SERIES
コーヒースタンドを起点とした場づくりの舞台裏
2023.07.06. | 

かわいくておいしいから、もっと知りたくなる。お菓子でつながる福祉の世界

障がいを持つ人の自立を「お菓子づくり」から支えたい。彼らの表現を発信できる場をつくりたい。そんな思いから2020年に立ち上がったsweet heart projectとSWITCH STAND HATSUDAIとのコラボキャンペーンが開催されました。

ドリンクを頼むとついてくる、かわいいお菓子は?

6/5から6/16にかけて、障がい者施設のお菓子作りを応援するプロジェクトsweet heart projectとSWITCH STAND HATSUDAIのコラボキャンペーンが行われました。
キャンペーンは、ドリンク1杯につきひとつずつ、sweet heart projectの焼き菓子をプレゼントしてもらえる、という内容です。

 

焼き菓子には一つずつメッセージカードがついています。プロジェクトのことや、お菓子の生まれた背景を知ることができるこのカードは、POP UP支援サービスのonestopがクリエイティブ開発したものです。

期間中限定で、ドリンクのカップもコラボ仕様。障がいがある方のアート作品が、カップをカラフルに彩っていました。動物や乗り物、数字など、モチーフはさまざま。自由な着想で描かれたイラストに目を惹かれます。

 

地域とのつながりから生まれた、あたたかく優しい味わい

sweet heart project実行委員長の東光篤子さんに、今回のコラボレーションについて伺いました。

−−まずは、sweet heart projectさんのことを教えてください。

東光さん:sweet heart projectは、障がい者施設のお菓子づくりを応援するプロジェクトです。ふだんは主に、企業さまの営業用の手土産用や、イベント時のお土産用のお菓子を販売しています。

障がいのある方の自立を支える「就労継続支援施設(B型)」の8割近くがお菓子をつくって販売しています。ところがコロナ禍で、街のイベントや福祉祭りのような場が激減してしまって‥‥。どうにかして販売を継続してメンバーさんの自立を支えたいという施設さんと、企業活動を通じて社会貢献をしたい企業さんがつながるお手伝いをしたい、と団体を立ち上げました。

 

−−さっきかぼちゃのクッキーをいただいたのですが、ほのかにかぼちゃの香りがして、とても優しい味でした。

東光さん:そうなんですよね。施設さんの多くが素材にこだわっていて、それに、どことなく、家庭でつくるお菓子のような、温かくて優しい味がしますよね。

かぼちゃのクッキーは、施設さんの自家菜園で採れたかぼちゃを使っているんです。他のお菓子も、地元産の小麦粉を使っていたり、地域のかたと一緒にレシピを考えてつくっていたりと、地域の中に溶け込んで、地域に愛されているお菓子が多いです。

 

お菓子やアートを通じて、彼らのことを知ってほしい

−−期間中限定のコラボ仕様ということで、カップに貼られたラベルも目を惹きますね。このイラストも、施設のみなさんの作品ですか?

東光さん:そうなんです。もともとお菓子のラベルとして使わせてもらっていて、全部で50種類以上あります。プロの芸術家によるアートともまた違うエネルギーや温度を感じる作品ですよね。

皆さん、こうやってラベルになるとすごく喜んでくださって、小さいけれど、ひとつの表現の場になっていると感じます。ラベルになって、日常的に目にする形になることで価値が生まれてくるんだと思うんですよね。

 

−−カフェとのコラボレーションも、いつもとはまた違う表現の場になったんじゃないでしょうか?

東光さん:滞在時間の長いカフェは、情報に触れていただける時間も長い。ゆっくり価値を伝えられるんですよね。

それに、こんなおしゃれなカフェでやるんだよ、と伝えたら、みんなすごく喜んでくれて。「嬉しい、行きたい!」って(笑)。そうやって自分たちの活動を知ってもらえるというのがやっぱり嬉しいんだと思います。

ふだんは企業さんに伺って私が施設のことや、商品の背景をご説明していますが、今回はカフェで、伝えたいこともこんなに素敵なカードにまとめていただきました。個人のお客様に知っていただくきっかけになったのも良かったです。

 

「福祉」から入るわけじゃない。街のカフェだからできるつながり方

今回のコラボレーションを企画したonestopの小倉にもお話を伺いました。

−−実際の反響はいかがですか?

小倉:ただ召し上がっていただくだけでなく、スタッフに感想を言ってくださる方が多かったです。「おいしいですね」とか、「これはどこかで販売しているんですか?」とか。中には「このプロジェクトのことをもっと知りたいです」と言ってくださった方もいて、sweet heart projectのサイトをお伝えしたりもしました。スタッフもそうやっておつなぎできたことをとても喜んでいました。

カップがかわいいからとカップを手に持って写真を撮る方や、お菓子を口にした後、気になってメッセージカードを見てくださる方も多かったです。

「ハンディキャップをもった人たちの作品」というところから入っているわけではないんですよね。このカップかわいいな、とか、お菓子がおいしいな、というところから入ってくださっていて、onestopが「知っていただく」というところのきっかけとして作用できたのでは?と思います。

 

東光さん:それはとても嬉しいです!たとえばこのカードひとつとっても本当に、プロジェクトの魅力をよく伝えてくださっているなと思います。「なんだろう?」と気になって、思わず手に取りたくなる温かみや優しさが感じられる。だから多くの方に関心を寄せていただいたんじゃないでしょうか。

SWITCH STAND HATSUDAIさんとのコラボレーションで、また新しいつながり方が生まれました。障がいをもつ人の中には、お菓子作りの他にも藍染などの手仕事や、いろいろな才能、技術を持っているかたが多いです。この先も、そうしたみなさんの才能と社会がつながるお手伝いをしていきたいと思っています。

 

活動を通じて出会った人たちの顔を思い浮かべるようにして話す東光さん。東光さんの知る、たくさんの才能や魅力をもつ人たちのことを教えてもらえる場が、また新たに生まれそうです。

 

– Information –

sweet heart project

SWITCH STAND HATSUDAI

 

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

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