減少する練り物の需要。コロナによる打撃。
でもお客さんを喜ばせたい!
明治36年11月「博水」は佐賀で創業されましたが戦争で全てを失うことに。その後、3代目となる江越さんの祖父母が福岡で創業して今の「博水」が誕生します。もともと家業に関わるつもりはなかったという江越さんは大学卒業後、インターンや海外留学の経験を経て「博水」に就職することに。きっかけは代表を務める父親の幼馴染で、会社を支えてきたベテランの社員さんの退職を機に父親を支えようと思ったこと、そして福岡の地の創業者でもあるお祖母様が亡くなったこと。創業者のお祖父様は、江越さんが小学生の頃に他界、そして自分が大人になりお祖母様も亡くなったことで、いよいよ創業者がいなくなってしまったことを意識した江越さんは、“祖父母がいなければ今の自分はいなかった、そう感じた時にいずれ継いでいきたいって強く思ったんです”と語ります。
“日本人が魚を食べなくなった。”そんなニュースを見かけることも少なくない昨今では、日本人の食事の欧米化だけでなく、魚の減少により水揚げ量も減っているという点もあるようで、とにかく日本人の魚介類の消費量は右肩下がりに。そして練り物の業界も例外なく、数字にも現れるほど食べる人が減っていることを教えてくれた江越さんは、コロナ禍で大小問わず廃業に追い込まれる同業者をニュースで知るたびに、業界が厳しくなっていることも肌で感じ、博水も飲食店への卸し先がコロナで営業ができないとあって、かなりの影響をうけたと話してくれました。
それでも毎週土曜、工場直売でその日にできた新鮮なすり身を販売したりと、お客さんとの接点を持ち続けると、目の前のお客さんの嬉しそうな顔やリアルな声が聞こえてくる。「うちの商品ってこんなに喜ばれるんだ」そう感じた江越さんに、もっとお客さんを喜ばせたいという強い想いが芽生え、商品開発を進めている中で、古庄さん、丸山さんを巻き込んでのBOKOMENのプロジェクトがはじまっていきます。
「すり身で麺をつくってみたらどうですか?」
主食になる魚食で練り物のポジションを変える。
−−Makuakeでの達成おめでとうございます!やっとBOKOMNEN!が東京で味わえるわけですけど、ここからのインタビューでは、江越さんを中心に、どんな風にプロジェクトがはじまったのかというところから、商品の企画・開発にたずさわった古庄さん、丸山さんにもお話しを伺いながらすすめていきたいと思います!宜しくお願いします!まずこのプロジェクトは、江越さんから古庄さんにラブコールを送るところから始まったそうですね!(笑)
江越さん:はい!(笑)古庄さんのことは共通の知人の紹介でもあったり、Twitter(X)でもご活躍はよく知っていたので、今回の新しい構想の相談をしたくて古庄さんにDMを送ったんです。結構な熱量でメールを書いたのを覚えていますね。
古庄さん:もう江越さんのメールの内容から、挑戦したい!っていう想いも伝わってきましたし、構想もすごく面白そうだなって感じていたので「これはすぐに会いに行こう!」と思って、もう2、3日後には熊本から福岡までいきました。
−−おぉ!現地にいくことを大事にしている古庄さんならではのスピード感、さすがですね!そこからどんな風にカタチになっていたんでしょうか?
古庄さん:最初はヒアリングのみで、どんな期待をされているのかっていうところを中心にお話しをすすめていきましたが、もうその時から結構熱いトークみたいにってました(微笑)
江越さん:もうとにかく信条とか自分の考えを一方的に話しちゃったんです。これまで考えはあっても、自分1人でやるのって難しいなって思ったり、商品開発にしろ、ブランディングやら販促やら、やっぱりそれをやるってなると、どうしたらいいんだろう、難しいなって感じてはいて、それをちゃんと整理してもらって(笑)本当に助かりました!
−−そっか、想いはあってもどう料理していいかわからない状況だったんですね!古庄さんっていうすごく強力な人に出会えて、そこからBOKOMNEN!がスタートしていくわけですね。
江越さん:はい、もうほぼほぼお任せで、コンセプトから企画までいただいて、それを社内検討しながら、古庄さんの企画案がいいよね!ってスタートしました。
−−今回はすり身を麺にするという斬新なアイデアですが、これは最初から決めていたことだったんでしょうか?
