。
小倉:本当だ、やりやすい!思ったより力を入れて、人参を動かすイメージですね。
小倉:皮は残ると問題ありますか?
ドムさん:人参は皮付きでローストする料理もあります。食べられないわけではないのですが、ラペの場合は皮がない方が食感がいいと思います。今回は口当たりと食感重視で、なしで行きましょう。
小倉:わかりました!
繊維を破壊して人参を削る。おすすめの道具、チーズグレーター
ドムさん:本来は硬いチーズを細かく削るチーズグレーターを使って、今回は人参を細かく削っていきます。
小倉:ラペの意味は「細切り」ですが、実際は削るんですね。
ドムさん:そうですね、このレシピでは繊維を壊しながら擦る、という感じです。「にんじんしりしり」の要領です。にんじんしりしり、ご存知ですか?
小倉:聞いたことはあります。
ドムさん:沖縄に古くから伝わる人参の惣菜です。グレーターの荒い方の刃を使って、人参を崩しながら、削っていく感じです。やってみましょうか。
小倉:人参を当てる角度は、沿わせる感じでしょうか?
ドムさん:人参を寝かせ気味に、グレーターに対して鋭角に当てるといいですね。なるべく3-4cmの長さになるように削っていきます。
小倉:割と力が入りますね。
ドムさん:抵抗が大きくなるので、人参の接する面が小さい方がやりやすいです。自分の指を削らないよう気をつけてくださいね。
小倉:チーズグレーターは持っていないのですが、包丁で千切りするのではダメでしょうか?
ドムさん:食感が違うものになってしまうので、できれば準備してほしいですね。
小倉:食感が違うんですか。あ、ほんとだ、グレーターで削ったものは、切り口がギザギザしてますね。
ドムさん:ここに、分量外の塩をひとつまみ程度入れて、よく混ぜます。味には影響しないぐらいの量ですが、10分くらい置いておくと塩が人参に染み込む浸透圧の影響で、水分がかなりの量出てきます。
ドムさん:包丁で千切りすると、食感が違うのと、人参の水分の出方が違ってくるので、全然違う料理になってしまうんです。
小倉:なるほど、チーズグレーターは必要ですね。
ドムさん:ひとつあれば、鬼おろしみたいに食感を残しながらすりおろしができるので便利ですよ。そしてもちろん、もともとの使い方の、パスタの仕上げなどでパルメザンチーズを削りながらかけることもできます。お勧めの道具のひとつです。
クミンの香りは、ご飯と一緒に食べるとちょっと幸せ
ドムさん:この間に、クミンに火を入れていきましょう。鍋に常温のオリーブオイルとクミンシードを入れて、弱火で温めていきます。
小倉:先にオイルを熱するのではなく、両方入れてから火をつけるのですね。
ドムさん:そうです。ごく弱火でクミンの香りをしっかり出すために、焦がさないようにじっくり火を入れていきます。先にオイルを温めてクミンを入れると焦げやすくクミンの香りというよりも焦げの香りになってしまうからです。
小倉:もしクミンがなかったら、どうなりますか?
ドムさん:今回のラペとは違う印象のものになりますが、手に入りやすい調味料でいうと、例えばマスタードを入れると、香りとか粒々の食感があってそれはそれで美味しいラペになると思います。
小倉:ドムさんのレシピではクミンの香りが鍵なのですね。
ドムさん:僕の人参ラペは、お弁当に定番で入れているのですが、カレーの添え物のアチャールみたいに、ご飯と一緒に食べるとちょっと幸せになるっていう感じをねらっています。クミンの香りと、ご飯の香りは馴染みやすいんですよ。
小倉:ご飯にも馴染むラペ!楽しみです。クミンは他の料理にも使えますか?
ドムさん:カレーに入れてみたり、ちょっと包丁で叩いてマヨネーズに混ぜると、茹でたカリフラワーなんかに合いますね。
小倉:おいしそう!今度買ってみます。
オリーブオイルは、サラダ油でも大丈夫ですか?
ドムさん:いいですよ。今回はオイル自体の香りは必要ないので、サラダ油とかグレープシードオイル、菜種油とか、あまり味に特徴のないものがいいと思います。
ドライマンゴーは、人参の水分を吸わせて戻す
ドムさん:人参から水分が出てきましたね。ここに、塩と砂糖を加えて味を決めます。
小倉:味を決める、というのは具体的には?
ドムさん:少し食べてみて、おいしいと感じるかどうかがポイントです。いきなり分量通り入れるのではなく、少しずつ入れて様子をみましょう。
小倉:人参の水分は搾って捨てるのかと思ってましたが、そのまま調味料を入れるんですね。
ドムさん:人参からの水分は搾らずに、そのまま使います。ここに、さらに刻んだドライマンゴーを入れていきます。ドライマンゴーに人参の水分を吸わせて、ちょっと戻すイメージです。
小倉:マンゴーに、人参の水分を吸わせてあげるのですね。
ドムさん:一晩置いておくと、マンゴーが水分を吸ってちょっと崩れたりして、人参と一緒に食べるとマンゴーの香りや甘さが加わって馴染んでさらにおいしくなります。
小倉:人参から出る水分は、必要だったのですね。以前作ったときは捨てていました。
ドムさん:この後、油と乳化させてドレッシングみたいにあえていくのですが、油と乳化させるために人参の水分を使うんです。乳化というのは、液体とオイルをとろみが出るまでしっかり混ぜ合わせた状態のことです。ただ、あまりに大量の水分が出たら、捨ててもいいですよ。
小倉:なるほど!マンゴーは、他のドライフルーツだと難しいですか?
ドムさん:マンゴーの甘みと香りが人参の香りと相性がいいと思うので、僕はマンゴーを使っています。ドライマンゴーが人参の水分を吸うからこそ、馴染んで美味しくなるレシピです。でも、レーズンなどでもアクセントみたいになって、それはそれでおいしいと思いますよ。さらに、刻んだ胡桃を入れます。
小倉:ローストした胡桃ですか?
ドムさん:そうです、塩が入っていない、素焼きの胡桃がいいですね。塩が入っていると、味の邪魔になるので。
次回は8/30(火)に公開予定です。水分が出ていい塩梅にくったりしてきた人参に、クミンの香りを移したオイルを和えて仕上げていきます。ドムさん流の「人参のラペ」、いったいどんな味になるのでしょうか?お楽しみに!