“仙人”との出会いから農業へ
−−本日は宜しくお願いします!早速ですが、まずは内藤さんが農業をはじめたきっかけについて教えてください。
内藤さん:私が農業を始めたのは大学を卒業してからでした。
親が農家だったわけでもなく、それまで農業には縁がなかったのですが、大学生の頃に“仙人”のような農家さんに出会い、その人に憧れを抱いて、農業をはじめました。
−−それは人生を左右する運命的な出会いでしたね!内藤さんは大学の頃から農業に関わる勉強をされていたんですか?その仙人のような農家さんが、どんな人だったのかも気になります!
内藤さん:大学では、地理学科というのを専攻し、その中の農業地理という分野で地域や農産物ごとの農業経営の実態を調査していました。私は卒論で、ある地域における有機農業の経営実態をテーマにし、アンケート調査で多くの農家さんを訪問していました。その時に、私が農業をやるきっかけをくれた仙人のような生活をする農家さんに出会ったんです。
その方は化学合成農薬や化学合成肥料、ましてや有機肥料も使わず、土も耕しません。保温や防草に必要なビニールなどの石油由来の資材も使わず、ほぼ自然の力の赴くままに野菜を育てる「自然農」という方法で農業をしている方でした。
食べるものはすべて自給し、住んでいたログハウスも自分で作り、電気は太陽光にしていたり、水は地下水をくんできたり、火は薪でおこす。自然と共に生きる美学をもつ“仙人”のような人でした。
そんな生き方をしている人に、今まで出会ったことがなかったので、「こんな人がいるんだ!面白いなぁ!」と衝撃を受けて、自分らしく生きる姿に強い憧れを抱いたんです。
そして「卒業したら、ここで農業を教えてください!」とお願いをして、実際に卒業後からすぐに住み込みで研修を受けることになりました。
自然と共に生きる、自給自足の毎日
−−すごい行動力ですね!卒業後、その方のもとで農業を学ばれたんですね?
内藤さん:はい、そこから農業に携わるようになり、その方が「自然農」で農業のやり方を教えてくれた私の先生です。でも栽培についてアカデミックに学んだわけではなく、どちらかというと農業の大変さと生きることは何かを学んだ気がします。
そこで1年間、先生や同じ研修生と共に生活をしていました。私にとっては本当に充実した毎日でしたが、同じように住み込みをしていたメンバーの中には、そこでの生活が“過酷”だと感じて、リタイアする人もいましたね。
−−リタイアする人もいるほどの生活、、どんな生活を送っていたのでしょうか?
内藤さん:そこでは、早朝、火をおこしてご飯を作るところから始まり、飼っていた鶏の世話をしたり、農地の開墾もするという生活でした。
食事は基本、塩以外の調味料は一切使わずに、育てた野菜や玄米を食べたり、蛇やザリガニが田畑に出没した時にはみんなで捕まえて食べてました。“謎のキノコ”を除いては、本当に色々なものを食べていましたね!
農地の開墾は、トラクターもユンボも使わず、クワやシャベルで大木の根っこを何本も掘って開墾していくんですよ?21世紀に!
当時は農業にまったく詳しくなかったので、「これが農業というものなのかぁ!」と思いながら毎日根っこを抜いたりしていましたね。
食生活も含めて制限のある生活や体力的なものを理由にリタイアする人もいましたが、私にとってはどれも新鮮な経験でした。
でもまぁ、、今こうして振り返ってみると、研修時代の生活は、私の農業人生の中で一番大変でしたね(笑)!
−−その生活は、他では味わえなさそうな体験ですね!そうして農業への道を開墾して行ったわけですね!
農家としてのスタート
仙人のもとで無事研修を経て、農家としての人生をスタートしてから14年目を迎えた内藤さんは、土の専門家・土壌医の資格も取得され多方面で活躍されています。そんな内藤さんが土壌や植物の性質に本格的に興味を持ち始めたのは独立して7年目。
土壌診断にハマり、土壌の種類やその成分的特徴、自身がやっている露地の畑以外に田んぼや果樹なども含め、農作物を栽培することの基礎的な全体像を学ぶことで、自分の農業のやりかたも徐々に変化していったそうです。
−−無事に研修を終えて、いよいよ自立しての農業がスタートしてからは、どのような経験をされてきたのでしょうか?
