SERIES
Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ
2023.02.21. | 

[Vol.2]加熱で調味料のクセは抜ける!優しい味わいの「エスニックブリ大根」|Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ

家飲みが当たり前になったここ数年。気軽な家飲みですが、気がつくとおつまみはマンネリになりがちです。見栄えがよくて、美味しくて、しかも簡単なおつまみのレシピがあれば、気楽に仲間を呼んで、うちで乾杯できるのに・・・。そんな料理素人のライター谷井百合子が、Mo:takeフードクリエイターに弟子入りします。レシピを読むだけでは気がつかない、美味しく仕上げるためのコツやアレンジがいっぱいの「どこよりも細かいレシピ」を一緒にキッチンに立って教わります。

今回のMo:takeフードクリエイターは、雑誌やテレビ番組でメニュー提案やレシピ制作を手がけ、ご自身のレシピ本も出版されている料理家・フードコーディネーターの下条美緒(しもじょう・みお)さん。以前、Mo:takeマガジンのインタビューにもご登場いただいています。

[Vol.1]美味しい料理のある空間を演出する 料理家・フードコーディネーター下条美緒 ×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

後半は、下茹でして準備が整ったブリと大根に、エスニックな風味を煮含めていきます。プロのフードコーディネーターの下条さんだからこそ、ブリの臭みを徹底的に抜くコツや、時間を短縮しながらしっかりと味を入れていくコツなど、見逃せないノウハウがたくさん!とびきりおいしく作るコツを、下条さんに引き続き詳しく教わります!

エスニックな味わいはナンプラーと豆板醤。きび砂糖でコクを出す

谷井:ところで、今のところエスニック感が見えてこないんですが……。今回のブリ大根、どの辺りがエスニックなのでしょうか?

 

下条さん:エスニックらしくなるのはここからです(笑)。ここから、ナンプラーに豆板醤などの調味料とパクチーを加えていきます。タイ料理などのエスニック料理は青魚をよく使うので、エスニックの味付けはブリともすごく相性がいいと思います。

 

谷井:どんな風になるのか、楽しみです。ところでナンプラーはどこの国の調味料でしたっけ?

 

下条さん:ナンプラーはタイの魚醤です。その他にもベトナムの魚醤、ニョクマムでも代用できますよ。

 

谷井:なるほど、タイとかベトナム、アジア系の国の調味料ですね。豆板醤も欠かせない感じでしょうか?

 

下条さん:そうですね、豆板醤の代わりに赤唐辛子でもいいのですが、豆板醤は発酵調味料なので、少し入れると唐辛子よりも深みのある辛さになります。

 

谷井:なるほど。豆板醤を使ったほうがよりより深みのある味わいになるんですね。他に調味料で気をつけること、ありますか?

 

下条さん:お砂糖は、きび砂糖を私は使っています。白砂糖よりコクがあって、深みのある甘みが出ます。

 

谷井:砂糖の種類によって、味わいが変わるんですね!知らなかった……

 

下条さん:そうですね、三温糖もコクがある砂糖なので、三温糖でもいいかもしれませんね。

 

下条さん:あと、エスニック感を出してくれるのはパクチーですね。

 

谷井:パクチーは、あるとないとじゃ全然違いますよね!パクチーは買ってお料理に使ったこともありますが、少ししか使わないから、いつも残しがちの食材です。

 

下条さん:前回の「刺身の柚子胡椒タルタル」のときに使った大葉と同様に、パクチーも洗って、濡れたキッチンペーパーで包んでジップロックに入れておくと、長持ちしますよ。

 

谷井:なるほど!パクチーもやってみます!

 

豆板醤、にんにく、しょうが。とんがった刺激は炒めて丸く

下条さん:さて、調味料を準備していきましょうか。まず、ごま油を引いて、にんにくとしょうが、豆板醤を入れます。

 

谷井:油が冷たいまま入れちゃっていいんですか?

 

下条さん:はい、冷たいままで大丈夫です。火をつけて、弱火から中火ぐらいで、シュワシュワと炒めていきます。

 

谷井:わたし、だいたいいつも調味料は具材の後に入れているんですが……調味料だけ先に炒めるのはどうしてですか?

 

下条さん:にんにくやしょうが、豆板醤など辛味のある調味料は、一度油で炒めると、とがった刺激が減って丸みが出ます。炒めないで煮汁にそのまま入れるのと、味わいに違いが出てくるんですよ!

 

谷井:そうなんですね!知りませんでした!これも美味しく作る大事なポイントですね!

 

下条さん:油がにんにくやしょうが、豆板醤となじんだところで、まず大根を入れて炒めます。ここもポイントです!イメージとして大根に油を絡ませる感じで炒めます。こうすることで、大根に旨みとコクが入ります。

 

谷井:なるほど。豆板醤の赤い色がきれいですね。

 

下条さん:これぐらい大根の表面に油が入ったら、味付けをしていきます。まず水を入れます。

 

谷井:じゅーって、いい音しますね!水の量はちゃんと計った方がいいですか?

