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意外と知らないローカルフード
2026.06.25. | 

【愛知】名古屋メシだけじゃない! 愛知のソウルフード | 意外と知らないローカルフード

食の歴史や文化、そして土地の魅力がぎゅっと詰まった“地域の味”を再発見して楽しく紹介する「意外と知らないローカルフード」。このコーナーでは“誰もが知っているあのメニュー”ではなく、知る人ぞ知るローカルフードや、昔から変わらないその土地ならではのこだわりの逸品、時代を超えて今もなお愛される一皿、その「食」の背景にある物語をひも解きながら、その地域ならではの味とは何なのかをカジュアルにお届けします!

第26回となる今回は『愛知県』。6月5日には、1900年以上の歴史を持つ熱田神宮の例祭「熱田まつり」が開催され、名古屋の街は花火や奉納行事の熱気に包まれました。さらに6月11日には、栄エリアの新たなランドマークとして注目される「ザ・ランドマーク名古屋栄」がオープン。伝統と新しさが交差するイベントが続き、いま愛知があらためて注目されています。

そんな愛知には、味噌カツやひつまぶしのような全国区グルメとは別に、地元の人にとって“当たり前”すぎるローカルフードが数多く存在します。その中でも注目するのは、学校給食から広がった、異色の人気メニューです。

給食の定番が食卓の定番に! 「イカフライのレモン煮」

今回紹介するのは、「イカフライのレモン煮」。揚げ物なのに“煮”? しかもレモン? その不思議な名前の通り、この料理は全国的にもかなり独特な存在です。発祥は、愛知県西三河地域の学校給食。衣をつけて揚げたイカフライを、甘辛い醤油ダレとレモン果汁を合わせた特製のタレにくぐらせて仕上げます。見た目に派手なごちそう感はありません。

しかし、これが一度食べると妙に記憶に残る味なのです。揚げたての衣は、タレをまとって少ししっとり。そこにレモンの酸味が加わることで、揚げ物特有の重たさがスッと軽くなります。醤油のコクと砂糖の甘み、そしてレモンの爽やかさ。その組み合わせは給食発祥とは思えない完成度の高さで、大人も「また食べたくなる味」として長く愛されてきました。

イカフライのレモン煮がユニークなのは、“揚げ物をあえて軽やかに食べる”という発想にあります。愛知の食文化というと、味噌カツやどて煮のような濃厚な味付けを思い浮かべますが、実際には、濃さ一辺倒ではありません。例えば、酢味噌おでんやなますのように、酢や柑橘を使った料理も多く、しっかりした味の中に酸味を効かせる文化が根付いています。甘辛いタレだけなら重くなりそうなところを、レモンが全体を引き締める。

酸味を効かせる文化に親しんでいたからこそ、給食でも子どもたちが食べやすかったのでしょう。さらに、イカという素材も絶妙です。噛み応えがあり、タレとの相性も良い。噛むほどに旨みが広がり、レモンの香りがあとを追いかけてくる。この“さっぱりしているのに満足感がある”バランスが、おかずとしての完成度を高めています。

 

「学校給食」こそソウルフードを生み出す装置

イカフライのレモン煮が面白いのは、飲食店発祥ではなく、学校給食から広まったローカルフードだという点です。

つまりこれは、「地域の子どもたちの共通記憶」から定着した味なのです。愛知県内、とくに西三河周辺では、給食の人気メニューとして知られており、「今日はイカフライのレモン煮の日だった」という記憶を持つ人も少なくありません。

大人になってからも「あの味をもう一度食べたい」と語られることが多く、近年ではスーパーや惣菜店でも見かけるようになりました。学校給食が単なる食事ではなく、“地域文化を共有する場”として機能していたことがよく表れています。

同じ味を食べ、同じ思い出を持つ。その積み重ねが、ローカルフードを“郷土の味”へと変えていくのです。以前紹介した長野の「キムタクご飯」など、愛知に限らず、給食は食文化の醸成と継承のために重要な役割を果たしています。

 

名古屋メシの陰にある、もうひとつのソウルフード

愛知の食文化は、全国的に見るとどうしても“名古屋メシ”のイメージが強くなりがちです。味噌カツ、手羽先、ひつまぶし、あんかけスパ、どれもインパクトが強く、観光客向けの華やかさがあります。

しかし、イカフライのレモン煮は少し違います。観光客向けに作られた料理ではなく、地域の日常の中で育まれてきた味。派手さはなく、むしろ「家や学校の延長線上」にある料理です。だからこそ、愛知県民にとっては懐かしく、県外の人にとっては新鮮に映るのでしょう。

歴史ある祭りや、新たなランドマークでにぎわう一方で、学校給食から生まれた素朴な料理が今なお食べ継がれている。そんなところにも、愛知の奥深さがあります。イカフライのレモン煮とは、地域の子どもたちの記憶をつなぎ、日常の中で育ってきた“小さなソウルフード”なのです。

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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