SERIES
Food Future Session
2023.01.19. | 

[Vol.4]ゆるやかに人をつなぐコミュニティカフェの成功事例になる【HITOTOWA 荒昌史 × Yuinchu 小野】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する ×Mo:take の座談会。今回は、「人と和のために仕事をし、都市の社会環境問題を解決する」をミッションに、地域やマンションでのコミュニティづくりに取り組む HITOTOWA INC.(ヒトトワ)代表取締役の荒昌史さんとMo:takeの座談会です。最終回となるVol.4では、コミュニティにおけるカフェという機能ついてYuinchu代表の小野と語り合います。

一人でも行ける機能としての飲食=カフェは
引き出しとして持っておきたい

小野:神奈川県住宅供給公社の賃貸マンション「フロール元住吉」のコミュニティスペースでは、Yuinchuもカフェ「となりの.」のご相談に乗っています。単に「カフェをやろう」ではなく、未来のカフェの価値を考えるようなお仕事を一緒にできているのが嬉しいです。

 

小野:HITOTOWAさんとは、自社で運営しているお店を事例化していこうというところが共通していると感じています。カフェの立ち上げや運営を、オーダーメイドではなくカスタムメイドくらいの感覚で、誰もがトライしやすい機能を最初から用意してあげて、その上でカフェをやることで何を達成するのか、何が目的なのかを見ているところも同じだと感じています。

 

荒さん:僕は「飲食は装置」という小野ちゃんの考え方がすごくいいと思っていますが、飲食のプロではない僕らにとっては正直難しいんです。街にとってカフェのようなコミュニティは価値があると分かっていても、経営的に成り立たせることに悩んでいます。

でも小野ちゃんは明るいので、小野ちゃんと話していると悩まなくていいんだなと思えてくるんですよ(笑)

 

小野:荒さんの素晴らしいところは、経営的に妥協したくない、という信念が貫かれているところです。カフェが経営的に成り立っているからこそ、コミュニティが機能するということですよね。

 

荒さん:経営者としては各事業、各プロジェクトでしっかりと黒字を出し、トータルで良いポートフォリオにすることが理想ではありますが、どうしても事業やプロジェクトごとに凹凸があります。そしてHITOTOWAが社会の中でどういうポジションにあり、クライアントを通じてどう社会に影響を与えているか、というところで判断していく必要があると思います。

現状、飲食はネイバーフッドデザインの中でも工数がかかる運営モデルになっているので、あまり増やすことはできないと思っています。でも、一人でも来られる場(装置)というものを、HITOTOWAの引き出しとして持っておきたいです。

僕たちHITOTOWAだけでやるのではなく、例えば小野ちゃんや他の飲食業の人たちと組むと、それぞれの経験やスキルがあることによっていろいろな提案ができたり、一緒に企画ができることもあると思っています。

 

カフェのスタッフが食を通して
自然な人間関係を生み出す

小野:一人でも来られる装置という言葉がありましたが、食は、ゆるやかなつながりや濃淡のあるつながりを体現しやすいですよね。1人で来て短時間で食べることもできるし、パーティーを企画すると濃い関係づくりのきっかけになる。ハレの日もケの日も生み出せるんですよね。

濃淡があるということが、僕にとってすごく重要なキーワードになっています。

 

荒さん:飲食は人間関係のきっかけになりやすいですよね。人と会いたいとき、「ご飯に行こう」と誘うことが多いのもそういうことだと思います。そして、それぞれに居心地のいい人数も違いますよね。2人なのか、3人なのか、4人なのか。

 

小野:確かに、1人の時間も過ごせるし、2人でおしゃべりもできるという選択肢がある状態を作ることは重要な気がしますね。そしてそれは、僕たちのようなカフェの運営側が役割や機能として作り出すこともできますね。いい気づきを得ました。

でもやっぱり、まずは一人で来た人が寂しそうに見えない、自然な状態を作り出すことが大事ですね。

 

荒さん:一人でお店に来た場合、まずは店員との会話がきっかけになりやすいですよね。「パクチー苦手ですよね? 変えておきましたよ」とか、「新しいメニュー、美味しいね」など、自然と言葉を交わしやすい。

他人同士のお客さんがいきなり仲良くなることはあまりないですが、スタッフとの会話からスタートして、スタッフが自然に人と人をつないだり会話をする中でだんだん仲良くなっていくことはあります。それを僕は“友人管理”と呼んでいます。食があると、最初の会話のきっかけが作りやすいですし、わかりやすいですね。

 

小野:“友人管理”という考え方、面白いです。

 

飲食を通じたコミュニティの活性化は
業界の未来を肩に乗せたチャレンジ

荒さん:僕はネイバーフッドデザインを、HITOTOWAというひとつの会社の目線を越え、業界全体の使命として勝手に背負っているくらいの気持ちでいます。その視点に立つと、この業界ではさまざまな会社やデベロッパーが飲食を通じて集合住宅のつながりを作ろうとしてきたけれど、あまりうまくいっていない歴史があるんです。大袈裟と思われるかもしれないですが、うちが失敗したら今後は誰もやらなくなるのではないかと思うんです。その中でどう発展性を見出していくか、チャレンジだと思っています。

 

小野:カフェを事業として作りたい人も、採算度外視でコミュニティづくりの装置として作りたいという人もいます。

HITOTOWAさんは、マクロの視点ではエリア活性というビジョンがあって、同時にミクロの視点でカフェの経営も成り立たせようとしているからこそ、本当にいい状況を生み出すことができるんですよね。そんな仕事に関わらせていただいて、僕の方が学んでいるのではないかと思います。

HITOTOWAさんとの仕事は、僕たちにとっても挑戦させてもらう感覚の仕事が多くて、「コーヒースタンドもレンタルスペースも機能なんだ」「場が活性化するには機能がいる、装置がいる」と宣言しつつやっている感覚がありますね。

 

荒さん:やっぱり、小野ちゃんのその明るさがいいんですよね。社員も「小野さんと会うと元気になる」って言っています。

 

小野:めちゃくちゃ嬉しいです、シンプルに。

今HITOTOWAさんからお声掛けいただきご一緒させてもらっている仕事は、HITOTOWAさんが全体をプランニングする中で、必要なパーツとして僕らが関わるという形が多いですよね。今後は、まだ全体のプランが見えていない段階、そこに何が建つかもわからないくらいのタイミングで、HITOTOWAさんが場の活性を図る装置を考える瞬間からご一緒できるといいな、と思っています。

 

荒さん:飲食がネイバーフッドデザインに加わることで、いろいろな可能性が広がると思っています。そして、それを持続可能なものに成立させていくことはチャレンジングだからこそ、Yuinchuさんとパートナーシップを築き、お互いの強みを持ちながら何かやれたらいいですね。

 

小野:はい、ぜひよろしくお願いします!

 

– Information –
HITOTOWA

書籍「ネイバーフッドデザイン

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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