内藤さん:私は自然農から農業を学んでいるので、研修先のやり方をそのまま踏襲していた就農初期の頃はかなり苦戦しました。研修先では肥料を使わず(無施肥)、無農薬、土を耕さない(不耕起)自然農でも一定程度の農作物は育っていたのですが、私の畑で同じようにやってもなかなかうまくいきませんでした。環境や土壌の固有の条件にとても影響をうけているという当たり前のことを理解するのに最初の数年を使っちゃいました。
収穫できる量はすごく少ないのに、作物の管理や草刈りをするために、ガソリンなどの一定のコストが毎日かかります。「これって逆に環境にもよくないのでは?」と考えるようになって、自分の農業をより意味のあるものにしたくて、米ぬかや発酵鶏ふんなどの有機肥料や、防草のためのビニール資材も適切に使用していき、自然農から有機農業という栽培のスタイルを変化させていきました。
−−初めは自然農で試行錯誤しながらのスタートだったんですね。
内藤さん:そうですね。その後、農業をはじめて7年目ぐらいの時に土壌診断というものに関心をもったんです。やりはじめてからは、野菜を育てるための土について、今まで意識していなかった部分を知ったことで、ますます土の面白さに惹かれていきました。
それまでは、割と栽培ノウハウ(作業や種を蒔くタイミングなど)だけでやっていた感じでしたが、土壌診断をして、その土に足りない栄養を補うといったように、しっかり科学的な判断に基づいてアプローチをすると、ちゃんと結果にも反映されるということもわかってきました。その観点を取り入れることで、だんだんと自分のやり方を確立してきましたね。
自分がやりたい有機農業のスタイル
−−土壌診断へ関心を持ったきっかけについて教えていただけますか?
内藤さん:色々と勉強をしていく中で、有機農業をもっと科学的なアプローチでしっかりやろうという「BLOF(ブロフ)理論」のことが書かれた本を読んだことがありました。
−−ブロフ理論とはなんですか??
内藤さん:「ブロフ理論」は科学的アプローチを基盤にする有機農業の栽培体系の一つです。ただ肥料をあげるのではなく、何のためにその肥料をあげるのか、なぜその量が必要なのかなど、これまで感覚的におこなっていた栽培ノウハウを、植物の特性や土壌の仕組みに基づいて言語化し、理論的にことごとく裏付けていってくれました。それはまさに、私が栽培において身につけたいと思っていた栽培への思考の型でした。
そんなブロフ理論にも影響されて土壌診断を行い、足りない分のミネラル肥料などを積極的に活用し、作物の質や収量をあげることを一番に考えていた時期がありました。でも理想的な土壌の状態を狙っていくためには、手に入りやすい身近な肥料だけでは間に合いません。
内藤さん:有機肥料の範囲内ではありますが、そのほとんどが海外から輸入されたものになってしまいました。私は今でも多少は輸入された有機肥料を使いますが、それでもやはり有機農業は、野菜残渣や米ぬか、稲わら、鶏ふんなど、そのままではゴミになってしまうような資材を身近なところで手に入れて、資源として循環させ、色々と試行錯誤しながら野菜を作る方がやっぱりいいなって思っています。
雨量や気温、土壌や微生物などの状況によって効果が安定しなかったりするんですが、なるべく地域の落ち葉や米ぬかなど身近なものを使っていきながら、たまたま手に入るものも使いこなした有機農業をしていきたいと思っているんですよね。
−−なるほど、科学的なアプローチの有効性を理解しつつ、その中でも自然のものを使いこなすというのが、内藤さんらしいスタイルなのですね!
