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Food Experience Story
2024.07.09. | 

問題の本質をつかみ、選ばれる理由をつくる。 食のクリエイティブディレクター古庄伸吾

これだけ美味しいものが溢れた世界で、その商品を買わなければいけない理由はなんだろう。この問いの理由を企画力とブランディングで具現化をして、世の中に届けているのが熊本に本社をおく食のブランディングカンパニーPREO Inc.(以下、プレオ)。クラファンの「Makuake」公式サポーターとあって、単価が低く目標金額を達成するのが難しいと言われる「食」のプロジェクトで注目を集めてはプロジェクトを成功に導いています。そんなプレオの代表を務めるのが食のクリエイティブディレクター・古庄伸吾さんです。今回はこれまで数々のクライアントの想いを届けて、世の中を魅了してきた古庄さんへインタビュー。デザインの領域を超えて、企画、ブランディングなど全体のプロデュースをする古庄さんは、一体どんな想いをもって仕事に取り組むのか、その素顔に迫ります。

2020年に「食」専門のブランディング会社を設立。
商品の企画から全体のプロデュースまで。

「明日から和歌山なんです」と翌日出張を控える古庄さんにお話を伺ったのは6月末のこと。既に始まっているプロジェクトもあれば、新たなプロジェクトもはじまったりと超多忙を極める日常の中で、Mo:take MAGAZINEの取材も快く受けてくれました。

 

−−本日はお忙しい中、ありがとうございます!食のクリエイティブディレクター古庄さんが、どんな想いと姿勢で仕事に取り組んでいるのかお話を伺うのを楽しみにしていました。古庄さんが得意とされる企画やブランディングは、悩める人たちも多いと思いますので、そんな方々のヒントになるようなこともお届けできればと考えてまして、、これぞ古庄伸吾の仕事の流儀!というイメージで色々とお話を伺いたいと思いますのでよろしくお願いします!(笑)

古庄さん:なるほど、わかりました(笑)今日はよろしくお願いします。

 

−−早速なんですが、まずは古庄さんを知るうえで、そのルーツをたどってみたいなと思っています。ちょっとクールな感じにも見える古庄さんの幼少期、古庄少年は一体どんな感じだったんですか?その過ごし方や食に関する何かこだわりというのはありましたか?

古庄さん:そうですね、小学校のころから結構「食へのこだわりは強かったですよ。小学3年生か4年生ぐらいのときに、ありったけの小遣いを握りしめて、今でも好きな果物の梨を両手いっぱいに買って食べたりとか(笑)あとは、もう和菓子がとにかく好きで、中でも団子が好きだったんですよ、もう本当によく通って食べていました(笑)まぁそんな小学生でしたね(照)

 

−−ありったけのお小遣いを握りしめて梨を買ったり、和菓子屋に通う小学生って、渋いですねぇ!そんな少年時代を過ごしてから、デザイナーとしてお仕事をされるまでについても教えていただけますか?

古庄さん:食に興味があったので、もう高校生のときからずっと飲食店でバイトをして、一方で絵を書いたりするのも好きで、どっちつかずでずっといたんです。それから21歳のときに、自分でカフェを出して5年ぐらい営業をしつつ、デザインの方も個人的に仕事を受けたりしていて、31歳まで飲食とデザインとずっと並行してやってたんですが、その頃にデザインにしぼることにして独立して、今に至るという感じですね。

 

−−これまでいろんなデザインやブランディングのお仕事をされてきて、2020年から「食」専門になりましたよね。まず「食」専門に振り切ろうって思ったきっかけはあったんですか?

古庄さん:相当、いろんなジャンルのブランディングのお手伝いとかをやらせていただいて、自分が一番力を発揮できるなって実感してたのがやっぱり食の分野だったんです。もともと食が好きで、食の世界に身を置いてたっていうのもありますし、事業転換をした当時は、ちょうど食の業界がコロナで大打撃を受けてた時期だったんです。それを目の当たりにして何か貢献できたらいいなっていう思いもありましたよね。

 

−−コロナっていうのもあったんですね、その時期は本当に飲食店の皆さん苦しまれてましたよね。

古庄さん:そうですね、結構ひどかったですね。現金が入ってこないっていう飲食店さんが多くて皆さんかなり苦しんでいました。その後で補助金とかいろいろ出てきたりはしたんですけど、当時は何にもなかった状態だったので、なんとか力になれないかってすごく色々考えましたよね。

 

−−もう一つお聞きしたいのが、それまでデザインをずっとやってきた中で、ブランディングが重要!と思うようになったきっかけみたいなものはあったんでしょうか?

