2020.08.25. | 

[Vol.1]学生たちと考える、withコロナ時代のフードサービス

「コロナ禍のフードサービスを考えて提案してください。」
そんな課題に取り組む学生たちがいます。
新宿にある東洋美術学校クリエイティブデザイン科 高度コミュニケーションデザイン専攻の授業の一環として、Mo:takeの新しいサービスをデザイン的な視点から企画提案する連続ワークショップが行われていると聞き、取材してきました。

ケータリングを離れてもいい。新しい食のあり方を考えてほしい。

集まったのは、グラフィックやエディトリアル等、様々な領域でデザイナーを目指している学生のみなさん。授業では、ユーザーの体験からデザインを考えていく「エクスペリエンスデザイン」について学んでいるのだそうです。

講師の株式会社OVERKAST代表の大林寛さんからの概要説明の後、Mo:takeの小野から事業についての説明がありました。

Mo:takeが「食と体験」をテーマとした事業であること。ケータリングを中心に、様々な場所で、おいしい食事と体験を提供してきたこれまでのプロセス。そして、コロナ以降、ケータリング事業自体がかなりの難しい局面を迎えていること。

具体的な数字を挙げてのリアルな現状の話を、皆、静かに聞き入っています。

「ぼくらの会社も、これまでいろんなピンチを新しいアイディアで打開しながらここまで来ているんです。だから、『ケータリングをどうするか』といった問いからはいったん離れてもらってもいい。枠を外したところで、新しい食のあり方を考えてもらえたら嬉しいです。」と、小野は期待をにじませます。

学生たちが気づいたのは、「食の孤独」と「フードロス」

2チームに分かれ、ブレインストーミングに入りました。
目の前には模造紙とふせん。それぞれ、思いついたことを話しながらふせんに書き込んでいきます。

ひとつめのチームは、コロナ下の自分たちが今まさに直面している、身近な食体験を話し始めました。

「友達が食べているものを『ちょっとちょうだい』って分けてもらうことをしなくなったよね」
「大皿料理で取り分けたりもしなくなった。全体的にバラバラになっている感じで、一緒にいても一体感を感じられないよね」
「一緒のことをするってけっこう大事だったんだなって思う。食が孤独だよね、今。」

もうひとつのグループも、コロナ禍で何が起きたのかという問いから話し合いを進めているようです。

「飲食店が閉まっちゃって、地方では食材がかなり余ったんだよね。それを集めて売るのはどうだろう。今日はこの地域の食材です、みたいに」
「でも、それならインターネット販売の方がいいんじゃないかな」

試行錯誤しながら、「これがあったらいいな」というアイディアを少しずつ言葉にしていきます。

体験を「モッテイク」、オンラインで「一緒に」。自らの体験から見つけたアイディアの種。

およそ1時間のワークの後、各グループの途中経過の発表に移りました。

「コロナでなかなか外出できない、その場所に行けないという背景がある中で、食の体験を『モッテイク』ことを考えています。特定の地方にしかない食品、漫画にしか出てこない料理を自宅に持っていって体験してもらう仕組みがあったら面白いんじゃないかと思っています。」

「家での食事やzoom飲みになって、誰かと一緒にメニューを眺めたり決めたりする楽しさがなくなったと思うんです。それと、飲みをしようとしたときに準備と片付けが寂しい。そこで、一緒に料理できるサービスあったら面白いんじゃないかと思いました。レシピと食材をキットにして送って、料理をしながら話して食べられるサービスを作りたいです。」

小野からは、
「どちらも面白いアイディアだと思いました。自分たちが考えていたこととも重なる部分があります。この先が楽しみです。」
とフィードバックがあり、ワークショップは終了しました。

これから何度かの授業の中でワークショップや作業の時間を取り、1ヶ月後に最終的なデザイン提案のプレゼンとレポート提出が行われる予定です。

「それを生業としている人」の代わりに考える体験を

7年ほど前から企業と連携してワークショップを行っている大林さん。学生たちが企業に向けて企画提案を行う、授業の意図について伺いました。

 

大林さん:デザインの概念を頭で理解するだけでなく、実体験してほしいと思って毎年企画しています。企業さんが何に困っているのか、生の声を聞くのは学生にとって得難い機会になります。「それを生業としている人」の代わりに考えるって、本来とても大変なこと。そのリアルさを大切にしたいと思っているんです。

 

とはいえ、今年の春はちょうどコロナ騒動のさなか。依頼についてはかなり悩んだのだそうです。

 

大林さん:まず、そもそもこの状況で頼めるのか?と思ったんですよね。それどころじゃないだろう、見送った方がいいのかもしれない、と思って途中まで延期のメールを書きかけてたんですけど、そこで、いや待てよ?と。

 

大林さんは、このコロナ下の状況こそが、学生にとって大きな学びになるのではないかと気づきます。

 

大林さん:こんな状況だからこそ、今まで彼らが学んできたことが生きて、結果を出せないとダメなんじゃないかと思ったんです。ぼく自身が大事にしているリアルさとか、社会でサバイブすることの感触をつかむためには、これはピンチではなくチャンスだ、と。

デザインを考える上での強度を身につけてほしい

書きかけのメールは「依頼」の内容となり、改めてMo:takeに届きました。受け取ったMo:takeでもさっそく社内で検討。「ピンチをチャンスに」という、Mo:take自身の道のりとも重なる大林さんたちのチャレンジに共鳴する形で、今回のワークショップが実現しました。

コロナの影響は教育機関にも及んでいます。大林さんの学校でも、4月当初は授業ができず、学校が再開したのは6月、オンラインでのスタートとなりました。イレギュラー続きの中でもワークショップ実施に踏み切った大林さん。そのねらいはどこにあるのでしょうか。

 

大林さん:講師としては、学生たちが食いっぱぐれないことをまず考えています。座学でデザインの原理を学び、ワークショップで体験する。その2つがうまく重なって、身体感覚になっていけばいいと思っています。それがデザインを考える上での強度になっていく。生徒たち自身の個性を身体化していってほしいと思っています。

 

今回のワークショップ、そしてその後のプロトタイピングを経て、どのような最終プレゼンがされるのでしょうか。楽しみです。(つづく)

– Information –
学校法人 専門学校
東洋美術学校
東京都新宿区富久町2−6
https://www.to-bi.ac.jp/

八田吏

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。