江越さん:僕の中では練り物を使って福岡っぽい、ご飯のおかずみたいなものを作れればって思っていました。練り物っておつまみとか、かなりの脇役じゃ無いですか?お肉やお魚は、それでご飯をたべれるけど、練り物ってそうはならないんですよね。だからおかずになるポジションを取りにいけば、もっと食べられるなって思ってたんです。
古庄さん:・・・。って言うのが「博水」さんのオファーだったんですけど、それを自分が全無視して企画をだしたっていうね。(笑)
−−えっ!!(笑)まさかの全無視ですか!!それはやっぱり、古庄さんの中のロジックでそうじゃ無くてこうした方がいいっていうものがあったんですね!?
古庄さん:やっぱり元々の大きなテーマが魚食を増やすっていうところがあったので、練りものそのものとしての形が何かに変わったとしても、なかなか魚食が増えるっていうところまで行き着かないなと思ったんですよね。それを副菜とか、主菜じゃなくて、“主食にしてしまえばいい”っていう考えから、麺がいいって思いついたのが理由の一つ。あとは商品そのもののインパクトや、ブランドとして広げていくためにはやっぱり企画としては、少し変わったところから攻めたいなっていうのがあったんですよね。そこで、すり身で麺を作ったらどうですか?っていう提案にしたという感じですね。
江越さん:いや、でも最初に麺ってきいた時は、さすがにちょっと厳しいと思いました。(笑)他の練り物屋さんが作ってたり、うちが卸している飲食店さんとかお寿司屋さんにすり身で作った麺を提案したら面白いかなと思っていた時期もあったので、練り物で麺をやってみたいなとなんとなく頭にはあったんですよ。でも、どうやって作ったらいいかわからないし、多分作るの大変だろうし、麺かぁ大丈夫かなみたいな考えが先行して、正直結構ビビっていましたね。(笑)
とんこつ・あご出し・めんたいこ。麺からも出汁がとれるBOKOMNEN!には博多を感じるスープで。
古庄さんの大胆なアイデアから生まれたBOKOMNEN!は、魚のすり身で作った麺。それだけでもインパクトがある商品ですが、たんぱく質も豊富で低脂質、だけど食べ応えのある麺なんです。この麺の開発にもかなりの苦労があったと江越さん。麺の食感、硬さや魚臭さを除くためにかなりの試行錯誤を重ねてようやく完成します。商品開発でスープを担当したフードクリエイターの丸山さんは、麺に合うスープに博多の味をチョイス。レンジでチンして食べられる具材付き・スープ一体型の冷凍魚麺の誕生に、企画をした古庄さんは初めてBOKOMNEN!を口にした時「うまっ!これで成功や!」と思わず舌を巻いたほどの出来栄えに。
−−丸山さんは今回スープの開発を担当されましたが、この企画や練り物麺の印象についてはいかがでしたか?
丸山さん:お話聞いたときはすごい面白いなと思って、もうぜひやらせてくださいって、二つ返事でお返事したんですけど、最初のサンプルが、めちゃめちゃまずかったんですよぉ!(笑)。配送で日が経ってる?とかいろんな状況があると思うんですけど「私、これ、どうにかするのは無理ー!麺が良くなったら、いや、麺を良くしていかないとちょっと難しいです!」みたいなことを大変失礼ながらお伝えしてたんです(笑)そこから麺を改良していただいて、かなり苦労されたと思うんですけど、最終的にすごくいい麺になりましたよね。
江越さん:そうなんです、今では笑い話ですが(笑)結構試作をしまして、こんにゃくのもとのグルコマンナンやら色々試したり、うちの商品でも使ってるデンプンを入れて、割合も少しずつ調整してっていう風に何度も繰り返し試作をしていって、ようやく美味しい麺を完成させることが出来たんですよね。
−−麺との初対面はそんな衝撃な状況だったんですね!(笑)そこから開発はどんな風にすすんでいったんですか?
丸山さん:今回の場合は、古庄さんと一緒に博水さんに直接伺ったとき、もうその場で「この三つの味付けのアイデアどうですか?」ってお話をして、博水さんの商品に使ってる、お野菜とかキクラゲみたいな具材も転用できないかっていう話をしたりと、ほぼほぼそこで色々調整させていただいて、味付けを決めました。あとは自分で試作をしながら、ちょっとずつグラム単位で調味料の量を変えたりとか、使うもののメーカーを変えたりとか、試作を続けて完成に近づけていきました。
−−なるほどぉ!スープの開発で特に苦労した点はありますか?