内藤さん:そうですね。またこれは農業全体に言えることですが、世界情勢など様々な要因が影響して、今は肥料も値上がりしているのが現状です。輸入しなければならないものに頼っていると、いずれ日本に入ってこなくなり、購入自体ができなくなるかもしれないという心配も出てきています。
そうなるとやはり、有機農業に興味がない人でも、地域資源を循環させていく有機農業的な手法をとらざるを得なくなるのではないかという危惧もしています。
家族や社員、耕作放棄地のために
現在、内藤さんは様々な種類の野菜を少しずつ育てる、少量多品目栽培というスタイルで有機農業を行っています。
生産する野菜の数はなんと80品目・200種類!!そしてその野菜は、広大な農地でまとめて生産するのではなく、小規模の畑をいくつも管理しながら生産しているそうです。
なぜそのような方法をとっているのか?
内藤さんにお話を伺うと「このあたりは田舎に見えるのですが、“都市近郊農業”と言われるエリアなんです。つまり、まとまった農地があまりないので私の場合は、1反(50m×20m※プール程度の広さ)の畑がいくつもあるような状態になっているんですよ。」と教えてくれました。
ちなみに、内藤さんの畑の敷地を全部合わせると、5ヘクタール。広さとしては、4.7ヘクタールの東京ドームより、畑の総面積は広いということになります。
これは都市近郊で同じようなスタイルの農業を営む有機農家の中では、大きな規模感だそうです。
農薬や化学肥料をつかわない有機農業を大規模でやるのは、管理だけでも大変という声も聞こえる中、内藤さんがこの規模感で展開をするのにはある理由がありました。
−−内藤さんは、もともと「この規模感で有機農業をやろう!」という考えをもっていたのでしょうか?
内藤さん:まったく考えていなかったですね。でも私が今の規模感でやっている理由は、家族や社員の生活を守るために自然に必要な規模になっていったというのが一つ。それと「耕作放棄地」の問題に対するアプローチというのも理由の一つです。
“耕作放棄地”と言われる場所を聞いたことはありますか?
農業などをしていた土地で、過去1年以上作物を栽培せず、今後も栽培する予定のない土地のことを“耕作放棄地”といいます。この辺りにはそういった“耕作放棄地”が多く存在します。そのまま放置されれば、木も草もボーボーに生えて、害虫や害獣などの住処にもなり、その地域に住む人の住環境に悪い影響を与えてしまうこともあるんです。また、放棄されている期間が長くなるほど農地としての復元が非常に大変になってしまいます。
私の畑がある埼玉県伊奈町では、新規で農業を始める人がとても少なく、一方離農される農家さんは年々すごい勢いで増えています。自分自身も力をつけてそういった耕作放棄地を積極的に引き受けて、農地を農地のまま維持していきたいという気持ちもあって取り組んでいます。
−−今では離農してしまう農家さんが多いと聞きますので、誰かがそこに対して取り組まなければならない現状があるということですね!
内藤さん:そうですね!でも、やはり厳しさ、大変さというのも実感しています。
肥料の問題も含め、そもそも儲かりづらい産業でもある農業ですが、さらに資材高騰や天候不順などの影響も相まって、いよいよ厳しい産業になっていくと予想されています。そんな中で、さらに使える資材の選択肢がぐっと狭まる有機農業をやり続けるのは、結構大変なんです(笑)!
でも、だからこそ今までの消費意識や市場の規格、流通体制などに依存しない、循環システムとしての有機農業を頑張って続けて、広げていくのはとても意味のあることだとも思っています。
少量多品目栽培でリスク回避
有機農業では、化学合成農薬、化学合成肥料を使用せずに野菜を栽培するため、自然環境にかなり左右されます。
昨今では温暖化のあおりを受け、夏の猛暑だけでなく、秋口まで例年に比べて暑い日が続きました。「この地域では11月下旬には霜が降りて、寒さで虫の活動も治まるのですが、今年は12月になっても虫の食害が続いてしまいました。」と話す内藤さんも、こうした気候の問題などに悩まされていたようです。
内藤さんの畑で育つ農作物は80品目・200種類。いわゆる少量多品目栽培をするのは、色々な野菜のそれぞれ異なる栽培の楽しさ、世の中にあるマニアックなニーズに応えたいという想いの他に、こうした天候に対するリスクを回避するという面もあるといいます。
内藤さん:自然環境の影響は、農薬などを使うことで抑えられることもありますが、有機農業では農薬は使わないので、よりダイレクトに影響を受けてしまいます。
そのため、基本的には色々なものを少しずつ作って、リスク回避することがスタンダードなやり方かなと思っています。
ただ、品目が多くなればなるほど生産効率は落ちるので、リスク回避と効率性の兼ね合いがとても重要になりますね。うちは80品目200品種ほどの野菜を育てていますが、さすがにここまで分散しなくてもいいと思います。
私の場合は、色んな野菜を育てて自分で食べてもみたいので、つい色々作ってしまいますが効率はすこぶる悪いです、、、
有機農業で地域に起こす小さな循環
内藤さんの畑の横にあるビニールハウス。中へ入ると、真冬の寒さを忘れてしまうほど、暖かい空間でした。そしてビニールハウスの奥に視線を向けると、たくさん積まれたビニール袋が目にとまります。
−−このたくさんのビニール袋は一体なんですか?
