2019.11.05. | 

「伝える」と「つなぐ」でお茶の世界を盛り上げたい!

「生産者さんと、お互いに顔が見える関係でありたい」。そんな想いから、今年4月、抽出舎が運営するSatén japanese teaのスタッフ全員で、茶畑を訪問したそうです。こういった想いや行動から、抽出舎のお茶の美味しさの秘密を紐解いていきます。また、品質の良いお茶を守り続けるために大切にしていること、抽出舎のお二人が現在構想している新たな動きについてもお伝えします。

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茶葉の個性を楽しむか、生産者の個性を楽しむか

Saténのお茶は、大きく分けて2種類あります。1つは「シングルオリジン」といって、単一の品種に絞ったお茶。もうひとつはブレンドです。

 

小山さん:シングルオリジンは、茶葉そのものの個性が強く出ます。それに対しブレンドは、「これがうちのお茶です」という農家さんの個性が強く出ます。お店では、それぞれの個性を生かした淹れ方をしています。

 

また、シングルオリジンもブレンドも、単一の農家さんのものに絞っているそうです。その理由について伺いました。

 

小山さん:生産者の顔が見えることでお客様にも安心してもらえますし、こだわりや想いの部分までしっかりお客様に伝えることができます。

 

藤岡さん:淹れ方にも影響します。たとえば「あの農家さんは香りを生かしたお茶をつくっている」ということを知っていれば、淹れる時にもできるだけ香りを生かした淹れ方をしようと思いますし。

 

小山さん:高品質な製品を守りたい、という思いもあります。どんなにいいお茶でも、誰かが扱わなければ消えてしまいます。だからこそ、ぼくらがその価値をお客様にお伝えすること、また、お客様からの反響を農家さんにフィードバックすることを大切にしています。そうすることで、高品質なお茶がつくられ、飲まれ続けるサスティナブルな関係性をつくっていきたいんです。

 

 

自然相手の仕事だからこそ、率直なやりとりを大切に

お茶は5〜6月が摘採時期です。8月に小山さんは現地を訪れ、今年の茶葉の出来具合についてお話を伺ったそうです。

小山さん:長崎の農家さんのところに行って、いろいろお話を伺ってきました。

 

今年は猛暑で葉が焼けたり、水害で肥料が流れてしまったりしたそうです。自然を相手にする仕事の難しさを感じずにはいられません。

 

小山さん:毎年環境が異なるので、当然味わいに違いが出ます。その違いが、飲む人にとってどこまでがOKなのかを見極めるのは、ぼくたち「淹れ手」の仕事だと思います。ありがたいのは、率直な感想をお伝えすると、「今年はこういう状況だったので、こういう味になっています」と農家さんからも率直に理由を話していただけること。僕たちが「こんな味わいのお茶がほしいんです」とリクエストして、農家さんの状況も伺って、お互いの意見や状況をすり合わせていくのは大事なプロセスです。そうすることで信頼関係ができていきます。

シングルオリジンの場合は、「残念ながら今年はこの品種は製品が出せそうにありません」と農家さんの方から申し出ることもあるのだそうです。

 

小山さん:品質にこだわりのある農家さんだからこそ、納得できるものができなければ市場には出さないんですよね。こちらとしては、「どうしよう、お店で出せるお茶が一種類減っちゃった!」と思ったりもしますが(笑)。

 

反対に、「前回と香りが変わったけど、今回の香りもお客さんの評判がいいんですよ」ということもあるそう。そういった反響を農家さんにフィードバックしていくことも、小山さんたちは大切にしています。

 

 

お茶に関わる人の、新しい流れをつくりたい

今回のインタビューを通して、農家さんのことをお客様に伝え、お客様の声を農家さんに伝える……抽出舎のお二人が果たしている役割のユニークさに気付かされました。

 

藤岡さん:生産者へのフィードバックは日本ではまだ一般的ではありませんが、実際にお客様の声を農家さんに伝えると、喜ばれるんですよね。

 

小山さん:生産者さんって、消費者とのつながりが見えにくいんです。特にお茶はSaténのようなお店で提供されることがほぼないので。「自分たちの製品がお店で一杯ずつ丁寧に淹れられ、提供されていることが嬉しい」と言ってもらえることも多い。それはぼくたちにとっても嬉しいことです。

 

今、日本各地のお茶の生産地では、お茶を通じて地域全体を盛り上げよう、という機運が高まっているそうです。そんな中でのお二人の今後の展望を伺いました。

 

小山さん:お茶摘みツアーを組んだり、お茶農家さんで働きたい人を紹介するなど、東京でお茶を販売するだけでなく、生産地への人の流れもつくってみたいですね。

 

藤岡さん:お茶の楽しみ方の幅ももっと広げていきたいですね。淹れ方によって味が変わるということが、一般には浸透していません。バリスタや飲食業の人たちにもお茶を扱うようになってほしいし、そのための情報提供をやっていきたいです。

 

抽出舎を媒介として、今後もお茶をめぐる様々な動きが生まれそうです。

 

 

– Information –

株式会社抽出舎

東京都杉並区善福寺3-16-13

https://saten.jp/profile

 

Satén japanese tea

東京都杉並区松庵3-25-9

<火~木、土日>10:00~21:00

<金>10:00~23:00

https://saten.jp/

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

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