希望の光だったOPEN NAKAMEGURO。「お金で救われなかったけど、心は救われた」
2019年末にスタートしたHYPHEN TOKYO。年明けには新型コロナウイルスが猛威を振るうなど、事業創世期と重なってしまいました。「コーヒースタンドを起点とした場づくり」とオフラインでの関わりをうたっているだけに、やはり大きな影響があったようです。しかし小野は、あることをきっかけに「心が救われた」と話します。
小野:実際、コロナ初期は、HYPHEN TOKYOに限らず会社全般が厳しかったですね。法人様の利用などは、とくに減りましたから。
ただ、お金の面では救われなかったけど、じつは心の面で大きく救われる部分があって。それは、HYPHEN TOKYO が運営するカフェ・OPEN NAKAMEGUROなんですね。もちろん緊急事態宣言の最中には営業が止まることもありましたが、補助金の対象にならなかった関係などで、基本的には細々とオープンしつづけていたんです。
少ないながらも、とにかく人が出入りしてくれたところで、心が軽くなる部分がかなりありました。ここがナチュラルに動いていないと会社全部が止まって見えたと思いますし、僕のマインドもやばかった。
小野:それからもうひとつ、このコロナ禍に「コミュニケーションができることの意味」みたいなものに、本質的に気づいたんです。
「30人で集まろうよ」とか言えない世の中で、どうしても外に出たい、どうしても他の人の声を聞きたい、喧騒を聞きたい、ってときにやっぱり「カフェ」という存在、立ち位置が絶妙だったんじゃないかと。
居酒屋でもレストランでもない場所。サクっと時間短めでもいける場所。それに、カフェにはテイクアウト文化が根付いている。そういう意味で、カフェって多種多様なんですよね。生活の隙間に入り込んでいくような感じは、GOBLIN.やMo:takeでは、満たしきれなかった部分かなと。
リスクが取れない時代だからこそ、カジュアルに相談してもらいたい。
コロナ禍という暗い時代に、ひとつの光としてありつづけたOPEN NAKAMEGURO。こうした経験を通し、自身の事業に自信が持てるようになったそうです。
小野:もしかしたらコロナ禍を通して、初めて本当の意味で、利用者の方と同じ視点になったのかもしれません。自分も孤独のようなものを感じて、カフェという存在のありがたみが実感値を伴って分かった。
大げさかもしれないけど、人の心を救えるかもしれないし、これってすごい価値になってるんじゃないかって、自分の事業に自信が持てるようになりました。
ポジティブなことを言うと、いまHYPHEN TOKYOが順番待ちになりそうなんですよ。それは、コロナ禍を通して、人をしっかりと集めないといけないレストランやレンタルスペースを立ち上げるには少々厳しい状況になった、ということなのかもしれません。
また、より一層リスクを取れない時代になったからこそ、僕たちYuinchuのように商業施設内のスペースもやっていて、路面店もやっている、みたいなところは相談しやすいのかもしれないですね。
「北はあの人で、西はあの人」これから必要なのは、地域を想う街のプレイヤー。
コロナ禍でも、ぎりぎりのところで舵を取りつづけ、なんとか荒波に帆を立ててきたHYPHEN TOKYO。さまざまな人との出会いや、事業を通し、見えてくる課題や展望もあったそうです。
小野:これから徐々に携わる店舗も増え、エリアも拡大していく中で、やはりその店舗や店舗がある地域の「主体性」という部分は大事になってくるなと。
自社の雇用人数とか、オペレーティブな部分をどうするか、というのは当然HYPHEN TOKYO で緻密に戦略を練っていかなければいけない。一方で、その地域に思い入れのある人がプレイヤーとして出てきてくれたりするのが理想的だったりします。その地域の方や行政の方だったり。そこを、うちでサポートしていくような体制づくりをしていきたいです。
北はあの人だよね、西はあの人だよね、みたいになったらいい。地域によっては、僕らの言語だけでは通らないところがありますし、その街によって必要なものが違いますから。各地域プレイヤーに、むしろ教えてもらいたい。
小野:やっぱり拠点は増やしたいし、エリアも拡大していきたいですから。ただ漠然とそうするだけではダメで。個人的には、2つの大きな問題を考えていかなければならないと思っています。
まずひとつ目は経済的な問題です。平たく言うと「やっていけるのか」という面。でも、ここは本質的な問題ではない。ミニマムでちょっとずつ増やしていって、と舵を取れるので。
ただ、もうひとつの問題である「文化的なインパクト」という点は大きな課題です。やっぱり、HYPHEN TOKYOを通してコミュニケーションスポットを広め、表現をし、文化的な価値を向上していきたいという想いが強くある。これは拠点を増やさずして、なかなか成し遂げられない。拠点を増やしつつも、どうやったら文化的に価値を生めるのか、考え続ける必要があります。
スーパーマンみたいなことを言うと、それで救える人がいると思ってるのかもしれないです。今回コロナ禍を通して「救いたい人」というのが増えたというか。
それは、一般利用者のように場を使いたい人もそうだし、クライアントさんのように場を作りたい人もそう。より良いカフェが増えれば、その双方が救われるんじゃないかと。今はもっと俺に力があれば、もっと俺に時間があれば…ともがいている段階です。だから、大きな夢って感じですけどね。
「バリスタもチェーン店も敵対視はしてない。役割が違うだけ」と話す小野。”チェーンと個店の乖離を埋める”というHYPHEN TOKYOのモットーを、多くの言葉が体現していました。
Vol1、2の2回にわたって、過去から未来へとそのストーリーが語られたHYPHEN TOKYO。「大きな夢」と言うように、実現ははるか未来かもしれませんが、日々の着実な努力と事業への姿勢が、少しずつその未来へ現実を近づけているようです。
– Information –
HYPHEN TOKYO
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