その数300種類以上。全国各地の「ご当地大豆」
「これ、見てみてください」
まめちゃんが見せてくださったのは小ぶりのパーツボックス。中には様々な種類の大豆が収められています。白っぽいもの、緑色のもの、赤とベージュのツートーンのもの。「北海道/とよみづき」「山形/香り豆」など、ひとつひとつに名前と産地のラベルが貼られています。「さとういらず」「秘伝」など、気になる名前も。大豆にはこんなにたくさんの種類があるのかと、驚かされます。
大豆は地域性の強い作物です。全国の各地域で、土地に適した種類の大豆が栽培されてきました。その種類はなんと300種類以上。中には、たった一軒の農家さんだけが持っている、というレアな種もあるそうです。
選りすぐりの大豆を用いてその土地に合った豆腐を作り、販売する。そんな風にして長年続いてきた「地元の豆腐屋さん」の多くが、今、経営存続の危機に立っています。経営状況の厳しさや後継者確保の難しさから、年間500軒もの豆腐屋が廃業しているのだそうです。
豆腐をめぐるこうした状況を変えるため、豆腐という食文化の魅力を伝える活動に取り組んでいるのが、工藤詩織さんです。学生時代から豆腐文化を紹介する活動を始め、ワークショップやイベントを通じて豆腐の魅力について発信し続けてきました。豆腐をこよなく愛する「まめじょ」として、多数のメディアにも登場しています。その豆腐に対する熱意から、いつしか工藤さんは「まめちゃん」と呼ばれるようになりました。
「お豆腐はどうやってできるの?」子どもたちの興味を引き出す体験
「豆腐づくりって案外短時間でできるんですよ」。まめちゃんの主催する豆腐づくりワークショップでは、水につけて戻した状態の大豆から始め、豆腐の形に固まるまでが2時間から3時間。その場で試食までできます。
目に見えて形が変わっていって、結果もその場でわかる面白さがある、とまめちゃんは言います。
子ども向けのワークショップでは、固まるのを待つ間に「お豆腐クイズ」を行うそうです。まめちゃんお手製のクイズカードを見せてもらいました。
・「日本で一番とうふやさんが多いのはどこ?」
・「一丁ってどのくらい?」
などなど、「え、何だろう?」と興味をひかれる問題ばかり。ワークショップが終わる頃には豆腐博士になれそうです。大人の場合は、職人さんの作った豆腐をテイスティングする時間を作ったりもするそうです。なるほど、これも楽しそう。
「おいしかった、おうちでもやってみよう」という反響が出るのが嬉しいですね、とまめちゃん。
「以前、おからをおにぎりみたいに丸めて『これがお豆腐になる!』って言った子がいました。その子は、こっちはいらないからって言って、豆乳を捨てに行こうとしていたんですよ(笑)。豆腐がどんな風にできるかって案外知らないですよね。こんな風に、素材から自分たちで作って食べる体験がきっかけになって、豆腐に興味を持ってもらえたらいいなと思います。」
いろいろな立場の人に伝える工夫
まめちゃんの活動は、対象もテーマも多様です。幼稚園や小学校で食育の一環としてワークショップを行ったり、外国人観光客が宿泊しているB&Bや留学生が居住する施設へ豆腐づくりを教えに行ったり。豆腐製造を行うある福祉施設では、ふだん豆乳から作っている豆腐が、大豆からだとどうやってできるかを体験してもらいました。
以前はワークショップの企画から運営までほぼ一人でやっていたまめちゃんですが、近年、様々な業界の人とのコラボレーションも増えてきているそうです。
「料理家さんはもちろん、外国の文化を伝えたいという方と一緒にやったりもしています。いろいろな人を対象にいろいろなテイストでやっていこうと思ったら、一人ではできません」と、まめちゃん。「これはやっぱりお酒があったほうが楽しいよね」となれば、居酒屋で開催することもあるのだそうです。
型にはまらないのがまめちゃんのワークショップの魅力です。
「どんな方が対象でも楽しんでもらえるよう、自分の引き出しを増やすことは、いつも意識しています」という言葉から、楽しみながら豆腐の魅力に触れてもらいたい、というまめちゃんの強い思いを感じます。
「本当は豆腐屋さん自らが伝えていけたらいいのでしょうが、今これだけ豆腐屋さんが減っている中で、外にはなかなか行けない現状があります。職人の世界は保守的・閉鎖的なイメージもあるのですが、わたしが外に出かけて行って、豆腐業界と接点を持つ人を増やし、新しい空気を入れていけたらと思っています。」
次回は4/9(火)に公開予定です。
豆腐に愛情を注ぎ、その普及に力を尽くしているまめちゃん。無類の豆腐好きがどうやって育まれたのか、また、豆腐文化を広めようと思うに至った経緯についてお伝えします。(つづく)
– Information –
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「まめちゃんのダイズバーズシティ計画!」