古庄さん:それでいうと、デザインでやれることの限界を感じたっていうのかなぁ、お客さんが求めていることがデザインだけでは解決できないことが多いって感じることが多くなったのがきっかけかもしれませんね。それまでデザインのお仕事は、ロゴとかチラシとかのデザインをやってきたんですけど、デザインってアウトプットでしかないと思っていて。そのアウトプットされるデザインは、ブランディングでいうと、コンセプトをアウトプットしているだけというか、結局そのコンセプトが大事になるんです。そこ(ブランディング)がきちんと作られてないと、デザインも中途半端になるっていう経験もしましたし。そんな経験をしていくうちに、自分がちゃんとブランディングを作ってしまえば、デザインもズレることなく、もっとお客様の力になれるよなぁっていう流れで、ブランディングの必要性を感じて勉強していったんですよね。

 

−−なるほど、必要だと思えば、自ら学んでいくっていうスタンスも素敵ですね。

古庄さん:ありがとうございます(照)あとは、やっぱりデザインだけというよりは、商品の企画や全体のプロデュースをしたかったっていう想いも強くありましたね。

 

価値を正しく伝えるためのブランディングと
世の中をちょっとでもよくするための企画。

最近では新しいお土産をつくるプロジェクトで、宮崎県西都市の甘酒と野菜でつくった小麦粉・砂糖不使用のスープブランド「コノハナイロ」のMakuakeプロジェクトでも目標達成。かと思えば、新しいプロジェクトと、新規の相談もきていたりと、各地で引っ張りだこのプレオ。

−−ここからブランディングや企画について聞いていきたいと思います。プレオで総合的に企画からブランディングまでされていますが、はじめから今のスタイルでやっていた訳ではないんですよね?

古庄さん:最初はデザインで出来るところの仕事からはじめて、お客様の課題解決にブランディングの必要性を感じてから学んでいきました。お客様と一緒にどうしたら価値になるのか、どうしたら価値を届けることができるかっていうのを考えていく中で、徐々に自分のできることを増やして、お客様と一緒に今のスタイルに育てていったっていう感じですね。

先ほど少しお話ししたように、デザインをやっていたときは、デザインだけではなにも解決しないなって思っていたので、そこの課題を解決するために、まずブランディングに必要性を感じて学び、でもブランディングのやり方を学んでも価値を正しく届けるためには“まだ足りない”ってなったんですよ。そこから、リサーチの方法とか、マーケティングもしっかりと学んでいくっていうように、課題を解決するための方法を追求していくと、やったほうがいいこと、できた方がいいことが増えていく。その結果、お客様の課題解決のためには、全体見なきゃダメなんだ!ってなってやれる事が増えていったんですよね。

 

−−お客さんがその原動力になっているとはいえ、追求し続けるところと、その学ぶ意欲がすごいっす!!(驚)

古庄さん:いや、なんか悔しいじゃないですか!できないっていうのが(笑)私たちの仕事は支援業、簡単にいうとお客様の売上げを上げるっていうのが目標でもあるんですよね。だから自分としては、そこの目標にちゃんと直結させたいっていう思いが強くて、それができてないって思っちゃうとすごくもどかしかったんですよね。

 

−−そんな熱い想いでお客さんと向き合ってらっしゃるわけですが古庄さんにとっての、ブランディングって簡単にいうとどういうことでしょうか?

古庄さん:もうこれは“価値を正しく伝える”っていうことです。うちでは口を酸っぱくして言っているほどこれは大事なことだと思ってます。ブランディングは価値を高めるとか、高付加価値をつけるみたいな語られ方をして、時に変な伝わり方をしてしまうんですよ。でも自分にとっては、価値がないと言われるものがあれば、最初の段階から価値を高めて、それを正しく伝えるための全ての行為がブランディングかなって思うんです。お客様がその価値に気づいてない場合もあるので、その時は気づいてもらえるようなアプローチもして、ちゃんと価値に気づいて、伝えて、それをお互いに認識してプロジェクトを進めていく。そうしないと、デザインや見せ方ばかりを重視していたり、哲学ばっかりを追求して、どこかが抜け落ちてしまうから。

 

−−やっぱりお客さん自身が価値に気づかないこともある、そこを気づかせるっていうこともひとつのポイントなわけですね。ここでもう一つ、企画についてはいかがですか?また企画を考える時に古庄さんの習慣のようなものがあったらぜひ教えてください!

古庄さん:企画は、世の中をちょっとでも良くするというのが大前提にありますね。習慣という意味では、リサーチのやり方ですかね。自分の場合は、その対象者にまずなってみる。なってみないとわかんないよなぁっていう感覚があるので、例えば企画として地域に根差した何かを開発するみたいな話の時は、その場所に1週間から長い時は3週間とか、一定期間住んでみて、生活するんです。ここの人たちが、どういう生活をしていて、どういう見方をしているのか、その地域で買い物してみたりとか、日常を過ごしてみると見えてきたりするんです。

 

−−その現場を知るっていう感じすごく共感できます、一次情報って本当に大切ですよね。古庄さんは、ずっとそのスタンスなんですか?

