2024.04.23. | 

[Vol.2]“生ごみを良質な土にする”だけじゃない コンポストが楽しくなるツール

コンポストは場づくりのニュースタンダード。生ごみを生ごみとして捨てるのではなく、堆肥にしてコミュニケーションをおこし、場をつくっていく。合同会社こたつ・安藤さんの想いからはじまった『FARM SPOT』。Vol.2となる今回は、コンポストのツールのデザインなどハード面を担う建築設計事務所のツバメアーキテクツさん、土の専門資格(土壌医、土づくりマスター)を有しコンポストで社会のギアチェンジを目指す有機農家チーム「DOJOYラボ」、その代表の愛敬さんにお話を伺いました。

単なる道具ではなく、コミュニケーションが生まれるツールに。

発起人の安藤さんから、Yuinchu小野に伝播した想いは、小野から建築設計事務所のツバメアーキテクツ山道さん、木原さん、川田さんへと伝播します。コンポストのツールのデザインを担う皆さんは、活用される場における役割や機能性と向き合いながらも、コンポストの本質も重視。一つ一つの疑問をアドバイザーの愛敬さんに質問しては解決するというスタイルに、愛敬さんも「普段聞かれないような専門的な質問ばかりだし、本当に熱心で驚きました」と振り返ります。

ツールのデザインを依頼したYuinchu小野も、その領域を超えてきた詳細な分析力、探究心に圧倒されていた模様。そんなツバメアーキテクツが舞台として活躍する建築業界で、デザインをする際に重要視しているのが地面のデザインだそうです。そしてこの概念が『FARM SPOT』のツールコンポストにも活かされているといいます。今回は『FARM SPOT』だからこそ生まれた着想やコンポストの可能性についてのお話を改めて伺いました。

 

−−今回はツールのデザインを担当されるということですが、どんなイメージで取り組まれていますか?

山道さん:今回、小野さんから“コンポストを起点にコミュニケーションをデザインする”というお話を聞いた時にピンッ!ときて、あんまり詳細を聞かずに「やりましょう!」って返事をしたんです 笑

というのも、もともと私たちが、建築設計事務所としてさまざまな空間のデザインに携わる中で、都市でも田舎でも考え方として重要視しているのが、立ち上がる空間の前に、土地や地面を考慮するという点なんです。今回はツールを通してそれを考えるきっかけになっていて、ただオシャレな感じにするのではなく、コンポストという活動を介して、どんなコミュニケーションが生まれるツールにするのか。例えば、既にコミュニティがある団地や小野さんが運営する施設などで活用されることを想定すると、そのツールを見た人が「他の場所で導入しよう」というアクションに繋がって、コミュニティを形成するきっかけになったり、既にあるコミュニティを耕す役割もありそうとか、このツールによって新たなコミュニケーションが生まれるっていう循環が発生する予感もしてます。その土地を考慮したデザインによって、コンポストのツールが単なる道具ではなく、人と人を繋ぐような開拓的な道具として活用されることが、私たちが貢献できるポイントだと思って取り組んでます。

 

コンポストのプロセスが見えるツール
“楽しい”イメージを伝えるのがコンセプト

こちらがそのツールのデザイン案。
「これは何だろう?えっ、コンポストの道具なの?って、見た人に思わせるというところから新たなコミュニケーションが生まれるかもしれない。それもFARM SPOTらしさかなと思ってます」と山道さん。

「うわべだけのデザイン性や斬新さだけでなく、堆肥化の機能も妥協したくない。」周囲を驚かせる熱量でアドバイザーの愛敬さんからいろいろ教わったというツバメアーキテクツの木原さんと川田さんは、小さなコンポスト容器で何日も実験を繰り返しながら、ツールの開発に取り組んだそうです。

ツバメアーキテクツの皆さんが考えるツールは、何やら楽しげ。一見、コンポストに関係ないのでは?と目を疑ってしまうようなデザイン案は、「難しそう、面倒くさそう」と思われがちなコンポストのイメージを変えたいという想いから生まれたそうです。生ごみが溜まり、堆肥化していくプロセスを見て、楽しい、美しいと感じられるように透明の容器にしているだけでなく、活用されるシーンを想定して、日常にフィットするように、その容器を台車とセットにして移動式にしたというのもこのツールならでは。他にも気楽さや参加したくなるような仕掛けで“楽しい”と感じられる仕様にしているとか。

これには愛敬さんも「美しさとか楽しさはコンポストの導入の障壁でもあって、一つの課題だったりするんです。こういったツールがあれば導入のハードルを下げたり、印象的な場づくりに作用したり、新しいコミュニケーションが生まれるイメージが湧きますよね」と『FARM SPOT』のコンポストに期待を込めました。

 

