器が違うと、料理の見え方がガラリと変わる
今回のプロジェクトで佐賀の有田に行き、東京にはないちょっと変わったレストランと出会ったそうですね。ぜひ、詳しく教えてください。
真美子さん:”アリタセラ”という有田焼の卸売団地があるんですが、その中に「アリタハウス」というホテルのレストランがあります。コースは1種類しかないんですが、食器がすべて有田焼で、食器のテイストをトラディショナル、コンテンポラリー、デザインの中から選ぶことができるんです。
4人で食事をした時に、それぞれ違うテイストの食器で予約したら、コースの16品が全部違うお皿で出てきたんです。同じ料理なのにお皿が違うと全然違う料理に見えて、食器がこんなにも食事の印象を変えるものなんだ、というのを目の当たりにしました。
信明さん:絵付けの器と無地のミニマルな器では、同じメインディッシュでもまったく違う料理でしたから。
真美子さん:お互いに「そっちの方が高そうに見える」とか話しながら食べるのがとても楽しかったんです。そこで食器とお料理の関係について改めて考えさせられまして。絶対にお料理と食器を組み合わせて、今回のプロジェクトを成功させたいと思いました。
食卓にあってこその有田焼 だから料理とは切り離せない
一方、窯元さんの話の中からも、器と料理は切り離せないということが明確に見えてきたといいます。
真美子さん:窯元の皆さんの話を聞いているうちに、有田焼というのは私たちが思っている以上に暮らしの食卓に置かれる器なんだということがわかってきました。皆さん「器は食卓にあってこそ」というようなことをおっしゃっていたんです。
信明さん:ブランディングで明確になった皆さんのミッションにも「家族の繋がりに色を添えたい」「食卓に笑顔と楽しい会話を届けたい」「手仕事の器を通して人々の心に栄養を」というものがありました。
それだけではなく、レストランやホテルに器を卸している窯元さんが、「器は料理人さんにインスピレーションを与えるためにある」と言っていたんです。料理人さんが「この器だったらこういう料理ができるな」というひらめきを得ていることも、今回始めて知りました。
真美子さん:そうなってくると、そこには料理が欠かせません。アリタハウスで、食器が変わると料理の見え方も全然違ってくることを目の当たりにしたこともあり、作品としての器だけではなく、料理が載っている姿を伝えるということも必須なんだと改めて思いました。
そこでお二人がお皿に載せる料理を作ってくれる料理人を探していたところ、SAGAMAの動画を撮影したカメラマンが紹介してくれたのが、Mo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)でした。
器が違う
お二人と坂本が初めて会ったのは昨年10月。お互い通じ合うものを感じ、迷うことなく料理の依頼をすることが決まったといいます。お二人の中ではある程度盛り付けのイメージがあったとのことですが、坂本にはどのようにオーダーしたのでしょうか。
真美子さん:佐賀の焼き物のプロジェクトなので「器が引き立つものに」というのは言わなくてもお分かりだったと思うんです。それ以外として「器の形や色味を生かしたものにしてほしい、盛り付けるものはできれば素材の色や形を大切にしたものがいい」という希望をお伝えしました。
信明さん:坂本さんはすでに私たちのWebサイトなどをご覧になって、私たちがミニマルなものを意識していることを汲み取ってくれていたんですね。その場で「こんなのはどうでしょう」と提案してくれました。
そして、撮影されたのが上の写真と、トップの写真。まるでお花を生けたような、絵を描いたような、これまでのMo:takeのケータリングでは目にしたことがない、新たな世界が広がりました。
真美子さん:仕事としてはこちらのイメージそのまま作って頂ければ間違いないんですけど、プロの方というのはこちらのイメージを超えてくるんです。坂本さんはまさにプロフェッショナルな仕事として、私たちがイメージしているものを超えてきてくださいました。素晴らしい出来栄えで、撮影の時は本当に嬉しかったですね。
信明さん:きっと、器が坂本さんを刺激した部分もあるんじゃないかなと思います。もともと坂本さんが持っている素晴らしいものを器が引き出して、坂本さんの料理が器の魅力を引き出して。お互いに引き出すというインタラクティブな関係だったと思います。
最終回は、4/6(火)に公開予定です。ブランディングという仕事の魅力ややりがいなどについて、引き続き草野信明さん、草野真美子さんのお話をお聞きしていきます。(つづく)
– Information –
株式会社クレアツォーネ
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SAGAMA
https://sagama.jp