古庄さん:そうですね、ずっとやってますね。デザイン一つするにしても現場みないとわかんないなっていうのが感覚としてあって、「デザインなんてすぐできるでしょ?」って思われたりすることもあるんですけど、自分の場合は、もう現場にいってその人と話して、その人の立場になってみないとわからないんですよね。人からしたら手間って思われるかもしれないんですけど。(笑)

 

−−だから寄り添った提案や企画がうまれてるんですね!

古庄さん:うーん、そうだったらいいなぁと思います。(照)

 

企画はアイデア勝負ではなく、論理的に。
“どうありたいか”のビジョンから逆算

現地へ足を運んで自分も同じ環境で生活してリサーチしたり、一緒に価値を正しく伝えるためにお客さんと一緒に成長してきたプレオ。それだけ手厚く仕事をするわけだから、当然、発想力が枯渇したり、スランプ的なことがあるんだろうな。そう思いながら、古庄さんにたずねると「あんまりスランプ的なことはないですね」という意外な返答が。その根底には、物事の背景をベースに、アイデアや発想力だけでなく、論理的かつ緻密に計算されたうえでプロジェクトを進めるという姿勢にありました。「どうしたら古庄さんみたいにできるんですか?苦手な人ができそうな古庄流のやり方を知りたいです!」恥をしのんでそのまま、古庄さんに聞いてみると、

 

古庄さん:企画はロジカルに考えると結果にも結びつきやすいので、決してアイデア勝負ではないんです。まずは、最終的にどうありたいかというビジョンから考えます。次に、そこに行き着くためには、生活者の方々にどういう変化が起きれば、そのビジョンを達成できているのかを考える。じゃあ、その変化をもたらすための商品、サービスってなんだろう、そんな風に一つ一つをクリアにしながら組み立てていくと、苦しいっていうのはあんまりなくなるんじゃないかなぁとは思います。アイデアは点でしかなくて、それを繋げていって線にするっていう感じですね。そんな風に自分はやっているので、アイデアが出なくて、苦しいっていうのがなくて・・・なんか、すみません、あんまり面白くない答えで(苦笑)

 

−−いやいや!(笑)論理的で、古庄伸吾という人がどんな人かわかる良いお話ですよ(笑)なるほどなぁ、こういう取り組み方が企画に悩める人たちのヒントになりそう。なんかすごい発想とか想像力が必要!みたいに思いがちで、結構苦労する人が多いから、今のお話ってすごく参考になると思います!

 

そして、九州から全国へ。

−−そんな論理的な古庄さんがお仕事をしていて、その予想をちょっと超えて“おぉ!楽しい!”ってなるのはどんな時ですか?

古庄さん:これは2つありますね。1つ目はやっぱり結果がちゃんと出た時です。例えば、Makuakeでいうところの目標を達成した時のように、わかりやすい結果がでたらやっぱり嬉しいですよね!
もう一つが、企画の部分にあって。全体的なビジョンを考えたり、一方で目の前の商品自体の企画を考えたりとやることがあるんですが、それぞれの企画として綺麗にクリアしたいことっていうのがいくつか出てくるんですよ。それがこう最終的にガチっと全部綺麗にハマるっていう瞬間がありまして、それが起こった時はもうたまらん!ってなりますね!

 

−−おぉー!それは気持ちよさそう!集めたパズルのピースを組み立てていったらピッタリハマるっていう感覚ですね!(笑)色々とうかがってきましたが、今日は幼少期のお話からお仕事への取り組む姿勢、現在に至るまで色々とお話しいただき、ありがとうございました。最後に、古庄さんが見据えるプレオの未来の姿を教えてください。

古庄さん:ありがとうございます。将来的なお話だと先日リリースした、GOTORCH(ゴトーチ)を今後のメイン事業にして、ゆくゆくスピンアウトをして法人化させようと思っています。まずサービスを体系化させるまでは九州からはじめて、そこからメンバーを増やして、エリアも広げていって、最終的に全国をカバーすることを目指しているので今後とも宜しくお願いします(微笑)

 

−−ご当地ブランドの開発プロジェクトですよね?先日のリリースも拝見しました、楽しみですね!このプロジェクトが動いてく際には、またお話を聞かせてください!となると・・・体験価値の設計サポート担当として事業連携をしているYuinchuの出番、これまた多くなりそうですね!(笑)その時をまた楽しみにしています!

 

– Information –
PREO Inc.
GOTORCH(ゴトーチ)
X:古庄伸吾/食のクリエイティブディレクター

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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