 

下条さん:はい。今度は調味料と合わせるので、しっかり計ります。250ccの水を計って入れてください。

 

谷井:わかりました!

 

下条さん:続いて、ナンプラーと砂糖、みりんと酒を入れます。ナンプラーは砂糖と相性がよくて、しっかり目に入れると味のバランスがよくなります!

 

谷井:なるほど。ナンプラーだけだとしょっぱさが先に来るけれど、砂糖で味がまとまるんですね。

 

下条さん:そうなんです!そして、調味料を入れたら蓋をして、まずは大根だけ煮ていきます。弱めの中火ぐらいで、このまま5分ぐらい煮ていきます。

 

谷井:だんだんエスニックな香りがしてきました!蓋はやっぱりした方がいいのですね?

 

下条さん:そうですね、大根に早く味を入れたいので、ここでは蓋をして煮ます。

 

谷井:なるほど。これも時間短縮のコツですね。

 

下条さん:そうそう。そして今回は、煮汁が少なめなので、途中で一回上下を返します。

 

ブリを入れたら落し蓋。臭みは抜いて、味を含める

下条さん:では、そろそろブリを入れましょうか。

 

谷井:どういう状態になったらブリ投入のタイミングですか?

 

下条さん:目安としては大根の固さかな。箸がすっと入るぐらい。

 

谷井:この段階で煮上がった状態にするわけではないんですね。

 

下条さん:そうですね!この後、ブリと一緒にさらに煮ていくので、その一歩手前で大丈夫です。

 

谷井:一面にブリと大根が並んで、煮汁がちょうどかぶる感じですね。

 

下条さん:この上に、クッキングシートで落し蓋をします。もちろん、木蓋でもいいですし、ステンレスの落し蓋があればそれでもいいですよ。ここから6分ほど煮ていきます。

 

谷井:いつも思うんですけれど、落し蓋って、何のためにするんですか?大根を茹でた時みたいに普通に蓋をするのとはどう違うんですか?

 

下条さん:そうですね、基本的には味を染み込ませて付けたい時に落し蓋をします。普通の蓋と違って食材に接地するから、その下で煮汁が対流しやすくなるんですよ。

 

谷井:なるほど。まんべんなく味がいきわたるのですね!

 

下条さん:あとは、今回のブリの場合、フライパンの蓋をしちゃうと鍋の中に生臭さが充満してしまうんですよね。

 

谷井:そうか。密封しないから、匂いが抜けていってくれるのですね。

 

下条さん:そうそう。鮭とか、臭みの少ない魚も、落し蓋はした方が味がしみこみます。魚の表面の乾燥も防げますしね。

 

ふつふつとする火加減で、ふっくらとブリを煮る

谷井:火加減は弱火で、水分を蒸発させていく感じでしょうか?

 

下条さん:そうですね。火力が強くて煮汁がグラグラしちゃうと表面が固くなってしまい煮崩れもしやすくなります。逆に弱すぎると生臭くなってしまいます。弱火ではあるのですが、使うコンロの火力と鍋を置く位置の高さにも寄るので、ふつふつするぐらいの火加減に調整します。

 

谷井:なるほど!ふつふつとなるようにチェックするんですね。

 

下条さん:6分ほど経ちましたね。ではブリを裏返して、また6分ぐらい煮ます。

 

谷井:すごい、ふっくらしてる!

 

下条さん:煮汁が減ってきましたね。煮汁が少なくてもひっくり返すことでちゃんと味が入ります。

 

谷井:ふつふつと静かで、なんだか気持ちよさそうですね……。私が前にブリ大根を作った時は、ブリも大根も崩れてごった煮みたいになってしまいました。

 

下条さん:それはそれで美味しいですけどね。レシピによっては、圧力鍋で骨までホロホロと煮崩れるようなのもあったり。煮汁が多いと煮崩れしやすいかもしれませんね。

 

谷井:今回のブリ大根は、切り身のままお行儀よく煮えてて、美しいです!

 

加熱して丸くなったナンプラーは、出汁のような深い旨み

下条さん:そろそろひっくり返して6分経ちましたね。では大皿に盛り合わせましょう。刻んだパクチーをふわっと載せて、できました!

 

谷井:わあ、上品な雰囲気ですね!

 

下条さん:では、いただきましょう。

 

谷井:美味しいです!豆板醤が入っているといっても、辛すぎず、優しい味わいですね。

 

下条さん:ナンプラーのクセの強さもあまり感じないないですよね。加熱することで味が丸くなって、出汁を使ったような味わいになります。

 

谷井:たしかに出汁のような旨み、わかります!最初に炒めたからでしょうか、大根がいい具合に甘く煮えていて。

 

下条さん:そうですね!案外クセがないでしょう?

