
懐かしい“おじいちゃんの味”
−−店内に入ると食の本ばかりで圧巻ですね!見たことのない本がたくさんありワクワクします!お店についても後ほどお聞きしたいのですが、本日は、関さんご自身のことからお話を伺っていきたいと思います。
関さん:よろしくお願いします。
−−こんなに個性豊かな本を集められているのを見ると、関さんは小さい頃から食や本には興味のある少年だったんでしょうか?
関さん:実は、全く興味がなかったんです。小さい時は保育士だった母親に、よく絵本の読み聞かせをしてもらっていたんですけど、小学校に入ってからは全くと言っていいほど本に触れることはなかったんです。
食の好みも偏っていて、チョコレートと蕎麦が好きな子供でした。卒業文集を見返すと、「そばが好き」と書いてあるぐらい蕎麦が好きでしたね!
今思い返せば、おじいちゃんが家の近くのお蕎麦屋さんに、よく連れていってくれてたんですよね。そこでおじいちゃんと一緒に蕎麦を食べていたから好きになったんだと思います!その中でも「ざるそば」が好きで、上にかかっている海苔も好きでしたね!
−−なるほど!おじいちゃんとの思い出がそのまま好きなものになったんですね!その他、好きなご家庭の料理はありましたか?
関さん:そうですね。家で食べるものとしては、おじいちゃんがつくる納豆巻きが好きでした。納豆をかき混ぜて、それをちょっと厚みのあるパリっとした海苔に乗せて食べるだけなんですけど美味しいんです。あと、スルメを焼いたものもよく作ってくれました。スルメって、マヨネーズと七味を付けて食べることが多いと思うんですけど、うちのおじいちゃんはちょっと違って、、、
醤油と味の素をかけるんですよ!それがもう僕としては凄く美味しくて大好物で、今だに自分でも作ります。
−−いやぁ美味しそうですね!おじいちゃんの味が好きだったんですね!おじいちゃんは、お料理がお好きだったんですか?
関さん:小さい時に亡くなってしまったのであんまり覚えてないんですけど、お酒が好きで、よく飲んでいた記憶があるので、今思えば、多分自分の好きな酒のあてをよく作って、少し僕にくれていたんじゃないかなと思ってます(笑)。

映画や音楽に惹かれ、浸っていた学生時代
−−幼少期は食も本も特別に興味があるというわけでもなかったようですが、関少年はどんなことに興味を持ってたんですか?
関さん:そうですね、高校生の頃に、映画と音楽が好きで、中古のCDや映画のDVDを探すためにレンタルショップにずっと入り浸っていたんです。
当時、定期圏内の駅近くにあったDVDのレンタルショップでは、1,000円で借り放題のサービスをやっていて、よく通ってたんです。その店舗は、タイトルを、あいうえお順で並べるだけじゃなくて、監督ごとにまとめたり、アカデミー賞受賞作だけを置くコーナーがあったり、並べ方にちょっと工夫があったんですよ。それが面白くて、もう一気にはまってしまいました・・・!
映画を見ている時間よりも、「今日何見ようかな」と選んでいる時間の方が長くて、それがとても楽しかったんです。そこでの体験が、“そういった時間を楽しめるような店舗を作りたい”って思ったことに繋がっているかもしれないですね。
−−確かに!選ぶのが楽しいという感覚はこの「皿書店」にも通じる気がしますね!ちなみに当時は、どんな映画を選んでいたのか覚えていますか?
関さん:最初にハマったのは、カンヌ国際映画祭で受賞歴もあるフィンランドのアキ・カウリスマキ監督作品ですね!その他にジム・ジャームッシュも好きでした。かっこつけているわけではないんですが、どちらかというとメジャー作品よりもミニシアターでやっている映画の方が好みでした(笑)。
その当時、「みんなと違うものが見たい」という想いやこだわりはもっていたかもしれません。
−−その「みんなと違うものが見たい」って感覚すごくわかります!(笑)ちなみに音楽もお好きなんですね?
関さん:そうですね!ギターも始めて、やっていたので、音楽をキッカケにいろいろなカルチャーに触れていきました。周りの友達たちが、流行りの音楽などを聴いてた中で、ディープ・パープルをはじめ、イーグルスなど70年代のロックが好きで、たくさん聴いていたんですが、少し周りとは違ったアンテナを張っていたからなのか、高校時代は、自分が本当に好きな映画や音楽の話をできる人は友達や周りにいなかったんですよね。
−−そうなんですね。だから、自分が聴いてみたい、見てみたいっていう作品を、レンタルショップや古本屋で見て探すことが楽しくて、インスピレーションを得ていたんですね!

