
佐賀で「シシリアンライス」の多様化進行中
皆さんは佐賀県にどんなイメージをお持ちですか? かつて某芸人さんの歌で地味県のイメージが全国に広まり、観光や知名度では福岡や長崎に埋もれがちですが、実は佐賀には質の高いものづくりが根づいています。
例えば、有田焼・伊万里焼などの陶磁器、佐賀牛や呼子のイカなどのブランド食材、いずれも全国区の評価を得ている本格派。しかし、今回ご紹介するのは本格派とは一線を画す、親しみやすい一皿。その名も「シシリアンライス」です。
皿に盛ったごはんの上に、甘辛いタレで炒めた肉と玉ねぎ、そこに新鮮なレタスやトマトなどの生野菜を添え、マヨネーズをサッとかければ完成――基本形は驚くほどシンプルです。それゆえに、店ごとに個性が際立ちます。
タレの甘辛具合やスパイスの配合にこだわる店、野菜の種類が豊富な店、温玉・チーズ・錦糸卵・海苔といったトッピングが楽しめる店、「佐賀牛」や「三瀬鶏」、「白石の玉ねぎ」など、県産食材を使って“佐賀らしさ”を表現する店など、多様化が進んでいます。

九州代理戦争? なぜ「シシリアン」なの?
「シシリアンライス」という不思議な名前の由来には、いくつかの説があります。最も有力とされるのは、イタリアのシチリア島(Sicily)にちなんだというもの。そもそもシシリアンライスは、昭和50年(1975年)ごろに佐賀市中心街の喫茶店で“まかない料理”として生まれたと言われています。当時、映画『ゴッドファーザー』シリーズのヒットなどにより「シチリア」という言葉が日本でも知られるようになっていたため、異国情緒を込めて名づけたのではないかといわれています。
一方で、長崎の「トルコライス」に対抗し「シシリアン」と名付けたという説も有力です。実際、九州ではトルコライスが人気を博しており、喫茶店のメニューとしてワンプレートにいろいろ乗せるという点は近いものがあり、その可能性も確かに否定できません。
佐賀市内で紹介された各種記事でも「諸説あり」と断りが添えられており、発祥店も特定できていない点が、むしろ郷土の共同作品のような親しみを感じさせます。

「食文化資産」として佐賀の看板メニューに!
さて、前述の佐賀の唐津くんちは、国の重要無形民俗文化財に指定され、さらに2016年には「山・鉾・屋台行事」としてユネスコ無形文化遺産にも登録されましたが、シシリアンライスも負けていません!
佐賀市民だけでなく、行政や観光団体も連携しながら独自の進化を続けています。毎年4月4日は「4(シ)4(シ)」の語呂合わせから「シシリアンライスの日」が、日本記念日協会に登録されています。この日には市役所で記念イベントが開催され、まさかの公式キャラクター「シシリアンナちゃん」が登場。市内約40店舗を掲載した観光客向けのシシリアンライスマップが作られるほどです。
街ぐるみの活動の甲斐もあり、2023年3月には文化庁の「100年フード(未来の100年フード部門)」に認定されました。文化庁の認定資料によれば、市内の学校では給食メニューにも採用され、単なる“B級グルメ”の枠を超え「食文化資産」として守り育てられています。観光客にとっても、シシリアンライスは“佐賀の入り口”として最適です。
空港、駅前、商店街の喫茶店、さらには観光施設内のレストランで気軽に味わうことができ、佐賀牛や地野菜などの地元食材の魅力も手軽に体験できる“はじめの一皿”と言えるでしょう。佐賀を訪れる機会があれば、ぜひ“自分好みのシシリアンライス”を見つけてください!