SERIES
Food Experience Story
2024.07.12. | 

【Vol.2】「美味しい」の入り口から届けたい、裏側のストーリー。

うま味とDHAたっぷりの美味しい藻の調味料「うま藻」。Vol.1では、AlgleXの高田さんに「うま藻」誕生のきっかけについてうかがってきました。Vol.2となる今回は、「うま藻」の開発や美味しさを届けるだけじゃない、その役割についてもさらに深掘り!そして、高田さんが描くうま藻の未来についてもお届けします!

未利用資源に新たな価値を!
美味しさを通して知るきっかけを!

−−ここからは「うま藻」の開発について伺います。「うま藻」はある未利用品を活用しているんですよね?

高田さん:「うま藻」で活用してるのは、本来捨てられてしまう泡盛の粕です。藻を育てる時に活用してるんですよね。泡盛粕はGABAやクエン酸なんかの栄養素が豊富で、この泡盛粕で特殊な条件で藻を育てると、必要な栄養素を藻が吸収して成長していくんですよ。これを品質、美味しさを保った「うま藻」を安定的に作れるようになるまで、ものすごく苦労しました。でも今は特許化をしたAIをつかった技術によって、高品質なものを安定して作ることができるようになりました。

 

−−まさに新たな価値に変えたわけですね!!ちなみに、他のお酒だとこうはならないんですか?

高田さん:これが全然違うんですよね!それこそ沖縄のビールとか色々試しましたけど、美味しくなかったり納得いくものはできなかったんです。それを泡盛粕でやってみたら、他のものとは全然違って、美味しくできたんですよね!

 

−−そんなに違うんですね!色々試した中で泡盛粕にたどり着いたって言う感じですか?

高田さん:いや、これもちゃんと理由がありまして。沖縄のお酒といえば泡盛ってみんな思うくらい有名なお酒ですけど、実は年々消費量が減少してて、産業としても苦しい状況なんですよね。泡盛の生産過程でできる泡盛粕の一部は「もろみ酢」っていうお酢の生産で活用されたりしますが、そのほとんどが捨てられてるんです。そこで、もしこの泡盛粕を使って、DHAを持つ藻類を発酵できれば、この伝統産業にも新しい可能性を作れるかもしれないと思ったんですよ。

 

−−そっか、ここにもそんな背景があるんだ!天然魚を減らさないっていうのもそうですが、高田さんの意識の中には、いつもそういった社会背景に対する課題解決っていうテーマがあるんですね!うま藻が担う役割って食の場に美味しさを届けるっていうだけではおさまらないですね!

高田さん:まさにそこなんですよ、美味しさを届けるのは当たり前で、うま藻は、美味しいっていう入口から入って、ちゃんとその裏にあるストーリーを知らせることも役割だと思ってるんですよね!天然魚や養殖魚の問題、泡盛のことも、それを知ってもらうきっかけに食という入り口があるというか。ちょっと手に取ってもらったら、美味しいのはもちろんで、それ以上にこれが何で作られたのか、それがどういう風に世の中を良くする役割があるのかということを、美味しさを通じて知ってもらえると嬉しいなって。

 

−−うわぁ!もう本当にそれですよね!うちのメディアもその価値観が強くて、よく話するんですよ、食は何かを知るきっかけ、食がメディアになるって。もう共感しかないですし、うま藻は、美味しい藻っていうだけでも好奇心をくすぐるし、それだけじゃないからこそ、美味しい体験と共にその背景を知って欲しいですね!

 

うま藻は知恵と技術と努力の結晶。
“開発は苦労の連続でした。”

−−お話を聞いていると、結構開発はスムーズにいって・・・

高田さん:いやいやいやいや!とんでもないっ!もう苦労ばっかりでしたよ!(笑)

 

−−あれ?そうなんですか!?(笑)ぜひ開発のエピソードもお聞きしたいです!

高田さん:まず「うま藻」は、藻を効率よく育てるプロと、藻を回収して乾燥させて商品化できるように管理するプラントエンジアを中心に生産していて、このプロフェッショナルのどちらが欠けても「うま藻」が誕生することはないんですが、最初はプラントエンジニアがいない状態でスタートしたので、かなり苦労したんですよ。今では笑い話ですけど、藻はどんどん育っていくのに、藻を回収できないから、どんどん藻ばっかり増えていくっていう状態に陥ったりして。

 

−−おぉそんなことが!

高田さん:もう本当に大変でしたよぉ。(笑) 藻を回収するためには、液体と個体を分離できる遠心分離機っていう機械を使っているんですが、自分たちでやると遠心分離の圧に耐えられなくて、藻がどんどん壊れるわ、藻のDHAも出ちゃうわで、当時何度チャレンジしても回収する頃には藻が跡形もなくなるっていう失敗の連続でした。そんなことをずっとやっているうちに、プラントエンジニアに出会えて、その彼が試行錯誤をして、やっとなんとか回収できるようになったんです。私と他のメンバーは、藻の密度の計測や状態を顕微鏡で確認したり、研究者のサポートをしてたんですが、もう初期の頃はそのサンプリングを4時間に1回はやっていたので、夜中も確認しに行くこともあって、本当に藻とともに生活していましたからね。(笑)

結果的にメンバーに恵まれて商品化が進んでいくんですが、もう本当に彼らがいなかったら今のうちの会社はなかったかもしれません。

 