ふと訪れたメキシコで出会った「人」と「食」
−−色々なカルチャーに出会い、体験した高校生活を経て、大学生活が始まってからは、高校時代と比べて興味の対象は変わりましたか?
関さん:高校時代に引き続きカルチャーを吸収し続けているような感じでしたね。大学時代に始めたことといえば、海外へのバックパッカーですね!たくさんのいろいろな映画を見ていると、実際に「映画の舞台の土地に行ってみたい!」と思うようになったんです!
−−分かります!映画の世界を実際に肌で感じたくなりますよね!実際に、どんな映画の影響を受けて、どんな場所に行きましたか?
関さん:僕の好きな監督が、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』という、キューバの伝説のミュージシャンを描いたドキュメンタリー映画を撮っていたんです。その作品を見て実際にキューバに行ってみたりしましたね!
−−かなり遠くまで旅をされたんですね!ちなみにバックパッカーの時には何カ国ぐらい行ったんですか?
関さん:20カ国くらいだと思います。1度に4カ国ぐらい周るみたいな感じで行ってました。東南アジアに行ったら、1ヶ月くらいでラオスとかタイとベトナム、カンボジアの4カ国を訪問するイメージですね。まとめて海外にいる時間をとって、日本に帰ってきたらバイトしてお金を貯める、その繰り返しのスタイルでした。
−−すごいですね!そんな20か国に行かれた中で1番楽しかったのはどこですか?
関さん:ダントツでメキシコですね!めっちゃ面白かったです!治安は相当悪いと思いますが(笑)。
−−どうしてメキシコに行かれたんですか?
関さん:メキシコには、キューバに行く中継点として、どうせだったら1週間くらい滞在しようと思って滞在したんです。
現地の大学生にずっとアテンドしてもらいながら、いろいろな街に連れて行ってもらいました!すごく景色が綺麗なグアナファトとか、街全体が世界遺産になっているサン・ミゲル・デ・アジェンデとか、いろいろな場所に連れて行ってもらえて総合的に良い旅になり、とても印象に残っています!
−−メキシコがダントツで良かったと感じる理由はなんですか?
関さん:人ですね。メキシコの人って、人との距離が近くてプライベートに踏み込むような印象もあるんですけど、その代わりに、オープンでフレンドリーで日本人のようなベールをあんまりかぶってないんですよね。人間味の部分が頭ひとつ抜きん出ているような感じがしたんです!(笑)

−−良い意味で日本人との違いを感じたわけですね!メキシコといえば美味しいものがたくさんあるイメージですが、現地で印象に残っている食事はありましたか?
関さん:これは全然珍しいものじゃないんですけど、現地のメキシコ人大学生が通っていた大学の学食に連れて行ってもらったんです!そこで食べた現地の料理が1番印象深いかもしれないです!
海外によくある、ひよこ豆のスープや人参のラペがワンプレートになっているもので、「これがメキシコで1番安くてうまい食べ物なんだよ」とアテンドしてもらってた現地の大学生に教えてもらったんです。しかも日本円でたった150円なんですよ!現地ではごく普通のランチだと思いますが、僕は本当に美味しいなと思ったんです!そのシチュエーションと一緒に1番印象に残っていますね。
−−現地の人が本当に美味しいと感じているものを同じように味わえるって貴重な体験ですよね!その他の国々に行った際にも、その国や土地ならではの食体験にもこだわったんですか?
関さん:海外に行くときには、僕はガイドブックに載ってないような、ちょっとマニアックな現地でしか体験できないような食体験をしたいという欲があるんです!そういった食体験が紹介されている現地のZINEなんかも買って探してましたね。
−−食もその国のカルチャーのひとつとして楽しんでいたんですね!

映画から読書の世界に足を踏みいれたコロナ禍
−−以前から映画や音楽、そして海外など様々なカルチャーには興味をもたれていたようですが、関さんの本への興味は、いつごろから出てきたんですか?
関さん:本に興味を持つようになったのは、コロナ禍に入ってからですね。僕はもともと大学を卒業したら海外に留学しようと思っていたんですけど、出発の2週間くらい前にちょうどコロナ禍が始まり、空港が閉鎖されることになりました。
留学ができなくなってしまい、留学する予定だったので突如やることもなく、ものすごく時間があったので本を読もうと思ったんですよね。
それまでにも、本にチャレンジしようと思ったこともあったんですよ!でも、僕は没頭しながら集中して本を読めなかったんですよね。映画とか漫画は見ているだけで情報が入ってくるけれど、本って想像力が必要なので集中して読まないと、どうしても頭の中でシーンを再現できなかったりするじゃないですか?でも、コロナ禍で時間があったから、自分なりにゆっくり集中して読むことができたんです。

