コクや甘みのある新焼酎 味わい深さの秘密は?
−−秋だからこそこれを飲んでほしい、という和酒はありますか。
小原さん:焼酎が好きな方であれば、ぜひ新焼酎をおすすめしたいですね。
−−新焼酎ですか? 初めて聞きました。
小原さん:焼酎は通常、3〜6ヶ月以上寝かせて出荷します。作りたての焼酎は、ガス臭、一般に言う硫黄のような香りがあるのでそれを抜くために寝かせてから瓶詰めするんです。でも、その香りをあえて閉じ込めたものが新焼酎です。
この鶴見がそうです。少し霞がかっているのがわかりますか?
−−確かにそうですね。ラベルにも「白濁」と書いてあります。
小原さん:油分などが残っていると、こういう色合いになるんです。でも油分は、寝かせている間に酸化臭が出てしまいます。なので焼酎は気温が下がって油分が固まったら、それをすくいとって、出荷します。
でも、油分は実は甘みや香りになるんです。なので酸化する前に飲み切れるのであれば、焼酎が好きな方にとっては油分を残した新焼酎の味わいはめちゃくちゃいいんです。油分がいいコク、甘み、深みを出すんですよ。
−−新焼酎という言い方は、昔からあるんですか?
小原さん:ないんじゃないかなと思います。最近は時代の傾向からあまり濃いお酒が好まれないので、芋焼酎もフルーティー系の方が引きが強いですね。新焼酎は昔ながらの香りに近いのですが、それを好きな人が少ないので、この香りを出している焼酎はこの時期だけにしてるんですよ、売れないので。
焼酎のお湯割り お湯が先か、焼酎が先か
小原さん:ちょっとこの新焼酎のお湯割りを飲み比べてみてください。作り分けをしています。お湯後バージョンと、お湯先バージョンです。
−−私、大学新卒で入社して、最初に九州に配属された時に「焼酎のお湯割りは、必ずお湯が先だ」と、仕事より先に教え込まれたのを覚えてます(笑)
小原さん:新焼酎は荒々しさや芋の香りを楽しむためのものなので、熱々のお湯を最後にガッと入れて作ると、香りが荒々しくなってその粗さ、質感がより出るんです。
−−では最初はお湯先バージョンからいただきますね。(飲んでみて)うん、美味しい。
小原さん:穏やかで、終始芋の柔らかさが出るような感じですよね。
−−では、お湯後バージョンをいただきます。(飲んでみて)え! 全然違う。余りに違うのでびっくりしました!
小原さん:同じ焼酎なのに全然違いますよね。お湯後バージョンは、お湯の温度をあげて高さを出して注いだんです。
とりわけこの焼酎は油分を含んでいるのでより香りが出るんです。新焼酎ならぜひ、お湯後バージョンで飲んでほしいですね。
−−こんなに変わるんですね。飲み比べると、お湯先バージョンのまろやかさがすごくよくわかります。面白い。
小原さん:穏やかに飲みたいなら、絶対にお湯が先です。70度ぐらいのお湯が理想ですよ。気持ちを落ち着けたいのなら、お湯後ではないですね(笑)
普通にお湯割りを作る時、なぜお湯が先かというと、温かいお湯があった時に冷たい焼酎を注ぐと、冷たいものが下にいく性質があるので対流が生まれるんです。
なので混ぜなくてもお湯割りが出来上がるという。
もっというと、早いタイミングで飲むと混ざりきってないちょっと荒い感じがあるんですけど、少し待つとしっかりと混ざり、温度も下がるので滑らかに飲めるようになりますよ。
−−なんだか理科の実験みたいですね(笑)
器の質感によっても口当たりが変わるから、器のチョイスも楽しみたい
小原さん:ちなみに、これは焼酎を入れている器も材質を変えてみました。先ほど入れたのは、荒々しさを出したいので、ちょっと飲み口もゴツゴツした器にしたんですが、これはツルツルなんです。
−−あ、ツルツルだ。
小原さん:柔らかく飲みたい時、お湯先の時にはにはツルツルした方が、さらに飲み口が変わるので面白いかなと思います。
−−材質でこんなに変わるんですね。面白い。なんでこんなに材質で飲み口が変わるんでしょうね。
小原さん:唇がガサガサに乾いている人とキスするのと、石原さとみとキスするのとの違いじゃないですかね。
−−(笑) すごくわかりやすい例えですね。確かに。
小原さん:すごく口当たりがぽってり系で、石原さとみっぽい感じですよね(笑)
−−飲む時の器は大事なんですね。
小原さん:同じ陶器でも加工によって違いますからね。
−−今回もすごく勉強になります!
次回は3/21(火)に公開予定です。次回、小原さんが教えてくれるのはスイーツと和酒の組み合わせ! 秋の夜長だからこそ、食後のデザートタイムもゆっくりとお酒を楽しめそうですよ。
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地のものバル MUJO