SERIES
食とカルチャーの交差点
2026.08.13. | 

株式会社ハマラ代表取締役・柳沢 卓矢|食・とカルチャーの交差点

映画や音楽など好きなカルチャーの向こう側には、その人の考え方や感性が宿っている……そんな視点からお話を伺う、連載『食とカルチャーの交差点』。

第4回は、日本ギフト大賞を受賞した「八ヶ岳生とうもろこし」の生産販売や、“農”にまつわる体験やプロデュース事業を幅広く手がける、株式会社ハマラ代表取締役・柳沢 卓矢さんです。

多角的な視点で「新しい農のカタチ」を模索し続ける柳沢さん。そのロジカルでいて軽やかなフットワークの奥には、効率だけでは測れない「人間らしい無邪気さ」を何よりも大切にする、温かな眼差しが宿っていました。早速、その感性の正体を覗いてみましょう。

効率の向こう側にある「自分らしさ」

編集部: 柳沢さんは農園オリジナルブランド野菜である「八ヶ岳生とうもろこし」の生産から販売、さらにはブランディングや財務など経営者としての顔をもってらっしゃいますよね!柳沢さんが担う領域の広さに驚きますが、そんな柳沢さんを突き動かす「ワクワク」の正体って何でしょうか?

 

柳沢卓矢さん(以下、柳沢さん):そうですね、 僕はハマラの活動を通じて、関わってくれた人たちが、自分の中に新しい感覚が芽生えたり、その人がもともと持っていた「無邪気さ」に気づいてもらえたりすることに一番ワクワクしますね。

 

編集部:たしかに、ハマラさんが手がけるハマラハウスなどの体験の場も、もちろん八ヶ岳生とうもろこしも、大人、子ども関係なく、みんな目を輝かせますよね!もう理屈では語れない「無邪気さに気づいてもらうこと」を大切にするスタンスは、柳沢さんが普段触れているカルチャーともどこか地続きなのかなと。

 

柳沢さん:そうかもしれませんね。僕自身、旬の時期にそのモノを食べられる場所に赴いて、風土をまるごと味わうのが大好きなんです。他の地域へ行ったら、現地の方と必ず話しをして、自然を感じながらエネルギーを丸ごと受けに行く。そうやって自然体でいることを、日々の楽しみとして大切にしています。

 

「考え中」という、人間にしかできない贅沢

編集部:ではここからは、そんな感性や自然体でいることを大事にする柳沢さんのカルチャーに触れていきたいと思います!柳沢さんが農園で食べるお昼ご飯の時に聴きたい「音楽」を教えてください!

 

柳沢さん:そうですねぇ…感性で全て決断できればいいんですが、やはり考えて、考え抜いて、決断をしていくことも多くて、特に食事をする時には考えごとをしながら食事することも多々あります(笑)。そんな食事のときに聴きたいのは、「YONA YONA WEEKENDERS」の『考え中』という曲です。

 

編集部: タイトルからして直球ですね!この曲とはどんなシチュエーションで出会ったんですか?

 

柳沢さん: 僕は何かひとつに夢中になるとそればかり考えてしまう癖があって。そこから意識を少し離して、落ち着きたいときに聴くようになりました。歌詞にもダイレクトに「考え中」と入ってくるので、「あ、そうなんだ」って冷静になれたりします。

この曲は、少しふざけた歌詞にも聴こえるんですが、「飾っていない人間らしさ」に気づけるんです。いい意味でチカラを抜いて、自分らしさと向き合える曲だと思うんです。

 

編集部: なるほど〜。なんだか深いですね。

 

柳沢さん: 今の時代、考えることや悩むことって非効率だと思われがちですが、じつはそれこそが人間にしかできないことだし、人間にしか楽しめないことなんだなと気づかせてくれました!

 

「何もない」場所にある、小さな幸せの感覚

編集部:「非効率を楽しめるのは人間にしかできない」というお話、すごく刺さります。そんな柳沢さんの価値観に触れるような、印象的な「映画の食のシーン」はありますか?

 

柳沢さん: そうですね、映画だと『おおかみこどもの雨と雪』の主人公の母親が、子どもたちのために愛情を込めて作る、「素朴な焼き鳥を食べるシーン」ですね。

 

編集部: アニメの食のシーンって実写よりもインパクトがあること、ありますよね!ちなみに、いつ頃、観られたんですか?

 

柳沢さん: ちょうど脱サラして、東京から地元の長野県原村という田舎に戻って、農業を始めた頃です。この映画の主人公が2人の子どもを育てるために移住した田舎のモデルとなったのが、細田守監督の出身地である富山県の里山なんですよね。映画で描かれる田舎の風景は、どこか原村とも重なるところがあるんです。


↑「八ヶ岳生とうもろこし」の収穫体験もできるハマラノーエンのある長野県原村

 

柳沢さん:よく田舎って「何もない」といわれがちなんですが、僕はそう思ったことがないんです。この映画は、裕福でもない普通の暮らしを描いているんですが、ちょっとした良いことに気付けたり、ふとした日常がうれしく感じたり。

人として成長して生きている感覚を表現してくれているんです。それは田舎出身の自分にとっては普通の感覚なんですが、そのなんともいえない小さな感覚を思い出させてくれる映画でした。

 

編集部:柳沢さんがおっしゃったその焼き鳥のシーン、実は私もよく覚えています(笑)!あの焼き鳥の串をコップのタレにドボンと漬ける姿、すごく印象的ですよね。

 

柳沢さん: そうなんです!ただコップにタレを入れて漬けるだけなんですが「その家族ならでは」というのが最大限に感じられるシーンで、なんとも幸せで美味しそうで。自分の家庭だけのオリジナル料理をうれしそうに食べるシーンは、僕の子ども時代の幸せな思い出とも重なりました。懐かしい感覚を思い出したいときに、ぜひ観てほしいですね。

 

編集部: 柳沢さんが今、農業を通じて伝えようとしている「人間らしい無邪気さ」も、特別なことじゃなくて、懐かしい記憶や自分だけの心地よさを思い出させてくれる、そういうシンプルな場所にあるのかもしれませんね。本日は、ありがとうございました!

 

—————–

「何もない」場所にある、自分だけの幸せ。柳沢さんたちが作るとうもろこしが、なぜあんなに人を感動させるのか。それは、柳沢さん自身が「人間らしい余白」を誰よりも大切に味わっているからなのだと、お話を聞いてストンと腑に落ちた気がしました。

情報の渦である東京にいると考え事ばかりしてしまうので、今度、八ヶ岳の風に吹かれながら、採れたてのとうもろこしを丸ごと味わいに行ってみたいと思います。もちろん、耳元にはYONA YONA WEEKENDERSを忍ばせて。

 

柳沢卓矢profile:株式会社ハマラ代表取締役。公認会計士専門学校を卒業後、大手自動車メーカーに営業として就職。後に大手音響機器メーカーで法人営業を経験後、幼馴染の折井とともに農業共同農園「HAMARA FARM」を設立。2015年に自身が手掛けた「八ヶ岳生とうもろこし」が日本ギフト大賞長野県賞を受賞し、それに伴い生鮮野菜卸売会社として株式会社ベジパングを設立。025年3月に株式会社ベジパングの社名を株式会社ハマラに変更とともに代表取締役に就任した。

 

—– インタビューに登場した食とカルチャー —–
・music:『考え中』/YONA YONA WEEKENDERS
・movie:『おおかみこどもの雨と雪』/細田守監督

 

– Information –
ハマラノーエン

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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