本の魅力に気がついた100冊目
−−なるほど!どちらかというと読書が苦手だった関さんがその時、読み切った本が気になりますね!どんな本だったんですか?
関さん:まずは映画が好きなので、好きな映画の原作からチャレンジしてみようと思って、上下巻でしっかりと量があるんですが、ジョン・アーヴィングっていうアメリカの作家の『ホテル・ニューハンプシャー』という小説を読んでみました。
好きな映画の原作っていうこともあってか、その本は途中から読んでいる感覚がなくなって、「あ、読書ってこういう感じか」と初めて実感したんですよね。
ジェンダーや人種差別、アメリカの中絶問題などの要素が入っている作品で、その人の作品が面白くて、そこからは本をいろいろと読みましたね。
−−その作家さんの本がきっかけとなって、これまでにない新しい読書体験を味わうことができたんですね!
関さん:そうですね。ちょうど本にはまった時期に又吉直樹さんがYouTubeの動画内で「誰でも100冊くらい読んだら本が好きになる」という言葉を言われてたんです!それを聞いて、そのときまでに読んでいた冊数を数えてみようと思って、数えたら本当に100冊目くらいだったんですよ!
それより前は、難しくて読めない本をいっぱい読んで、ただ文字を追うだけの読書をしていたんです。
だから、「1冊だけで判断しないで、いろんなジャンルや作家の本をまんべんなく読んで、100冊あたりで本を読むことにハマるんじゃないか」と又吉さんが言っていたことを、本当にそうだなと体験しました。
−−実際に読めるようになると、昔に読んで難しいなと思った本をもう一度読んで、「なるほど」と新しい発見があったりするんじゃないですか?
関さん:あ、それはないですね(笑)。読んでみようとチャレンジはしたんですよ、でももう一度読んだとしても、難しい作品って本当に理解できなかったです!(笑)

レンタルビデオ屋を断念して、本屋へ
−−読書の面白さに目覚めたから、本屋をやりたいと思われたのですか?
関さん:実は、はじめにやりたいと思っていたのは本屋ではなく、レンタルビデオショップだったんです。コロナ禍で留学が中止になり、ぽっかり時間ができたときに本も読んでたんですが、他にも「何かやってみよう」と思ってました。
そこで映画が好きっていうのもありましたし、マニアックな映画ばかり集めたレンタルビデオショップをやりたいと考えてたんですよ!
−−本屋じゃなかったんですね!でもそれがなぜ本屋になったんですか?
関さん:レンタルビデオショップをやりたいと思いましたが、何から始めたらいいか分からなかったので、まず始め方を教えてもらおうと思って、レンタルビデオ協会に「レンタルビデオ店を始めるには、どうすればいいですか?」と連絡してみたんです。
そしたら、なんとレンタルビデオ協会から「今からレンタルビデオ屋を始めるのは、やめたほうがいいですよ」って返事がきました(笑)。そのメール、今でも残っています!
−−直々に止められてしまったんですね!!(笑)
関さん:すでにサブスクが流行っていましたしね。でも、その当時は、サブスクでは比較的メジャーな作品が中心だったんですが、その2~3年後くらいにはいろいろマニアックなB級映画もサブスクで見られるようになっていたので、協会の方のおっしゃる通り勝算はなかったですね(笑)。
そんな経緯もあって、ちょうど本を読み漁っていた時だったので、レンタルビデオ屋がダメなら、じゃあ本屋をやってみようと考えたんです!逆に止められなかったら今のこの『皿書店』はなかったかもしれません・・!
−−なるほど!予想外のエピソードがたくさん出てきますね!
映画や音楽の棚を眺めるうちに気づいた“作品を選ぶ楽しさ”。異国で出会った人々や食文化。「100冊目で本が好きになった」という実体験。そのすべてが、のちに関さんが『皿書店』を創るための感性と想像力を育てていったように思えます。
Vol.2では、どのように『皿書店』のオープンに至ったのか、関さんのこだわりや思い、今後の展望についてお届けします。“食の本屋”という新しい文化をつくる挑戦、その裏側をぜひお楽しみに!
– Information –
皿書店
所在地:東京都世田谷区赤堤2丁目2−8 第13通南ビル 102号室
営業時間:平日14:00~19:00、土日祝13:00~19:00
定休日:木曜日