コンポストは、コミュニケーションを起こさせる装置

−−お話を伺っていると場づくりに関わる人には、コンポストがコミュニケーションのきっかけになるという認識が潜在的にありそうですね。

小野:そうですね、僕はコミュニティの前にコミュニケーションが起こるのが自然だと思っているので、自社のカフェやレンタルスペースもコミュニティのためにというよりは、コミュニケーションを起こさせるためにやっているという感覚はあります。今回の『FARM SPOT』もソーシャルグッドなコミュニケーションを起こすことで、本質的なコミュニティとは何かを考えたり、気づいたりするきっかけになるっていうサイクルも生まれるイメージはしてますね。山道くんがコンポストのツールは開拓的な道具と例えたように、うちではコミュニケーションのきっかけを作るブランドやサービスを装置っていう言葉で表現します。そんな感覚が僕と山道くんが共鳴できたところじゃないかなと思います。

 

−−みなさん“うんうん”とうなずいてますね。研究熱心なツバメの川田さんもやはり共感する点がやはり多いですか?

 

川田さん:小野さんからのレクチャーで、Yuinchuさんが装置を導入してコミュニケーションを生むというお話をうかがって、私も共感する点がいくつもありました。事務所でコンポストの実験をしている時も、他のスタッフが気になって話しかけてきたり、参加してくれたりしていたので、実感としてもコミュニケーションのきっかけを担う装置としてのポテンシャルがあるなと思いました。 コミュニケーションを起こすコンポストのツールとは何か?コミュニケーションが起こりやすくする為には、、というのを真剣に考えるようになりましたね。

 

知ってほしい、生ごみが良質な土になることを。
皆さんと一緒なら、僕らの限界を超えられる。

有機農業は農薬や化学肥料を使わない農業。そんな印象だけを持っていませんか?実は近代的な化学肥料などができるようになる前の農業では、地域からの蓄糞やお米を刈り取った後の稲殻を堆肥にして、土に戻すという循環で、野菜や作物が作られていました。昔の農業のように地域資源の循環に基づいたやり方こそが有機農業の本質だそうです。

「一次生産者として、野菜や作物を作って届けるということ以外に、プラスアルファの情報をお届けして、本質的な有機農業を知ってもらいたいと思っていたんです。」そう話すのは、埼玉県の農園「ヨサクファーム」を営みながら、土壌の専門家チーム「DOJOYラボ」代表の愛敬義弘さん。安藤さんがコンポストを始めるきっかけを作ったともいえる愛敬さんは、『FARM SPOT』で技術的な部分のサポートやアドバイザーとしての役割を担います。今回はこれまでの経験を踏まえたコンポストへの想いについてもお話しを伺いました。

 

愛敬さん:私たちは純粋に農園として、本質的な有機農業をしたいという想いでこれまで取り組んできました。土壌の専門的な資格も取得して、いろいろと知っていくうちに“生ごみは養分にも、土にとっても良いものだから、それを堆肥にして野菜を生産するという循環を実現したかったんです。実際に、野菜をお届けする時にカフェの生ごみを持ち帰るという取り組みをさせていただいている安藤さんのカフェでは、生ごみをゴミとして捨てることがほぼ無くなったという嬉しい結果にもなっています。ただ、コンポストを広く知ってもらうには「もう一歩踏み出していかないと。でも農家としての自分たちの力だけでは限界がある」と感じていたんです。 『FARM SPOT』はその限界に対する解決の糸口になるっていう希望なんです。『FARM SPOT』のお話をいただく前は、長期目線で3ステップの段階を踏んで、理想の有機農業の循環に向けて実現していこうと考えていました。ステップ1は、セミナーやワークショップで生ごみが土になることをまず知ってもらう。ステップ2では、飲食店やイベントで出た生ごみを回収して、堆肥をつくり、その堆肥で採れた野菜を提供するという循環を実際に起こしていく。ステップ3で日常的に循環の拠点となるような場を設けて、地域の当たり前として定着する座組をつくるという感じです。

ところが、今回1も2も飛び越えて、いきなりステップ3になる『FARM SPOT』がドーン!とあらわれたんです 笑

我々農家だけで、片手間では到底できないことを、座組を一緒に考えて、皆さんと一緒に啓蒙できると思うと、めちゃめちゃ幸せです。

 

安藤さん:いやーもう、それを聞けた僕が幸せですよ!

 

生ごみが土になるということ、コミュニケーションを起こすための道具、装置という捉え方もできるコンポスト。コンポストを起点としたコミュニケーションの在り方に、共通の認識を持ち合わせた仲間が集まって推進されていく『FARM SPOT』。場づくりのニュースタンダードになって循環させていくという未来がイメージできてきます。次回は、そんな皆さんを突き動かす『FARM SPOT』への原動力についてお話を伺っていきます。

 

次回は4/26(木)に公開予定です。

 

– Information –
FARM SPOT

ライター / Mo:take MAGAZINE 運営

Mo:take MAGAZINE > [Vol.2]“生ごみを良質な土にする”だけじゃない コンポストが楽しくなるツール