2019.05.07. | 

[Vol.2]家族でつくり、家族で伝える梅干しの魅力 – 紀州福の梅本舗みやぶん –

森本奈津子さん、健太さん姉弟が販売する「紀州福の梅本舗みやぶん」の梅干しは、一番低いものでも塩分が8%、高いものでは20%あります。近年、スーパーには減塩をうたった梅干しが多く並んでいますが、普段、塩分2、3%の梅干ししか食べないという人でも、一度「みやぶん」の梅干しを食べると、「美味しい」とリピーターになるそうです。その秘密とは?

ふくよかさ、まろやかさの秘密は

紀州備長炭と麦飯石にあり

皮の薄さと、果肉の柔らかさが特徴の「南高梅」。海と山に囲まれ、黒潮に乗った海風が寄せて来る紀州南部だからこそ育まれる、梅の最高級品種です。その梅を塩漬けし、天日干ししたものが、梅干しの“原型”。この原型こそが本来の梅干しであり、昔から万能食と言われてきたものです。しかし塩辛いため、今ではなかなか見かけなくなりました。塩抜きをし、甘めに味付けをした調味梅干しが主流になっています。

”原型”の梅干しからどのくらい塩分を抜くか(脱塩)、どんな調味液の中にどれくらいの時間漬け込むかによって、出来上がる梅干しの味が変わってきます。ここが、各梅干し店の工夫のしどころ。「みやぶん」では、脱塩する過程、そして酢やハチミツなどの調味液に漬ける時に、「紀州備長炭」と「麦飯石」を一緒に漬け込んでいるそうです。

 

奈津子さん:麦飯石は、ばくはんせき、と読みます。熱帯魚の水槽の底に敷いてある、あの石です。備長炭と同じで、不純物や水に含まれる化学物質をキレイにしてくれる浄化効果がありますし、ミネラル成分が石から出るので、脱塩したり調味液に漬けている間に梅から流れ出てしまうミネラルをしっかり補ってくれるんです。

 

健太さん:漬けている間に備長炭はどんどん穴が空いてスカスカになっていくんですよ。それぐらいミネラル成分がたくさん出ているんですね。二つを入れることで梅がふくよかになり、味もまろやかになります。

 

紀州備長炭と麦飯石を使っているお店は「みやぶん」の他にはないそうで、全くのオリジナルです。どうやって考えついたんでしょうか。

 

奈津子さん:父が梅干し製造を始める時、美味しい梅干しを作りたいと試行錯誤したそうです。父は甘ったるい梅干しが嫌いだったので、好きではない味の梅干しを作ることが腑に落ちなかったんでしょうね。また、梅の持つ力についてすごく考えたそうです。その時に、ミネラルを補うものとして考えたのが和歌山の産物である紀州備長炭と麦飯石だったんです。

 

 

梅干しの効能は、

塩分濃度が低すぎると得られない

「みやぶん」の梅干しがほかの梅干しと違うもう一つの大きな特徴が、保存料や着色料を一切使っていないこと。お店で売られている製品としての梅干しに詳しい人たちは、「みやぶん」が保存料使っていないことを知ると驚くそうです。

 

健太さん:健康を意識した「減塩」が流行しているので、減塩の梅干しを求める人は多いのですが、塩分濃度が低くて長持ちする梅干しを作るためには、保存料が必要になります。でも、保存料を入れた時の梅干しの樽は独特な香りがします。当然、味も変わってしまいます。「みやぶん」では、保存料を使用しない代わりに、お酢をたっぷり使っています。そのため、保存料特有の香り味がなく、梅本来の風味や旨味が味わえる梅干しになっています。

 

奈津子さん:私は最初のころ「減塩の時代だから、低い塩分じゃないと売れない」と父とケンカをしました。でも、梅干しって、減塩しすぎると、塩分とともに大事なクエン酸などの栄養素も一緒に抜けてしまうんです。梅干しはクエン酸などが含まれているからこそ、疲労回復や殺菌、血液浄化などの様々な効能があるんですよね。その効能がなかったら、梅干しが梅干しでなくなってしまう。だったら、お客様にきちんと説明をして、うちの梅干しのファンになってくれる人を増やそうと思ったんです。

 

実際、マルシェで「みやぶん」の梅干しを一度味わった人はその違いに驚き「ほかの梅干しが食べられなくなった」「ここの梅干しじゃないとだめ」と口々に言うそうです。それらの声を聞いて、より一層「この味を守っていこう」と思いを強くしたといいます。

 

 

自分が好きな味はどれ?

新作梅干しも登場!

さて、ここで「みやぶん」の梅干しのラインナップを紹介したいと思います。塩分濃度は高いものだと20%。一番低いものでも8%。決して減塩とは言えない数字です。8%以下の梅干しを作らないというのもみやぶんのこだわりだそう。

しお梅:塩分20%「塩だけの昔ながらのしょっぱい梅干し」

しそ梅:塩分17%「しその風味香るすっぱい梅干し」

白干梅:塩分14%「塩と酢を使用したすっぱい梅干し」

かつお梅:塩分8%「鰹節としそのきざみの風味豊かな梅干し」

味梅:塩分8%「はちみつを使用した甘酸っぱい梅干し」

 

健太さん:定番の5種類に加え、個数限定で製造しているビール梅もおすすめです。ビール酵母を使用するため栄養素が高く、アルコールは使用していないので、お子様でも食べれる不思議とコクがある梅干しに仕上げています。また、季節に合わせたシリーズとして、初夏限定の「すだち梅」をまもなく発売します。ぜひ、冷たいお蕎麦やうどんなどに合わせてもらいたいと思います。

 

ユニークな梅干しや季節で楽しめる梅干しが登場するのも、梅干し専門店のみやぶんのおもしろいところ。

それぞれ味が全然違うので、マルシェでは試食しながら好みの梅干しを見つけられます。

とても素直なので、汗をかくこれからの季節は、塩分の高い梅干しを体が欲するんですよね。昨夏の終わりに「みやぶん」の梅干しと出会った時、私の体はあんなに「しお梅」を欲していたのに、真冬になったら自然と甘みのある「味梅」が食べたくなりました。そして、「みやぶん」といえば、梅干しだけではありません。漬け込む時に保存料を使っていないからこそできる梅の調味酢「梅しずく」も大人気です。

これは、「味梅」を漬けていた調味液そのものをパック詰めしたもの。お水や炭酸水で割って、ドリンクとして飲んでもおいしいですし、ピクルスやドレッシングに使うのはもちろん、納豆に和えたり、唐揚げの下味にしたりと、幅広く活用することができるんです。ジュレにするのも◎。ぜひ試してほしい1品です。

さて、Vol.2の最後に、一つだけ。「みやぶん」の梅干しは冷蔵庫に入れず、常温保存してくださいね。塩分濃度しっかり保っている上にお酢をたっぷり使っているので、常温で大丈夫です。冷蔵庫に入れると、南高梅の美味しさである、薄くて柔らかい果肉が硬くなってしまうので、ご注意を!

 

次回は、5/14(火)に公開予定です。「ご飯のお供から調味料に」をテーマにした「みやぶん」の今後の展開や、まだ秘められているであろう梅干しの可能性についてお伝えします!(つづく)

 

 


– Information –

「紀州福の梅本舗みやぶん」

https://www.miyabun-ume.com

オンラインショップ:https://www.miyabun-ume.com

Facebook:https://www.facebook.com/miyabun.ume/

Instagram:https://www.instagram.com/miyabun_ume/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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