2023.11.28. | 

[Vol.6]秋の味覚にピッタリ。これさえあれば◎な和酒を堪能|日本酒のプロたっちゃんと巡る、おいしいたのしいお酒の世界

突然ですが、日本酒は好きですか? 
「大好き!」「日本酒しか飲まない」という方から、「うんちく語るおじさんが面倒くさい」「お正月しか飲まない」「毛嫌いして飲んだことがない」という方までいるのではないでしょうか。
日本酒に対する印象や思いは人それぞれだと思いますが、これまで体験したことのない、新しい日本酒の世界をのぞいてみませんか? 
ナビゲーターは、日本酒のプロで、創作和食「地のものバル MUJO」の店長、たっちゃんこと小原辰生さん。自ら料理もする小原さんだからこそ、日本酒がもっと身近に、そして楽しくなるお酒の世界を案内してくれること間違いなし!です。
シリーズ6回目の今回は、この1本さえあれば秋の味覚にもピッタリ合うし、フルコース料理にも対応できちゃう和酒とキノコのおつまみを教えていただきます。

食用のお米と、日本酒用の酒米、いったい何が違う?

−−ちょっと話が逸れますが、お米と言えば、食べるお米と日本酒を作るための酒米は何が違うんでしょうか。

小原さん:米粒の大きさですね。酒米は大きいんですよ、削る前提なので、磨いた後に普通のお米と同じ大きさぐらいになります。

 

−−吟醸とかの分類は、米をどれだけ磨くかですものね。なるほど。

小原さん:さらに細かく言うと、中にす(空洞)が入っているのが理想的な酒米です。

 

この白くなった部分が空洞で、これを心白(しんぱく)って言います。お酒は蒸したお米にカビを付着させていきますが、カビは水分を求めて菌糸を伸ばします。お米に空洞があるとその中に水分が貯まるので、表面のカビが水分に向かって中へ中へと菌糸を伸ばしていくんです。そうするとお米が糖化されて甘くなるという仕組みなんです。

食用のお米には空洞がなくて菌糸が伸びにくいので、酸味があったり、すっきり系のお酒に仕上がります。

 

−−酒米も一度食べてみたい気がしますが、普通に買えますか?

小原さん:酒米どころでは、一合分だけとかで売っていますね、例えば山田錦の産地は兵庫県が一位、二位は岡山県なので、そのあたりなら売っているのではないでしょうか。お酒好きの人たちは、食べてみたいと思うみたいですね。

 

秋の味覚といえば、キノコ マッシュルームのパテを食す

−−これはなんでしょうか。

小原さん:マッシュルームのパテです。

生のままフードプロセッサーにかけて、フライパンで水気がなくなるまで水分を飛ばしたものです。最初は結構お出汁できるくらい水分が出るんですが、しっかりと飛ばして、最後に塩とバターで味付けしました。色が黒くなっているのは、酸化したからですね。

 

−−(匂いをかいで)わ、香りがすごい! これはキノコ好きにはたまらないですね。とっても美味しい! 食べてみると、水分を飛ばしているというのがよくわかりました。使うきのこはマッシュルームがいいんですか?

小原さん:しいたけでも作れることは作れますがクセが強くなるかな。舞茸をフードプロセッサーで荒めに刻んで炒め、スライスしたバゲットの上に、ブルーチーズと合わせるのもいいですよ。

 

−−それも美味しそうですね! 秋だからこその味覚を楽しみたいなと思ったとき、今年もサンマが高いなと感じるんですが、マッシュルームや舞茸はいつも値段が安定しているのでありがたいですよね。

小原さん:ハウス栽培ありがとう! ですね(笑)

 

食材の香りを引き立たせ、さらに持ち上げてくれる和酒とは

小原さん:マッシュルームのパテと調和する和酒は、これですね。

 

宮崎県は黒木本店の「球」という芋焼酎をどうぞ。度数14度で、日本酒よりも度数が低いです。アールグレイみたいな香りがすると思います。

 

−−ああ! 香りは芋焼酎なのに、口の中に含むとなんだか全然違いますね。

小原さん:球って、クエスチョンのQでもあって、焼酎はもっといろんな味を表現できるんじゃない? という意味も含めて作っているそうです。

これ、マッシュルームを口の中でもぐもぐしながら合わせて欲しいんです。バターを使った料理との相性がものすごくいいんですよ。

 

−−口内調味ですね!

小原さん:バターを使ってなくても、全食材の香りを引き立たせてくれます。含んだ瞬間、焼酎が勝たずに食材を持ち上げてくれるんです。

 

−−ああ、わかります! もっと美味しくなる!

小原さん:「球」は秋に限らず、通年ご自宅において欲しいですね。

 

1本の焼酎でフルコース料理に対応できるのには理由がある

−−これは焼酎なのに、ロックとかにせずこのまま飲んじゃうんですね。

小原さん:もう水割り状態なので大丈夫です。前割りという考え方ですけど、お水割にしてまろやかにしています。九州だったら、事前に水割りしたものをそのまま熱燗にしますね。

 

−−宮崎に行った時、その飲み方で飲んだことを思い出しました!

 

小原さん:通常は度数を下げると物足りない感じになるんですが、これはちょっと色が黄みがかってますよね。一部樽熟成にしたものをブレンドにしているので、樽熟の部分が味に厚みを出してくれて、軽いんだけれど奥行きもある味の仕上がりになっています。

 

−−カッコイイですね。

 

小原さん:球自体は、キンキンに冷蔵庫で冷やしている状態で出しましたが、例えばイタリアンやフレンチのコース料理の場合、それを前菜からテーブルにお出ししておくと、料理が進んでいくごとに焼酎の温度が高くなるので、お肉料理の頃にはちょうどいい温度帯になってくるんです。そうすると、さっきとまた違う香りがで始めて、お肉とすごく合うんです。これ1本でコース料理がいけます。

 

−−優秀だなあ。

小原さん:僕はすべてのイタリアンやフレンチのお店に置いてほしいと思っているオススメの1本です。

 

 

– Information –
地のものバル MUJO

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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