はじめまして。産後ドゥーラの有福香織(ありふく・かおり)です。産後ドゥーラとして活動をはじめて8年。たくさんの家庭を支援してきました。命の始まりに伴走するドゥーラ活動の中で、食事づくりは特に大切にしていることのひとつです。これまでの活動の中で感じたことを、みなさんにおすそ分けできたらと思い、Mo:take MAGAZINEでコラムを連載させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
お腹にいたときは生まれてくるのが楽しみで仕方がなかった赤ちゃん。なのに生まれてみると、昼夜休みなしの授乳とオムツ替え、沐浴、着替え、抱っこ・・気付くと今日一日誰とも話していない、鏡も見ていない。それなのに部屋は山積みの洗濯物と洗い物があふれていて床は埃だらけ。ご飯はどうしよう、このままじゃ何も食べられない。妊娠中はあんなに幸せな気持ちでいっぱいだったのに、泣き止まない赤ちゃんを一日中抱っこしていたら涙が出てきた。なんでこの子は泣き止まないんだろう。何が気に入らないんだろう。この状況が明日も明後日もずっと続くのかな。
これは一人目を出産したときの私の状態ですが、産後のお母さんは急激なホルモンの変化によって気持ちが不安定になります。同じように感じる方も多いのではないでしょうか。
その後、二人目の産後にも同じような辛さを体験しました。私がドゥーラになったのは、ベビーシッターでも家事代行でもなくお母さんのサポートをするドゥーラという存在がいれば、自分の産後がもっと幸せなものだったのではないかと思ったからです。
お母さんが赤ちゃんに愛情を注げるように、ドゥーラはお母さんに愛情を注ぎます。お母さんの気持ちに寄り添ってご希望を伺い、その時にしてほしいことをサポートします。内容は掃除、洗濯、沐浴、検診の付き添い、赤ちゃんや上の子のお世話、育児相談などいろいろありますが、その中でも一番ご希望が多いのがお料理です。
多くのお母さんは、家族に手づくりの料理を食べさせたいと思っています。また産後自由に外出できない中、温かい食事をとることでお母さん自身も乾いた心が満たされることもあります。自分が料理したわけではないけど、顔の見える人が自分の家族のためだけにつくったお料理は、出来合いのお惣菜や冷凍食品にはない温かさと愛情に溢れていると思います。
ほとんどのサポート先では、お料理しながらお母さんとお話しています。またお料理の途中で上のお子様と遊んだり、赤ちゃんを抱っこしたりすることも日常です。お母さんとの話題は様々で、ご近所のおすすめのお店から両親やご家族のこと、お仕事のこと、子育てに関することなど、その時の流れでいろんなことをお話します。このお話する時間がとても楽しいんです。そしてお話ししている中から前回のサポートでお作りしたお料理の感想を聞けたり、今困っていることや、ご家族の状況も伝わってきます。そして、その内容を今後のサポートに生かしていきます。
お料理するうえで気をつけていることは『愛情と優しさが伝わる料理』です。
上のお子様がいらっしゃれば食材の切り方を変えたり、酸味を弱めにしたり、パパがご自宅で召し上がる機会が多い時はお酒のアテになるものも作ったり。何となくみんな元気がないなと感じたら唐揚げにしたり。もちろん離乳食も作ります。お母さんには離乳食作りに疲れてしまうより、赤ちゃんに離乳食を食べさせるという、今しかできないことを楽しんでほしいと思うからです。最低でも3日分のお料理をつくるので、当日、翌日、翌々日を見越してメニューを考えます。美味しくないと愛情も優しさも伝わりませんから(笑)
ある日のドゥーラごはんからひとつご紹介しますね。写真はトマトを梅干しと出汁でマリネしたものです。お子様が大好きでいつもたくさんお作りします。揚げたごぼうを甘辛く味付けしたのもお子様の好物です。ラタトゥユはオクラを入れてとろみをつけ食べやすくしています。ほうれん草やブロッコリーは下茹でしただけ。その日の気分でママが自由に味付けされるようです。ビニール袋のものはお肉に下味をつけたもの。お肉にしっかり味が染みこんでいるので、焼くだけで温かく美味しいお料理が作れます。調理技術も大切ですが、それぞれのご家庭や時々の都合に合わせることが、産後ドゥーラのつくるごはんにとって大切なことではないかと思っています。
次回は、同じく産後ドゥーラとして活動する、ひらつかけいこさんのお話です。一口に産後ドゥーラと言っても、活動の仕方や大切にしていることは、少しずつ違っています(もちろん、お母さんへの愛情は、どのドゥーラも最も大切にしていることですが)。ひらつかさんのお話を、私も楽しみにしています。
– Information –
doula有福香織
https://doula1arifuku.amebaownd.com/