2021.02.16. | 

[Vol.2]地方の生産者と都会の料理人、消費者をつなぐ仕掛け人「ドットボタンカンパニー」中屋祐輔 ×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

体験を開発する会社「dot button company(ドットボタンカンパニー)」と、「Mo:take」がタッグを組んだジビエのイベントが、2020年10月に開かれました。コロナ禍で縮小や中止を余儀なくされるイベントが相次ぐ中、無事に成功させることができた背景にはどんな仕掛けがあったのか、引き続き、ドットボタンカンパニー代表の中屋祐輔(なかや・ゆうすけ)さんと、Mo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)の2人にお話をお聞きします。

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タッチポイントが複数あるから、いろいろな層に展開できる

ーー今回のイベントは、Mo:takeのフードトラック&カフェだけでなく、テイクアウト、デリバリーの3つのスタイルで異なるジビエ料理を食べられるという点が、今までにはない新しい試みだったと思います。

 

中屋さん:当初はこのスタイルではなく、1つの場所に集まって行うイベントを想定していましたが、コロナ禍で難しくなったため、夏前に企画を練り直しました。

ちょうどその頃“新しい生活様式”という言葉が出始めて、デリバリー専門のゴーストキッチンが話題になったり、テイクアウトのニーズが高まったりしていました。フードトラックも、人が密集しない場所を選んで対策をしっかりやれば可能だと判断したので、3つを組み合わせたらどうだろうと考えました。

テイクアウトだけ、デリバリーだけ、とやっているところはあるけれど、3つすべての形でやっているところはあまり聞きません。だからこそ、3つのスタイルで展開すれば食の楽しみ方の可能性の広がりを提案できるし、コロナ禍のそれぞれの生活スタイルに合わせて、楽しんで食べてもらえると考えました。

 

坂本:今回僕たちは、東京の中でも郊外の府中市にフードトラックを出させてもらったんですけど、府中は人が密集する地域ではないから、という理由だけでなく、テイクアウトやデリバリーではそんなに簡単にジビエ料理を食べられる環境ではないから、という理由がありました。

中屋さんが言ったように、どの形態で消費者に届けるかによって利用者も違うと思うんです。タッチポイントが複数あるからこそ、よりいろいろな層に展開できるという点で、この企画に新しい可能性があり、すごく面白いなと感じました。

 

中屋さん:最初の接点がフードトラックだったとしても、テイクアウトやデリバリーでも食べられるなら今度はそっちでも利用してみようか、と思った人もいたはずです。一つにタッチすることでそこからさらに広がる、という点で可能性が大きいですよね。

 

坂本:僕らがこれまでやってきたポップアップストアだと、そのお店の前を通りかからないと買ってもらえなかったけれど、今回のイベントでいろいろなパターンで展開することの面白さを感じました。これからの新しい形になっていくのかなと思いますね。

独特の匂いを完全に消すのではなく、美味しさに変える

ーー今回、Mo:takeがフードトラックとカフェ「FLAT STAND」(東京都府中市)で出したのは「鹿肉のタコライス」でした。どんなメニューにするかは、完全にMo:takeにお任せでしたか。

 

中屋さん:エリアや利用者によって求めるテイストが違うのでそれをベースに考えましょう、という前提はありましたが、Mo:takeさんもほかの会社も、今まで一緒に仕事をしてきて「間違いないものを出す」という信頼関係があったので、開発者にお任せしました。

 

坂本:僕たちが重視したのは、フードトラックっぽい料理であることと、オペレーションです。フードトラックって厨房がついたトラックなんですけど、とても簡易なものなので、効率よく届けるためにはオペレーションが大切なんです。

 

ーータコライスというアイデアは、すぐに浮かびましたか?

 

坂本:結構パッと浮かびました。というのが、タコライスはフードトラックとして出しているところは結構たくさんあるんですけど、ジビエ肉でやっているところはそんなにないんです。

 

中屋さん:ジビエ肉で作るのは難しいですからね。

 

坂本:ジビエ肉の特徴は肉々しさ。となると、やっぱり素材の良さが大切です。ですので、まずは信頼しているジビエ屋さんから仕入れました。素材へのこだわりですね。

一方で、ジビエ肉の特徴をどう生かして美味しく感じていただくようにするか、というところにこだわり、今回は独自に配合したスパイスと合わせてみました。もう一つのこだわりとしては、肉々しい感じだからこそ、普通のタコライスで添えられているレタスに代わって、タマネギとクレソンを添えたことです。

来てくれた人たちの中には、ジビエ肉に抵抗があってこれまで食べたことがなかった人たちもいたんですけど、「こんなに美味しいと思わなかった」という言葉をいただけたので、すごく嬉しかったですね。

今回の仕掛けを、さまざまな地域と都会のマッチングに生かしたい

ーーコロナ禍でも3つのスタイルでの食の展開とオンラインのトークショーを無事に開催することができ、イベントは成功でしたね。

 

中屋さん:今回は新しい試みだったので、まずは確実に実行して、トラブルなくやるということが大前提でした。その点、このスタイルで実現できた、という結果を得ることができたのが何よりの成果ですね。

とはいえ、これだけ情報があふれている世の中では、情報をキャッチアップしてもらうこと自体がすごく難しくなっていると思うんです。多くの人に情報を届けるという意味では今後、一定のファンを持っている方や著名人に協力してもらいながら、これまでジビエに関心がなかった人たちをさらに巻き込んでいけたらと思っています。

 

ーー新たなイベントの形のベースはできたので、ここからさらに工夫を重ねていくということですね。

 

中屋さん:はい。それと同時に、今回のイベントの座組みを獣害問題、ジビエだけのものに終わらせず、他の地域の食材などにも生かしていきたいと考えています。タイミングとして今回は獣害問題、ジビエのイベントになりましたが、実はこの座組みはジビエだけに絞って考えたものではないんです。

都心部だと食の中心は飲食店になりますが、全国の地域では飲食店よりも農業、水産業、林業といった一次産業が食の中心、というところが多くあります。東京から遠い地域でトマトを作っています、すごい米を作っています、という人たちと、坂本さんのような料理人とをマッチングしていく仕掛けとして、今回の座組みをさまざまな地域や食材に生かしていきたいと思っています。

 

次回は2/23(火)に公開予定です。まだまだコロナ禍が続く中で、何を大切にしながら事業を展開していくのか、Mo:takeとの新たなコラボレーションの可能性にも触れながら話を聞いていきます。(つづく)

 

– Information –
dot button company(ドットボタンカンパニー)
https://dotbuttoncompany.com

平地 紘子

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身