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Food Future Session
2026.10.27. | 

【Vol.2】「食べる」だけでは伝わらない。3組の対話から生まれた“共創の種”

Vol.1では、第4回目を迎えたQuestion Hashtag #「食とコミュニケーション〜食は起点になるのか〜」という問いのもとに集まった、Yuinchu、エスビー食品、Creative Barの3組それぞれの活動を紹介しました。

Yuinchuが考えるのは、人や物、コトとの接点を生み出し、人が自然と場に関わるきっかけとなる“装置”。エスビー食品の齊藤さんは、調理実習を通して、決められた正解をなぞるのではなく、自分で考え、試すことのできる「余白」をつくろうとしています。

そしてCreative Barは、音楽や短歌、モクテルといった表現を介して、言葉だけに頼らず、自分自身や誰かとつながるための入口をつくっています。

アプローチはそれぞれ異なりますが、その根底には、最初から積極的に話したり、自分のことをうまく説明したりしなくても、人が自然とその場に関わることのできる「コミュニケーションの入口」をつくるという共通点が見えてきました。

では、そんな3組が実際に同じテーブルを囲み、それぞれの考えを交わし始めた時、何が起こるのでしょうか。

Vol.2では、ここから始まった対話を追っていきます。

「とうもろこし料理を食べるだけでは、伝わらない」

対話の最初に話題になったのは、Vol.1でも紹介したYuinchuの“装置”という考え方でした。

坂本は、Mo:takeが手がけるケータリングについて、料理やドリンクを届けることだけが役割ではないと話します。食やドリンクがその場に入ることで人が集まり、そこに新しい関わりや場が生まれていく。Yuinchuでは、食もまた、そんなコミュニケーションのきっかけをつくる“装置”の一つとして捉えています。

その考え方を象徴する事例として坂本が紹介したのが、先日SHIBUYA QWSで開催した、八ヶ岳のとうもろこしをテーマにしたイベントでした。

このイベントでは、とうもろこし料理を提供するだけでなく、八ヶ岳のとうもろこし畑をイメージした空間を渋谷につくり、八ヶ岳から運んだ新鮮なとうもろこしを、参加者自身が収穫できる体験まで用意しました。

Mo:take MAGAZINEでも紹介したこのイベントで大切にしたのは、とうもろこしをただ食べてもらうだけで終わらせないことでした。

実際に畑に入り、とうもろこしに触れ、自分の手で収穫する。そんな体験を通して、「このとうもろこしが育った八ヶ岳って、どんなところなんだろう」と、”食”を入口に、その先にある土地そのものへ興味が広がっていく。

 

坂本が伝えたかったのは、料理だけを届けるのではなく、その背景にある土地や物語まで含めて、体験として届けることでした。

そして実は、このとうもろこしイベントには齊藤さん自身も参加していました。

渋谷につくられた畑で実際にとうもろこしを収穫した齊藤さんは、今回、坂本があらためてイベントに込めた意図を話すのを聞く中で、自分がその場で感じていたこととの重なりに気づいたようです。

料理を味わうだけでは見えにくい、その食べ物の背景にある土地や営み。けれど、自分で畑に入り、触れ、収穫するところまで体験すると、その先にある「どこで、どのようにつくられているんだろう」というところへ自然と意識が向いていく。

齊藤さんが感じたのは、まさにそんな体験の力でした。

それは、坂本の話を聞いて初めて生まれた共感というよりも、実際にイベントへ参加した時に感じていたことが、坂本の言葉を通してあらためてつながった瞬間だったのかもしれません。

齊藤さん自身もこれまで、スリランカで紅茶を摘み、その生産過程を見たり、海外で現地の暮らしに触れたりと、食の背景にある土地や人の営みを実際に体験してきました。

QWSのとうもろこし畑での体験と、齊藤さんがこれまで各地で重ねてきた食の体験。そしてYuinchuが実践してきた「食を入口に、体験を通してその先へつなげていく」という考え方が、この対話の中で自然と重なっていきました。

 

「街全体を調理実習の場にしたら?」

とうもろこし畑の話から、対話は齊藤さんが取り組む調理実習へとつながっていきます。

生徒たちにどんなことを体験してほしいのかという問いでした。

齊藤さんが話したのは、Vol.1でも紹介した、レシピ通りにつくることだけが料理ではないという考えでした。

とうもろこしを自分で収穫してみることも、何をつくるか自分で考えることも、誰かと一緒につくることも含めて料理の体験。その工程のどこに楽しさを感じるかは、人によって違います。