内藤さん:このビニール袋には有機農業をする自分にとって、大事な落ち葉が入っています。
この落ち葉は寒い冬に野菜の苗を育てるために使うものです。落ち葉を発酵させると微生物の活動によって発熱するのですが、この熱を利用することで寒い冬の間から「夏野菜」の苗づくりをスタートさせることができるんです。非常に手間がかかるので、今は一般的には電熱線にとって代わっていますが、「踏み込み温床」という昔ながらの育苗方法です。
ちなみに、この落ち葉は地域の学校の敷地で出た落ち葉です。そのまま捨ててしまえばただのゴミになってしまいますが、「踏み込み温床」にすれば電気いらずで育苗できます。熱源として利用した落ち葉は、さらに2年寝かすと野菜の苗を育てる良質な土としても利用できます。こんな風に地域で出たものを資源として活用できるのが本当にありがたいし、嬉しくもあります。
−−この落ち葉の量を集めるのも大変そうですね!
内藤さん:実はこの落ち葉は、地域の小中学校のPTAの方々を中心に、生徒や先生、ボランティアのみなさんが、学校の敷地の落ち葉を集めてくれたんですよ。以前、DOJOYラボでPTAの方々に向けてコンポストについての講座をやらせていただいたことがありました。それがきっかけとなって学校に働きかけてくださり、このような資源循環の仕組みにつながりました。
もともと学校では、時季になれば落ち葉掃きをしていたのですが、「これが野菜作りに使われる」という流れがあることで、いつもの落ち葉掃きに一つ意義が加わって、モチベーションが変わったと言ってくださる方もいて、すごくうれしかったです!
−−有機農業を通して、地域で小さな循環を知るきっかけがうまれているんですね!
内藤さん:そうですね、この落ち葉を活用して野菜の苗を育て、畑に植える。そして収穫できたものは同じ地域のスーパーに並びます。この野菜の源に「自分たちも関わっているんだ」と実感してもらえたら、食がもっと豊かになるのではと思っています。
また、畑に来てもらい、収穫体験などもやりたいなと思っています。有機農業で、農薬を使わないという大きなメリットの一つに、どんなタイミングでも収穫して良いという点があります。
農薬は安全性を保つために色々な使用ルールがあるため、自ずと畑の使い方がパターン化してしまいます。
でも、有機農業の自由度の高さには、まだ多くの可能性があるなと感じています。地域や学校との繋がりでいうと、“さいたまを有機農業の街へ”という想いで立ち上げた「さいたま有機都市計画」という有機農家グループをとおして、だんだんと具体的な動きになってきました。
−−地域とのつながりが広がることで、有機農業の可能性もさらに広がりそうですね!学校との関わりとしては、何か考えている取り組みもあるのでしょうか?