 

谷井:はい!クセを感じないです!ビールにも合いそうですが、これご飯にも絶対合いますね。私も家で早速作ってみようと思います!

 

−−−−−−−−−−

「エスニックブリ大根」「どこよりも細かい」レシピ

<材料 2人分>

・ブリ切り身 2、3切れ(200g)
・大根 6㎝
・おろしにんにく 小さじ1/2
 おろししょうが 小さじ1
・豆板醤 小さじ1/2
・ごま油 大さじ1
・a 
 水  250㏄
 ナンプラー 大さじ2
 みりん  大さじ2
 酒、砂糖  各大さじ1
・香菜 適宜
・塩 少々

<作り方>

①大根は1.5cmの厚さのイチョウ切りにする。フライパンに水と大根を入れ、蓋をして強火で5~6分茹でる。竹串や箸がスーッと通ったら取り出す。

◎どこよりも細かいレシピポイント 
・大根は1.5cmの輪切りにしてから薄く皮を剥き、4等分する
・茹でる水の量は大根がかぶるぐらい。多すぎると沸騰までに時間がかかる。
・水から茹でると、外側だけ煮崩れることなく、中まで均一に火が通る
・大根の厚さが薄めなので、強火で茹でてOK。時間短縮になる

 

②ブリに塩を振って5分おき、出てきた水分を拭く。続いてブリを①の湯に加え、弱火で表面が白くなるまでサッと両面を茹でる。流水で洗って水けを拭く。

◎どこよりも細かいレシピポイント 
・塩は上から振り、ブリになじませてから5分置く。水分と一緒に臭みも抜ける。
・ブリは他の魚と比べて臭みが出やすい。下茹でとその後の流水で洗うことを省略しない。

 

③フライパンにごま油をひき、にんにく、しょうが、豆板醤を中火で炒める。香りが出てきたら大根を加えてザっと炒め、油がなじんだらaを加える。

◎どこよりも細かいレシピポイント 
・ナンプラーはニョクマムで代用可能。
・豆板醤は、赤唐辛子でもいいが、豆板醤の方が深みのある辛さとなる
・砂糖は、白砂糖よりきび砂糖を使う方がコクと深みのある甘みが出る
・辛みのある調味料やスパイスだけ先に炒めると、とんがった刺激が丸みに変わり、味わいに差が出る。
・大根を炒めるときは、大根に油を絡ませる感じで炒める
・水は250cc。きちんと計って入れる

 

④沸いてきたら蓋をして、弱めの中火で5分煮る。

◎どこよりも細かいレシピポイント 
・蓋をすると大根に早く味が入る
・煮汁が少なめなので、途中で一回上下を返す

 

⑤ブリを加えてクッキングシートで落し蓋をして、弱火で6分、返して6分煮る。香菜を刻んで添える。

◎どこよりも細かいレシピポイント 
・大根が煮上がる一歩手前でブリを入れる
・落し蓋はクッキングシートのほか、木蓋やステンレスのものでもよい。
・落し蓋をすると、対流が起きてまんべんなく煮える。ブリの臭みが抜ける
・火加減は、強すぎると表面が固くなりやすく、弱すぎるとブリの生臭さが出やすい。ふつふつとするぐらいに調整する。

−−−−−−−−−−

 

-infomation-
下条さんの新著「うちで乾杯 ほろ酔いつまみ」(成美堂出版)

今回ご紹介いただいた「刺身の柚子胡椒タルタル」のように、シンプルな食材の組み合わせが絶妙な、家飲みにぴったりのおつまみがたくさん紹介されています。分量と時間が的確で、手順が究極にわかりやすいレシピは「お酒を飲みながら、ほろ酔いでも作れる」ものばかり。ひとつひとつのレシピに添えられたPointは、下条さんならではの、より美味しく作るコツが詰まっていて、必読です。

ライター / 谷井 百合子

会社員からライターへ転向。腰の軽さで興味に乗っかる行動力で、ビジネストレンドやブックレビュー、食や旅にも題材を広げている。 目についた野菜を連れて帰り、レシピをググって調理するのが楽しいこの頃。

Mo:take MAGAZINE > Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ > [Vol.2]加熱で調味料のクセは抜ける!優しい味わいの「エスニックブリ大根」|Mo:takeクリエイターに教わる、どこよりも細かいレシピ

Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

Mo:take MAGAZINEは、
食を切り口に “今” を
発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、
その時、その場所は、
より豊かになるはず。

みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

みんなとともに考えながら、
さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性を
きりひらいていきます。

さあ、いっしょに たべよう

OTHER SERVICE

様々な形で「食」が生む新たな価値を提供します。

ブランドサイトへ