齊藤さんは、そうした食に対するさまざまな楽しさや面白さを、生徒たちにも体験してほしいと話します。

また、あらかじめ決められた材料をそろえるだけではなく、スーパーに並ぶ食材を見ながら、「今日は何をつくろう」「この野菜が安いから、これを使ってみよう」「このスパイスがあるなら、こんな料理にできるかもしれない」と考えていったり、

その場に並んでいる食材を見ながら、「これとこれを組み合わせたらどうなるだろう」「この食材なら、こんな料理にできるかもしれない」、そんなふうに、目の前にある選択肢の中から自分なりの組み合わせを探していく「料理をする前の買い物の時間」もまた一つの体験になると言います。

そして、買い物までを一つの体験として考えていくと、「調理実習」は教室の中だけで完結させなくてもいいのではないか、という話へとつながっていきました。

そんな対話を重ねる中で生まれたのが、「街自体を調理実習の場にしてみたら?」というアイデアでした。

 

教室の中だけで調理実習を完結させるのではなく、スーパーや地域の商店とも連携し、実際に街へ出て、自分たちで食材を探し、選び、買うところから体験してみる。

調理する時間だけではなく、「何をつくろう」「どの食材を選ぼう」と考えるところまで含めて、一つの調理実習にしていくというアイデアです。

一人で決めるのではなく、「これを使ってみない?」「こっちの方が合いそう」と誰かと相談しながら食材を選び、つくるものを考えていく。そんな過程そのものにも、自然と会話や新しいコミュニケーションが生まれていきます。その話に齊藤さんも「めちゃめちゃ楽しそう」とうなずきます。

「それなら、学校でモクテルをつくるのも面白いのでは?」

教室の外へ広がっていった話は、さらにCreative Barの活動ともつながっていきました。

モクテルはアルコールを使わないからこそ、学校のような場にも取り入れやすいものです。

食材を自分で選び、組み合わせながら料理をつくるように、モクテルもまた、色や味、香りなどを自分なりに組み合わせながら、一杯をつくっていくことができます。

「どんな味にする?」「どんな色がいい?」と相談しながら一緒につくれば、その過程そのものが、新しいコミュニケーションのきっかけにもなる。

さらに話を重ねる中で、今度は「そこにスパイスも使えるかもしれない」というアイデアも。Creative Barが持つモクテルという表現に、エスビー食品が長く向き合ってきたスパイスやハーブを掛け合わせてみる。そこに、Yuinchuが取り組んできた、食を通して人が自然と関われる場づくりの考え方も重ねていく。

そう考えていくと、それぞれが別々に取り組んできた活動の間に、これまでになかった新しい接点が見えてきます。

例えば、街へ広がる調理実習の中でモクテルをつくってみる。そこにスパイスを取り入れ、味や香りの違いを楽しみながら、誰かと相談し、自分なりの一杯をつくってみる。

まだ具体的なプロジェクトが決まったわけではありません。それでも、それぞれが持っているものを持ち寄りながら話していくことで、「こんなことも一緒にできるかもしれない」という可能性が、その場で少しずつ見えてきました。

3組は、最初から一つのプロジェクトをつくるために集まったわけではありません。互いの活動や考えを知り、そこに自分たちができることを重ねていく。そのやり取りの中から、最初にはなかったアイデアが自然と生まれていきます。

Question Hashtag #が目指していた、活動や立場を越えて「横串を刺す」ということが、まさに目の前で形になり始めたような時間でした。

 

3組の対話が、一首の短歌になった

そんな3組の対話を聞きながら、ぐみ沢エイ子さんは、その場で交わされている言葉を拾っていました。ぐみ沢さんが普段から行っているのは、誰かとの会話や、そこから生まれた記憶や思いを受け取り、それを短歌という形にしていくことです。

今回も、3組の話を聞きながら言葉を拾い、対話がひと段落したところで、一首の短歌を披露しました。

「食べるんじゃ、伝わんなくて、楽しみを、分量なしで、見つけてほしい」

最初の「食べるんじゃ、伝わんなくて」という言葉には、とうもろこし料理を食べてもらうだけではなく、畑に入り、自分で収穫するところまで体験してもらうことで、その先にある土地や背景にも興味を持ってほしいという、Yuinchuの話が重なっています。

一方、「分量なしで」という言葉から浮かぶのは、齊藤さんがVol.1で紹介した、スパイスの分量を書かないレシピです。

決められた量をそのまま入れるのではなく、自分で考え、試しながら、自分なりの味を見つけていく。

一見すると別々に見えていた二つの話ですが、短歌の中では、「楽しみを見つけてほしい」という言葉によって一つにつながっていました。

食べるだけで終わらず、自分で体験してみること。

決められた正解をなぞるだけではなく、自分で考え、試してみること。

そこにはどちらにも、誰かから答えを与えられるのではなく、自分自身で何かを感じたり、面白さを見つけたりしてほしいという共通するものがあります。

 

