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Food Future Session
2023.01.10. | 

[Vol.1]ネイバーフッドデザインで地域の身近な関係性を豊かにする【HITOTOWA 荒昌史 × Yuinchu 小野】

食の未来をユニークな仕掛け人たちと語る「Food Future Session」。今回は、「人と和のために仕事をし、都市の社会環境問題を解決する」をミッションに、地域やマンションでのコミュニティづくりに取り組む HITOTOWA INC.(ヒトトワ)代表取締役の荒昌史さんとMo:takeの座談会です。Vol.1では、荒さんのバックグラウンドやHITOTOWAが目指すところについて語っていただきました。

 スクラップ&ビルドの開発から
元々あったものを継承するコミュニティ作りへ

小野:まずは荒さんのこれまでのキャリアからお聞かせください。

 

荒さん:社会貢献性の高い仕事をしたくて、就職活動は多くの起業家を輩出している企業に絞っていました。その中でリクルートコスモスという住宅デベロッパーに入社し、開発部門で開発の面白さや開発のいろはを教えてもらいました。

ただ、基本的な事業モデルは壊しては作り、作っては壊すというスクラップアンドビルドです。それを一概に否定するわけではないのですが、街を作っているのか壊しているのかわからない側面があり、開発の負の部分を変えていかないといけないと思いました。

その時に出会ったのが、コミュニティ・デベロップメントという考え方です。建物を開発するのではなく、街のコミュニティや元々あった人間関係を継承して新しいものを作り上げることができたらいいなと思い、2007年にリクルートコスモスの新規事業として始めました。

ある程度手応えがありましたし、結構自由にやらせてもらっていました。しかし、大きな会社ではやはりワンオブゼムなんです。独立していろいろな会社と組むことで、コミュニティ・デベロップメントの考え方を住宅開発に普及させていきたいなと思い、2010年に独立し、HITOTOWA INC.を立ち上げました。

 

東日本大震災で変わったコミュニティの捉え方
ネイバーフッドデザインとは?

小野:今ではコミュニティという言葉が世の中で認知を得ていると思いますが、2007年当時はどうでしたか?

 

荒さん:リクルートコスモスに入社したときに「これからはコミュニティが大事だ」と言われていたので、すでにキーワードとしてはあったと思います。ただ、楽しくワイワイする=コミュニティ、という文脈で使われることの方が多く、コミュニティとは何か、コミュニティの良さ、あるいはデメリットは、というところまでは考えられていなかったような気がします。

それが変わったのは、東日本大震災です。その翌月に山崎亮さんが『コミュニティデザイン ― 人がつながるしくみをつくる』という本を出し、業界にも普及していきました。僕たちも元々、コミュニティをデザインする、コミュニティを仕事にするという考えを持っていましたが、その流れにエンパワーメントされた部分はあったと思います。

 

小野:コミュニティという言葉にはいろんな意味がありますが、僕自身、コミュニティにはワイワイしなければいけないという概念が宿っているのでは、と捉えていた時がありました。荒さんが考えるコミュニティについて、あらためて教えてください。

 

荒さん:僕たちがやっているのは、ネイバーフッドデザインといって、15分程度の近所に住んでいる人たちの関係性を豊かにする取り組みです。コミュニティの価値という意味では、ワイワイと楽しむ、生きがいにつながる、ウェルビーイングの側面、子育ての悩みを解決できる、お年寄りや単身世帯の孤立を防ぐ、といったセーフティーネット的な面があると思っています。

また、コミュニティをデザインする側の視点としては、街の活性化や賑わいづくり、そして景観保全といった意味合いもあります。

その中でどこに重きを置いてプロジェクトに取り組むか、その街に対してどういう価値を高めていくかなどを考えながらデザインしています。

 

団地再生型のコミュニティ形成「浜甲子園団地」のプロジェクト

小野:とても興味深い活動なので、HITOTOWAとして現在どんな活動をされているのか、もう少し具体的に聞かせて下さい。

 

荒さん:デベロッパーや行政から委託を受けて集合住宅や街に入り込み、コミュニティをデザインするネイバーフッドデザインという事業がメインで、他にもソーシャルフットボール事業、HITOTOWAこども総研という事業をやっています。

ネイバーフッドデザイン事業では、例えば高齢化が進んだ団地の商店街の活性化のための場を作ったり、大規模再開発に伴って人口動態が変わる時に、元々住んでいた人と新しい人たちが自然な形で仲良くなるような場を運営したり、それをするための組織を作ったり、または組織側ができない事業を構築したりというようなことをやっています。

 

小野:これまでに印象的だったプロジェクトはありますか?

 

荒さん:兵庫県西宮市では今、浜甲子園団地という7,000〜8,000人が住む団地を、新しいマンションといくつかの戸建てに建て替えるという団地再生型のコミュニティを形成しています。そこで三つのコミュニティスペースを運営していて、一つは誰でもふらっと入れて、家族といるような過ごし方ができるHAMACO:LIVING、もう一つはHAMACO:CLASSといって習い事ができる場所です。

そして三つ目がOSAMPO BASEというコミュニティカフェです。単身世帯はご飯を自分で作らない人が多いので野菜不足になりがちですよね。そういう方向けに、野菜をしっかりと食べられる場を提供したいという思いで運営しています。ここのご飯、めちゃくちゃ美味しいです! 
経営的には大変な面もありますが、地域にとても愛されていて、毎日来るような方もいらっしゃいます。

 

次回は1/12(木)に公開予定です。ネイバーフッドデザインの具体的な事例を挙げていただきながら、プロジェクトとの向き合い方まで掘り下げてお聞きしていきます。(つづく)

 

– Information –
HITOTOWA
書籍「ネイバーフッドデザイン

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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