SERIES
Food Future Session
2021.12.09. | 

[Vol.2]飲食の固定観念を越境し、見たことのない景色が見たい【藤岡響 × Mo:take】

「Food Future session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。
今回は、フリーランスのバリスタ、カフェプロデューサーとして活躍している藤岡響さんとの対談です。

藤岡さんにとっても、Mo:takeの小野正視と坂本英文にとっても、ドリンク、そして食は仕事でもあり、生きていくうえでの毎日の営み。日々、食と向き合いながら、食についてどんな未来予想図を描いているのか、食に関するテーマで自由に語りあってもらう座談会を通して、その地図をちらりとのぞかせていただきました。

今回の座談会には、事前に複数のトークテーマをおみくじ形式で用意。3人それぞれに1枚ずつ選んでもらい、選んだテーマについて、3人で話していただきました。

 

今回3人が選んだテーマはこちら
ー各自のスキル×食で広がる可能性/藤岡さん
ー食に向き合う時間の価値最大化/坂本
ー料理×○○=地域コミュニティーの活性/小野

固定観念を超えて自由に動く時、ゴールをどこに設定するか

小野:食やドリンクを媒介に何かをする時、飲食店を経営する、カフェを開く、という場合はゴールが明確です。そこから、自由度を高めて食やドリンクを媒介に何をやってもいいとなると、目的やゴールを設定しづらい面はありませんか?

 

坂本:僕の場合は自分がしたいことをすることを目指しています。自分がしたいことをすることで、自分のスキルを最大限活用し、可能性を広げることができると思うんです。藤岡さんもそういう感覚ありませんか?

 

藤岡さん:すごく共感します。僕には、分野を広げたいという目標があります。例えば“コーヒーはご飯と合わない”、という固定観念にチャレンジしようと思っています。「それは難しいんじゃない?」と思いましたか? でも、国によっては、米と牛乳で作ったデザートもありますよね。スイーツとしてのお米と考えたら、コーヒーと合わせやすいと思うんです。

 

小野:確かに! 世界を見渡すと、ご飯とコーヒーの組み合わせはありえますね。

 

藤岡さん:日本の中で「無理だ」と思われていることって、とても視野が狭いと思うんですよね。同じ食材でも、海外では全然違う使い方をされている場面を見るとその固定観念を超えていきたい、と強く思います。

 

イタリア料理の定義を考える

坂本:固定観念といえば、僕は料理人としてイタリアンがベースなので、よく「この食材をイタリアンに使っても大丈夫ですか?」と聞かれます。でもその度に僕は「何を使ってもいいじゃん」って言いたくなります。

だって食材にこだわっていたら、イタリアンはイタリアでしか発達できないですよね。そうではなく、さまざまな食材を試して「どう加工したら美味しいイタリアンになる?」「味噌で風味づけするのもありだよね!」というように固定観念を取り払ってチャレンジしていかないと何も進化しないと思っています。

その意味では、コロナでいろいろなことが変わりはじめた今だからこそ、柔軟になれる部分があるのかなと思います。

 

藤岡さん:固定観念が邪魔する部分はありますね。特にお茶のように伝統がある分野では、「こうあるべき」が強いと感じます。

 

小野:伝統はもちろんいいものだけど、伝統がないものだっていいと思うんです。進化していくために必要なのは、多様性ですね。

 

「北風と太陽」の「太陽」のように

小野:僕は固定観念を否定するどころかリスペクトしてこそ、固定観念を越えて越境できるのでは、と思っています。

「今からの時代はそれだとどうにもならないんだよ」と過去を否定するのではなく「そのスキルってすごいよね。そのスキルを新たな場で生かせば、あなたの価値をもっと高められるかもしれないよ。だから、越境しない? その仕組みを一緒に考えようよ」と伝えていきたいんですよね。

 

藤岡さん:「北風と太陽」の、太陽みたいですね。

 

小野さん:もちろん、責任感が強い人ほど越境することは難しくもあります。でも、藤岡さんも坂本さんも、「領域を越えたい」という欲求を持ちながらも、同時にこれまでいたバリスタやイタリアン業界のことも愛しているじゃないですか。僕はそこが好きですね。

 

藤岡さん:越境する時は、固定概念をひしと守ろうとするわけでも、果たすべき責任を放棄するわけでもなく、どちらにも偏らず進めていく力が必要ですね。

 

小野:自分が認められていると感じている人は大きな壁を越えられるけど、「今の君では越えられないよ」と言われている人には壁は越えられない。まずはその人のスキルをリスペクトすることからはじめて、やがて壁を一緒に越えたい、と僕は思っています。

 

坂本:同感です。僕もさまざまなフードプロデュース案件のディレクションをする中で、料理人のチームメンバーがいかに自由に動くことができて、いかに最大のパフォーマンスができるかを考えています。

 

12/14(火)公開予定の次回は、「食に向き合う時間の価値最大化」というテーマを、“瞬間最大風速”“打席”というキーワードと共にに掘り下げていきます。どうぞお楽しみに!(つづく)

– Information –

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ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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