2023.11.24. | 

[Vol.5]秋の和酒と肴、いただきます!|日本酒のプロたっちゃんと巡る、おいしいたのしいお酒の世界

突然ですが、日本酒は好きですか? 
「大好き!」「日本酒しか飲まない」という方から、「うんちく語るおじさんが面倒くさい」「お正月しか飲まない」「毛嫌いして飲んだことがない」という方までいるのではないでしょうか。
日本酒に対する印象や思いは人それぞれだと思いますが、これまで体験したことのない、新しい日本酒の世界をのぞいてみませんか? 
ナビゲーターは、日本酒のプロで、創作和食「地のものバル MUJO」の店長、たっちゃんこと小原辰生さん。自ら料理もする小原さんだからこそ、日本酒がもっと身近に、そして楽しくなるお酒の世界を案内してくれること間違いなし!です。
シリーズ5回目の今回は、お酒に合う簡単な料理を教えていただきます。自宅で簡単にできるレシピなので、ぜひ試してみてください。

          

知っているようで実はよくわかっていない。和酒って何?

−−すっかり秋になりましたね。今回はぜひ、秋の味覚にあったお酒を教えていただきたいと思うのですが、最初に教えてください。MUJOにあるお酒は「すべて和酒」とのことですが、和酒ってなんでしょうか?

小原さん:明確な定義は人によって違うところはあるかもしれないですが、僕が言う和酒は、日本で作られているお酒全般です。なので日本酒、焼酎だけではなく、ウイスキー、ジン、そしてワインも和酒と呼んでいます。

 

−−材料が日本のもの、という定義はありますか?

小原さん:例えば日本ワインは、日本で作られたブドウで作るもの、それに対して国産ワインは海外のブドウ果汁を使ったもの。後者は大手メーカーがやってるものですね。僕はそれを含めて和酒と呼んでいます。

 

−−なるほど。思ったよりも定義が広いんですね。そして和酒の中でも日本酒だけに限定せず、広く和酒を扱うことにしたところにも、きっと理由があるんですよね。

小原さん:元々酒屋で働いていたというベースがあるので、日本酒だけではなく焼酎も扱えるし、ジン、ウイスキーも積極的にお出しできます。普通の飲食店はどれかに偏りが出ますが、僕としては同じ熱量で扱いたいと思っています。

ただワインはおかないことにしています。というのも、このあたりにはフレンチ、イタリアン、ビストロなどワイン出しているお店や日本ワイン専門店、ナチュールワイン専門店もあるので、ワインはそれらのお店にお任せすればいいかな、と。住み分けですね。

 

「あかとんぼ」× 柿 秋ならではの組み合わせ

−−ではではそろそろ本題へ。秋の味覚にあったお酒を教えてください。

小原さん:今、秋酒が出ています。本来秋のお酒は、春先に作ったお酒をひと夏寝かせて円熟味、熟成感が出たものを指します。ただ最近は、秋を迎える前、8月後半には秋酒として出すようになってしまったので、あまり味が変わらないかな、という感じがします。衣料品店が季節を先取りして、夏に初冬のダウンジャケットを売るのと同じですね。もちろん、しっかりと寝かせたものもあります。

今日はこの赤とんぼのラベルのお酒を紹介しようと思います。

 

地酒を追求している「仙禽(せんきん)」という蔵元さんの「あかとんぼ」というお酒です。地元のお米しか使わない蔵元さんのリーディングカンパニーですね。

 

−−すごく印象的なラベルですね。誰が見ても、赤とんぼ! では早速、味見を。

 

小原さん:秋のお酒ですが円熟味は少ないですよ。

 

−−すっきり、マスカットみたいな香りがしますね。うん、美味しい!

小原さん:ドライ目の白ワインみたいな感じですよね。

 

−−なるほど、本来は秋酒というなら、こんなにスッキリしてないということなんですね。

 

−−さてここで、柿の辛子酢味噌和えをいただきます。

美味しい!! 

 

カラシを入れたほうが、酢味噌で和えただけよりも、柿の甘みがあるからかな、酢とのバランスがすごくいいですね。

 

小原さん:うちでは前菜として出していますが、シャインマスカットで作っても美味しいですよ。 

 

そして、柿で作って冷蔵庫に入れておけば、常備菜みたいに3日はもちます。時間とともに食感が変わってきて、二日目には柔らかくトロトロになるんです。1日目と大きく変わるので、その変化も面白いと思います。

 

−−これは白和えですか?

 

小原さん:豆腐の白和えなんですが、味噌の量を減らしてピーナツバターを半分入れて作っています。これに九州の甘いお醤油を少し加えています。

 

−−上にかかっているのはなんでしょうか?

小原さん:カカオニブですね。食感がいいアクセントになると思います。ただ今回は柿が硬めだったので、少し食感がかぶってしまうかもしれないですが。

 

−−酢味噌和えとはまた全然違う味わいになりますね。酢味噌和えは柿の甘さが引き立つ感じでしたが、白和えの方がさっぱりといただけるといいますか。

カカオニブの食感もいいですね。

 

小原さん:食感のアクセントとして、たまにコリっとなるのがいいですよね。

 

気象条件にも大きく左右される、日本酒の奥深さ

小原さん:こちらは福島の「しもふりロ万(ろまん)」というお酒です。

 

少し濁っている、霞がかっているのがわかるでしょうか。寝かせて少し甘さを引き出したお酒です。

 

−−ああ、柔かい! さっきのすっきり感とは全然違いますね。

小原さん:福島県のお酒らしい柔らかさです。白和えと合わせるとしたらこっちがいいかなと思います。

 

−−白和えと合わせると、さらに甘さが引き立ちますね。

 

小原さん:この花泉酒造は昔からあるんですが、低迷した時に、蔵人として働いていた人が買い取って建て直したんです。そして甘さがなくなったんですが、最近、元の社長さんが戻ったら、甘さも戻ってきました。

 

−−酒造りって、作り方を少し工夫してもその結果がわかるのって半年とか1年後じゃないですか。大変ですよね。

小原さん:日本酒業界ってワインと違い、毎年同じ味を作ることが求められているんです。でも気象条件も違うから、そもそもお米の具合も変わってきます。水分不足だとお米が硬くなるので溶けにくくなり、スッキリとした味わいになりますよね。

 

でもそんな時も、ただ「甘さが足りないですね」というのではなく、「今年は異常気象で雨が少なかったじゃないですか」という話の持っていき方をすると、受け取る側の印象も変わってきますね。

 

次回は11/29(火)に公開予定です。この1本さえあれば秋の味覚にもピッタリ合うし、フルコース料理にも対応できちゃう和酒とキノコのおつまみを教えていただきます。(つづく)

 

– Information –
地のものバル MUJO

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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