丸山さん:そうですね、スープ自体は内製できるように、他の練り製品も作りながら作れるようにっていう意識が一番大きかったので、割と手に入れやすい材料の組み合わせで美味しさを追求しました。開発自体は2月から始めて、完成までは2ヶ月ぐらいの時間をかけたんですけど、一番苦労したのは、麺からでる出汁をどうやってスープと調和させていくか、これには本当に苦労しました。すり身の麺なので豚骨スープとは相性は良くて、麺とスープが合わさると勝手に魚介豚骨みたいになるんですけど、クリーム系は魚臭さが際立ってしまったりして、調和してベストなバランスにするまでが、結構苦労しましたね。
−−そっか!麺からも出汁がでるのか!なるほどなぁ、その出汁の味も計算しながら完成の味にするって至難の技ですね!そのスープ、今回は博多らしい味ということですが、ここはやっぱり地域の味を意識したということでしょうか?
丸山さん:それもありますね、でも今回はみんな知らない新しい麺だからこそ、わかりやすい味付けにするというところを意識してました。わかりにくい×わかりにくいだと、何が何やらって感じだと思ったので、割と定番で、ラーメンとしてもありそうで、みんな好きそうで、博多って言ったら思いつくようなもの。それって、とんこつ、あご出汁、明太子だよねみたいな(笑)そこは何かひねるとか、堀り出すっていうよりは、誰もが「博多」というワードから連想するものがいいかなっていう考え方で完成していきました。
東京初進出!たくさんの人に味わってほしい。
「HAKATA BOKOMEN!」が練り物の概念を変えます!
プロジェクトの始まりから開発のお話まで仕掛け人の三人にお話しを聞いてきた今回の『HAKATA BOKOMEN!』のストーリー。江越さんの想いとそれを論理的な視点とクリエイティブで伴走する古庄さん、それを味で表現する丸山さん、この三人が実現した「HAKATA BOKOMEN!」は歴史ある「博水」が踏み出した新たな一歩。この先の練り物業界や私たちの食にどんな変化や楽しみを届けてくれるのか楽しみですね。
すでに福岡のイベントなどで先駆けて食べた人たちからも好評価を得ているBOKOMNEN!は7月11日・12日にSWITCH STAND AKABANEで、7月13日・14日はOPEN NAKAMEGUROのPOPUPで試食ができちゃいます。そんな東京初進出となるBOKOMEN!を手掛けた3人にそれぞれの想いやメッセージをいただきました。
古庄さん:Makuakeが終わったら飲食店さんにも卸していきたいなと思っていて、そこからそれぞれの飲食店さんが自由にメニューを考えて展開してもらうという感じで、このBOKOMEN!自体が広がっていったらいいなと思っています。そんな風に今後に繋げていきたいですね。
丸山さん:私は沢山の人に色んな楽しみ方をしてもらいたいなって思います!夜にラーメン食べるのはちょっとなぁって思ってたところの解決策になるというか(笑)味付けは割としっかりめにつけてるので満足感もありつつ、練り物の麺なのでヘルシーで罪悪感なく食べれるって、ちょっと自分に言い訳しつつ、思いっきり楽しんでもらえたらと思います。
江越さん:東京は初めてなのでちょっと怖くもあります!なんか、やっぱり新しいものに飛びつく、そのスピードが早そうだなと思うので、そこにちょっと期待しています!練り物の概念を変えます!っていう想いで挑戦しているプロジェクトなので、開催店舗でお待ちしています!
老舗の練り物屋が変わったことをしている!老舗らしからぬ!もしかするとそんな声も聞こえてくるのかもしれません。でも江越さんの周りには、強力なパートナー、この挑戦を応援してくれる人が沢山います。現段階でMakuakeが380%以上の達成をしているのもその一つの証拠。7月31日まで開催中のMakuake「HAKATA BOKOMEN!」の詳細はプロジェクトページの掲載ページでチェックしてみてくださいね!
– POPUP情報 –
開催期間: 7月11日(木)・12日(金) 「SWITCH STAND AKABANE」
開催期間:7月13日(土)・14日(日) 「OPEN NAKAMEGURO」
両店舗における提供時間は以下の通りです。
なお、お時間によって提供する商品が異なります。
・11:00~13:00 博多とんこつ
・13:30~15:30 あごだし柚子胡椒
・16:00~18:00 明太クリーム
※各種、試食なくなり次第終了
– Information –
Makuake「HAKATA BOKOMEN!」
博水
PREO Inc.
フードクリエイター・丸山千里