2021.05.29. | 

[Vol.1]「食」を起点に、新しいお店の形をつくっていく。NOD溝端友輔さんが仕掛ける空間プロデュース

空間の企画やデザインを手掛ける株式会社NODの溝端友輔さん。2020年12月、日本橋にホットサンド専門のお店をオープンしました。溝端さんがプロデュースを手掛ける複合施設「GROWND nihonbashi」の1階です。老舗のお店が多く並ぶこの街で始まったこのプロジェクトは何を軸にどんな方法で展開されているのか、詳しくお話を聞きました。

「GROWND nihonbashi」の始まり

三越前駅から徒歩2分。多くの人が行き交う場所に複合施設「GROWND nihonbashi」はあります。1階は、溝端さんが立ち上げたホットサンド専門店「HOT SAND LAB mm(ホットサンドラボ・ミリ)」。全国各地のおいしいものをサンドしているのが特徴で、完全キャッシュレスという便利さでも話題を呼んでいます。

また、2階は店舗併設型オフィスで、3階には和菓子店が出店しています。
こんなふうに個性的な「GROWND nihonbashi」ですが、一体どんなプロジェクトなのか気になります。まずは、始まりからお聞きしました。

 

溝端さん:「GROWND nihonbashi」のビルはもともと、テナントのいない遊休不動産で、2年後に解体が決まっています。約1年前に不動産の開発業者の方から「食を起点に街の賑わいを創ってほしい」とご相談いただいたのがきっかけでこのプロジェクトが始まりました。

日本橋は、どちらかというと年齢層の高い方が多いイメージを持たれている街だと思います。事業もそういった方々に合わせたほうが安定するのかもしれません。ただ、若い方にとってもビジネスを始めやすい環境をつくりたいと僕は思いました。

事業者の方が主体性を持って、やりたいことを形にできるような不動産や建築の仕組みを作りたいと思ったんです。「GROWND nihonbashi」は、その実証実験としての役割も担っています。

 

若い事業者の新しい可能性を持ったビジネスをサポートしたい

「GROWND nihonbashiは、事業を始めたい方がアイデアをそのまま形にできることを大切に、不動産や建築の領域からサポートできるプロジェクトでありたい。」そう溝端さんは話します。溝端さんは、今回どんなことを実現したのでしょうか?

 

溝端さん:ユニークな飲食コンテンツをやりたいと思っても、初期費用や空間的な制約の問題から、結果的に最適化されて一般的なコンテンツになってしまう、ということはよくあります。そうではなく、プロジェクトの個人的な、主体的なアイディアをそのまま形にできるような環境を、不動産と建築の両軸からサポートしていきたいと思ったんです。

そこでまず、不動産オーナーさんと一緒に、空間の最低限の整理を行ってしまいました。また、賃料の仕組みを整えたり、飲食や建築関連の許可をあらかじめ取得したりして、入居するオーナーさんの初期費用が抑えられるようにしました。そうした整備により、オーナーさんが自らのアイディアを実装していく時にかかる制約が各段に減らせるんです。

たとえば、3階に入っている「和菓子屋 かんたんなゆめ 日本橋別邸」さんは、もともと渋谷で飲食店を営業されていました。客層が違う日本橋でも出店を決めていただいたのは、初期投資や準備を必要最低限に抑えたこの仕組みがあったからなのかなと思っています。

 

溝端さんが立ち上げた1階の「HOT SAND LAB mm」のホットサンドは、「海苔と鳥肉そぼろ」や「白川りんごとハム」など、具材の取り合わせのユニークさも特徴的です。ところで、なぜホットサンドなのでしょうか?

 

溝端さん:ホットサンドが大好きだから決めた、というわけではないんですよ(笑)。ただ、これまで事業として食の分野に関わることが多くて、僕自身、食にはとても関心がありました。誰にとっても必要なものという意味で間口がとても広くて、さらに一歩その世界に入ってみるととても奥深いと思っているんです。

「GROWND nihonbashi」は、いろいろな人を巻き込んだプロジェクトにしたいと思っていたんです。日本橋に既にある、多様な飲食店とコラボしたい。そう考えた時に、何か土台にできるものをつくりたくて、ホットサンドを選びました。甘いものともしょっぱいものとも相性のいいホットサンドなら、いろいろな人やものを巻き込むことができる、面白いコンテンツになりそうだと思いました。

 

お店に足を運びたくなるきっかけを

それでは、なぜ「HOT SAND LAB mm」を通して多様なお店とコラボをしたいと思ったのでしょうか。

 

溝端さん:設計士として仕事をする中で、いろいろな方とお会いする機会があります。でも、建築は資金的なハードルが高いんですね。おもしろい方と意気投合して何か一緒に仕事をしたいと思っても、「建築」だけの切り口だとなかなか難しいんです。
でも、食を起点にすると間口が広くなって、一緒に何かを作ることができると気づいたんです。「HOT SAND LAB mm」では、日本橋の老舗のお店を中心に、また建築の仕事でよく地方創生のプロジェクトにも関わっていることもあり、地方の食材のお店ともコラボしています。

 

店名にある「mm(ミリメートル)」は、建築で使われる小さな単位のこと。小さな単位から、エリア全体に影響するような“点”になりたいという気持ちを込めて名づけられたのだそうです。「いろいろなおいしいものとの距離を縮めるきっかけをつくりたい、との思いも同時に込めています」と、溝端さんは言います。

 

溝端さん:うちのホットサンドをきっかけに、日本橋の老舗の味や地方の魅力的な食材に触れていただいて、お店にもその地方にも足を運んでみたいと思ってもらえればいいなと思っています。オンラインでも購入できるので、いろいろな食材に触れていただけるとうれしいですね。
今はコロナもあって遠出もしにくい状況です。そんな今だからこそ、いつか老舗のお店や地方のお店に足を運んでもらえるよう、きっかけになる場所をつくっていきたいです。

 

次回は5/25(火)公開です。「GROWND nihonbashi」を始める時に感じた難しさ、おもしろさ、また可能性についてお話をうかがっていきます。(つづく)

 

– Information –
HOT SAND LAB mm
https://mm.grownd.jp/

株式会社NOD
https://nod.jp.net/about/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。