内藤さん:少しずつ課題を検討しなければいけませんが、今後は学校給食にも、有機農業的なシステム感を導入していけたらなという想いがあります。
既存の学校給食のシステムに有機野菜を使うというのはなかなか難しく、だからこそ、なんで難しいのか、そもそもなんでわざわざ有機野菜も使ったほうがいいという話が出てくるのか、給食で出た食べ残しをどうするのが合理的かなど、自分たちの暮らしている地域の農業をどういうものにしていきたいかということを、子供たちに考えてもらう場を提供できたらいいなって思っています。
「ちょっと付いてきてください」と内藤さんの後に続いてビニールハウスの外へ。「これが2年前の落ち葉です」と堆肥となった落ち葉の様子をみせてくれました。
集められた落ち葉は米ぬかと混ぜて発酵させ、その発酵熱を苗づくりに利用した後、2年かけて分解させると、野菜の苗を育てるための良質な土(育苗土)になるそうです。こうしてみなさんと集めた落ち葉が堆肥になり、内藤さんの畑で育つ野菜の土台になっています。
依存しない持続可能な農業のために、“種”を守りたい。
これまでの経験や有機農業に対する考え方など、じっくりとお話いただいた今回のインタビュー。最後に伺った内藤さんが描く未来は、これからの私たちの食にも影響を及ぼすような大事なお話でした。
−−本日は、ありがとうございました!最後に内藤さんがこれからチャレンジしたいこと、すでに始めていることなどについて教えてください。
内藤さん:私がやりたいことでもあって、すでに少しずつ始めていることが「固定種」を守るということです。「固定種」というのは、作物の形質が親から子へそのまま受け継がれる種のことをいいます。例えば、固定種のトマトを育てて、おいしいトマトができたら、その種を採っておけば、その“おいしいトマト”の形質は種に受け継がれていきます。つまり、その次のシーズンにその種を蒔いて育てれば、同じトマトがまた食べられます。
一方で、スーパーなどに並ぶ多くの野菜は「F1品種」と呼ばれるものです。これは、異なる特性を持つ親同士を掛け合わせた“雑種一代目”になるもので、例えばお母さんが病気に強く、お父さんの体が大きい場合、これらを掛け合わせてできた子供の代の野菜は病気に強く、大きくたくましく育つという特徴があります。
固定種は、親の形質が子に受け継がれていて、同じ形質の作物を何代にもわたって栽培することができますが、F1品種は違う親同士を掛け合わせた子の種なので、孫の代(二代目)からはもうバラバラの特性が表出してしまいます。F1品種の種を採取してまいても、小さいうえに病気にも弱いという、デメリットだらけの作物がランダムに出てきてしまうんです。
『固定種専門の苗屋さん』で未来につなぐ
−−なるほど。固定種を守らないといけないという考えについて、詳しく教えていただけますか?
内藤さん:固定種とF1品種を同じ条件で栽培すると、固定種に比べてF1品種のほうが歴然と収穫量が多いことがわかります。つまり固定種は、今の農業経営のシーンではとても生産効率が悪く、固定種だけ育てていたら商売としての再生産が危うくなってしまうという現実があります。すると当然農家は収穫量が多いF1品種を栽培したくなるので、市場に流通している作物のほとんどがF1品種になっていくんです。F1品種は種苗会社の叡智がつまっている素晴らしい品種であることは疑いないものですが、自分で種とりができず、毎年種を購入する必要があるという構造には、少し不安も感じています。
種は農業だけでなく、すべての食べ物の根幹なので、そこを特定の種苗会社に完全に委ねてしまっていいんだろうかという懸念があります。だからこそ、自分たちの手で少しでも固定種を残していくことに、大きな意義があるんです。
そうした思いから、うちでは3年前から『固定種専門の苗屋さん』を季節限定で始めました。農家が固定種を使うのは商売としてはなかなか難しいので、家庭菜園をする方々に固定種を守っていって欲しいなと考えたんです。将来的に私たち農家が、何かの拍子で種が手に入らないという問題がおきたら、家庭菜園の方々に種を分けてもらうという仕組みをつくりたいと思っています。
−−固定種の種を守ることの意義がすごくよくわかりました。普段は当たり前のように野菜を食べている私たちの未来にも大きく影響するんですね。だからこそ、家庭菜園で各世帯が固定種を守ることができたら、少しは未来が変わってくるかもしれませんね。
これからの固定種の未来も含めて、内藤さんらしい有機農業のスタイルで、色々な地域におけるきっかけづくりや取り組みが楽しみです!