「その感覚、僕にはなかったな」と言わせた、スイカの冷製スープ
ーお二人は一度、ケータリングのディレクションを一緒にされたことがあるんですよね。
坂本:昨年の秋、天王洲で開かれたEDWINの展示会レセプションのケータリングを下条さんと僕とでディレクションしました。Mo:take MAGAZINEでもお馴染みのフードデザイナー、蓮池陽子さんからお互いお声かけいただんです。
エドウィンの縫製工場を再現するということで、テーマがクラフトマン。そして、工場のある秋田と青森にちなんだ料理を、ということだったので、とりあえず最初のブレストで、地域の食材をピックアップしていきましたよね。
下条さん:エドウィンらしさということでハンバーガーも出しましたね。秋田の調味料、しょっつるを使った比内地鶏の照り焼きバーガーにしたんですよね。あと、スモークサバのいぶりがっこ手鞠ずしとか、きりたんぽ煎餅とか、ガスパチョみたいなスイカの冷製スープとか。
坂本:それですごく覚えてるのが、ブレストでスイカをテーマにしようとなった時に、下条さんがスープにしましょうかって提案してくれたんですよね。ああ、僕にはその感覚なかったなって。下条さんが今までやってきた要素を掛け合わせて出来上がったスープなので、すごく印象に残っていますね。
50人と200人では、野菜の切り方からすべてが違った
下条さん:私はもう、坂本さんのケータリングがプロ中のプロという感じで、ものすごく勉強になりました。私がやってきたケータリングは多くても50人だったので、それと200人のケータリングでは作り方って全然違うんです。
野菜の切り方、加熱の仕方、調味料の入れ方もそうですし、このメニューだったらここまで仕込みをやっておけばいい、という段取りについても、使用する資材についてもそうでしたね。ああいうことって、個人で知ることには限界があるので、いろいろな人と組むことで本当に勉強になるなあって思いました。
坂本:ケータリングって、大規模だからできる見せ方もあるじゃないですか。テーブルも大きいし、どう存在感を出していくかのアイデアもMo:takeが得意なところなので、お互いにないものを補い合ってできたイベントでしたよね。
僕らが初めてケータリング業界の展示会に出展した時って、業界に衝撃が走ったんですよ。搬入する什器の数も、規模も、セッティングにかかる時間もそれまでの業界の常識より全然少ないのに、これまでの業界の常識を覆すような斬新な見せ方をして。でも、一番好評だったから「やったった!」って(笑)
下条さん:その様子、ぜひ見てみたかったですね。
下から積み上げるか ↑ 完成形からおろしていくか ↓
ーケータリングでのアイデアもそうですし、普段のメニュー作りでもそうですが、新しい料理のアイデアはお二人ともどこから湧いてくるのでしょう。
坂本:こういうのを食べてみたい、作ってみたい、というのが一つと、これをお客さんに出したら喜んでくれるかな、こんな反応してくれたら嬉しいな、という第三者的視点を大事にしているかな。でも、自分が楽しんでるだけなんですよ(笑)
下条さん:私も基本は一緒だと思うんですけど、美味しさと同時にこういう組み合わせや味付け、調理方法があるんだ、という驚きを感じてほしいというのがあって。例えば、一つの素材があった時に、ちょっと試食して、そこから発想を膨らませていきながら、味と食感、香りと色、見た目を一緒に考えていくという感じですね。
和食で使われている素材だったら、ちょっと洋風にしたら面白いんじゃないかな、とか、この食材を加熱するとこんな感じになるなら、アジア風に振っていこうかな、とか。そこにお客さんの驚きが感じられるように考えていきますね。
坂本:これ、あんまり人に話したことないんですけど、僕は設計図を書いて下から積み上げていくんじゃなくて、完成形から下に下におろしていく。こういう香りを出すためにはどうしたらいいのか、とか、こうするためにはどうしたらいいのか、とか。軌道修正が必要になれば、少しずつ変えていくので、最初に思ってたのとは違う完成形ができるかもしれないし。
ちょっと、料理人っぽいこと言ったけど(笑)
下条さん:私の場合はそこまで完成形は頭に描いていないんだなと思います。この素材にこれを加えたら合うかも、という積み重ねというか。
坂本:すげー勉強になる。
下条さん:食べるのが好きで、食いしん坊なんですよ(笑)
次回は9/15(火)に公開予定です。下条さんが料理家・フードコーディネーターの道を志したきっかけや、料理を作る時の二人のまったく違う取り組み方についてお伝えします。(つづく)
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