色んな側面を見せながら「うま藻」を届けていきたい。

高田さんの想いからはじまり、苦難を乗り越えてようやく完成したプロフェッショナルの結晶「うま藻」。現在は国内を中心にイベントや有名シェフのお店とコラボをするなど積極的に展開中!そして「うま藻」は海を越えてアメリカ進出も視野に。そこで感じた日本との違いについてもお話ししてくれました。

高田さん:先日、アメリカのマーケットを視察して感じたのは、やっぱり健康意識や環境問題への意識が日本よりも高い。うま藻は、うま味食材でDHAを摂取することができるという特徴に加えて、海を守るという概念を持っているから、こういった特徴との相性が良くてこれはマーケットを取るチャンスが十分あるって感じました。それともう一つ、良いものは多少高くても買うっていう価値観も違うかな。

 

−−意識や価値観の違いは確かにありそうですね。日本では、良いものを安く!みたいな風潮もありますもんね。

 

高田さん:そうですよね、そもそも日本の第一次産業のポテンシャルはやっばり高くて、食は圧倒的に美味しいし、クオリティも高い、でもそれらがあまりにも安く売られてる現状っていうのがあると思ってて。
日本の漁業でいえば、リターンや浜値が低いという点も問題で、だから量を獲らなきゃ儲からない、生産者が利益を取れる仕組みがないと、水産業は衰退産業に向けて加速してしまうという心配もあります。しっかり価値に対してふさわしい価格にしないと魅力的な産業にならなくて、結局、お金を稼げないからってその産業は衰退していくんですよね。

 

−−漁業のお話がありましたけど、その点をうまくやってる国だったり団体などはあったりするんですか?

高田さん:例えばノルウェーなんかは、漁船ごとに獲れる量が限られていて、これ以上取ってはいけないという規定の枠がしっかりありますね。だから、市場にバーと魚が流通することもなければ、枯渇することもない、これがある意味、漁業として正しいやり方なのかなと思います。しかもそのルールが守られてるから、天然の魚は個体数を維持したまま推移していってるんです。そうするとプライスもちゃんと適正値に保たれるんですよね。

 

−−なるほどなぁ、やっぱり消費者がちゃんといいものには対価を払うっていう意識がないと、本当に良いものはどんどん減っていってしまうような気がします。

高田さん:ですね、今までは確かに“安くて良いもの”っていう時代の流れもあったけど、それはもう時代的に変わってきているんじゃないかなと思ってて。恐らく一次産業のものだけじゃなくて、他のものにも言えることですが、良いものにはそれなりの金額を払うという消費者側の意識も重要ですよね。だから、うま藻もいかに消費者の方々が価値を感じてくれるように提供できるか、ここからが勝負なのかなと思ってますよ。うま味であり、DHAであり、海を守る食材でもあるので、いろんな側面を見せながら、いろんな人が使いやすいような形でうま藻を提供していきたいですね。

 

−−そうですよね!そんな風に消費者側の意識も変われば、その産業も続いていくし、良いもので溢れる社会になるし、そうなると世の中で価値があると思われているものだけが残って、そうじゃないものは消えていくみたいな世の中にりそうですよね。そんな世の中に変わっていった時、うま藻はどうなっていると思います?

高田さん:やっぱり「うま藻」はほかの調味料と肩を並べてるんじゃないですかね?(笑)真面目に、今世の中で流行っているものとか、利用されているサービスとか、食ではない産業で200年、300年持続させるのってかなり難しいと思うんですよ。テクノロジーなんかでも環境の変化に適応するために進化していくものだし。でも、食ってやっぱりすごくて、例えば古い歴史がある塩や醤油は、今も醤油、塩として日常にあるじゃないですか。それは食だからこそ続いていると思っていて、そうなるには品質や美味しさは絶対に必要な要素だなって思ってるんですよね。その点、うま藻は健康にも良くて美味しいので、先の未来でも食の場で欠かせないものとして残って、美味しいっていう入り口から裏側のストーリーを届けてるって思います。

ここまでうかがってきた「うま藻」のあれこれ。苦しかった時のエピソードも明るく楽しげにお話してくれたり、かと思えば社会課題を真剣な表情で教えてくれたりと、色んな学びがあったインタビュー。実は今回お伝えしきれていない面白い特技を持つ研究者のお話などなど、まだ深掘りできていないところもありますが、それはまた別の機会に!さて、最終回となる次回は、「うま藻」にスポットをあて、高田さんオススメのうま藻の美味しい食べ方をご紹介します!うま藻を美味しく食べるなら、みんなが大好きなあの食べ物と一緒に!!さてさてその食べ物とは一体!?最終回となる、次回は7月16日に公開予定です。

Vol.3はこちら

 

– Information –
Umamo ECサイト
Umamo_インスタグラム

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

モッテイクマガジンでは、イベントのレポートや新しい食のたのしみ方のアイデアを発信します。そして、生産者、料理人、生活者の想いをていねいにつないでいきます。 みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

Mo:take MAGAZINE > Food Experience Story > 【Vol.2】「美味しい」の入り口から届けたい、裏側のストーリー。

Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

Mo:take MAGAZINEは、
食を切り口に “今” を
発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、
その時、その場所は、
より豊かになるはず。

みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

みんなとともに考えながら、
さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性を
きりひらいていきます。

さあ、いっしょに たべよう

OTHER SERVICE

様々な形で「食」が生む新たな価値を提供します。

ブランドサイトへ