ぐみ沢さんの短歌は、誰か一人の発言をそのまままとめたものではありません。その場で交わされていた複数の言葉や考えを拾い、それまで別々に語られていたものを、一首の短歌の中でつなぎ直したものでした。

Vol.1で紹介したCreative Barが、感じたことや対話の中から生まれたものを短歌やモクテルといった別の表現へと変えていくように、今回も3組の間を行き交っていた言葉が短歌になったことで、それまで別々に見えていた考えの間にある共通点が、少しずつ見えてきます。

異なる活動や考えを無理に一つにまとめるのではなく、それぞれの違いを残したまま、新しい接点を見つけていく。

ぐみ沢さんがつくった一首の短歌もまた、Question Hashtag #が目指していた「横串を刺す」ということを、別の形で表していたのかもしれません。

 

「意味のあること」を言わなくてもいい

3組の会話はまだまだ続きます。最後に話題になったのが、体験したことをどう「振り返るか」ということでした。

学校やイベントでは、何かを体験した後に「何を学びましたか?」と聞かれたり、その経験から得たものを言葉にすることを求められたりすることがあります。

もちろん、振り返ることそのものが必要ないわけではありません。ただ、あらゆる体験を必ず「学び」や「成長」としてまとめなくてもいいのではないか、という話が出てきました。

料理なら、食べて「おいしかった」と感じたり、「自分はこの味が好きだな」と思ったりする。それだけでも、その人にとっては十分な体験なのかもしれません。

何か大きな意味を見つけたり、きれいな言葉でまとめたりしなくても、「ちょっとこの感じが好きだった」くらいの感想があってもいい。

そんな話の中で、短歌について出てきたのが、

「意味のあることも言おうとせずに済む」という言葉でした。

短歌には、五・七・五・七・七という決まった形があります。一見すると制約があるようにも見えますが、むしろ形が決まっているからこそ、その中で自由に遊ぶことができ、その時に感じたことを、無理に意味のある言葉へまとめずに置いてみることができる。表現に正解があるわけではないと、ぐみ沢さんはいいます。

うまく言葉にできなくてもいいし、何か意味のある答えを出さなくてもいい。大切なのは、その時に自分が感じたことを、自分なりに受け取ることなのかもしれません。

3組の対話は、そんな「正解を求めすぎなくてもいい」という話へと、少しずつ広がっていきました。

 

食は、コミュニケーションそのものではない

Vol.1で紹介した、Yuinchuの“装置”、齊藤さんが料理の中につくろうとしている「余白」、そしてCreative Barが実践する、言葉だけに頼らない表現。

それぞれ異なるところから始まった3組の考えは、同じテーブルを囲み、互いの話を聞いていく中で、少しずつ重なり合っていきました。

食があるだけで、自動的に人と人がつながるわけではありません。

けれど、何を食べようかと考えたり、誰かと一緒につくったり、モクテルの色や味を楽しんだりすることなら、最初から自分のことをうまく説明したり、積極的に会話したりしなくても、その場に関わることができます。

そして、同じものを見たり、味わったり、一緒に考えたりするうちに、「自分はこう感じた」「それなら、こんなこともできそう」と、自然と誰かとの会話が始まっていく。

今回生まれたアイデアは、まだ具体的なプロジェクトとして形になったわけではありませんが、普段は異なる場所で活動している3組が、「食」という一つのテーマを起点に、それぞれが持つ考えや経験を持ち寄ったことで、それまでにはなかった組み合わせや可能性が生まれ始めました。

仁平さんが企画の冒頭で話していた、QWSの中に「横串を刺す」ということ。

それは、異なる活動を一つの答えにまとめることではなく、それぞれの違いを残したまま、これまでつながっていなかったものの間に、新しい関係をつくっていくことなのかもしれません。

食は、コミュニケーションそのものではない。
でも、コミュニケーションが始まるきっかけにはなれる。

今回の対話は、そんな「食」が持つ可能性を、あらためて考える時間となりました。

ーinformationー
SHIBUYA QWS
エスビー食品株式会社
The Hearth(Creative Bar)
Yuinchu

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

モッテイクマガジンでは、イベントのレポートや新しい食のたのしみ方のアイデアを発信します。そして、生産者、料理人、生活者の想いをていねいにつないでいきます。 みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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