2019.07.31. | 

[Vol.2]食材に愛着を持って向き合うことを文化に ーTUMMY株式会社・阿部成美ー

野菜に紐づくストーリーと共に、旬の野菜をお届けするサービス「yasaicco」を通じ、食材への愛着を持ってもらう仕掛け作りに取り組む阿部さん。このサービスを始めようと思ったきっかけや、野菜の魅力に引き寄せられたきっかけは何だったのでしょうか。どうやら大学生の頃にサークル活動として始めたことが、今の事業にも大きく関わっているようです。

実際に足を運んでみて気付かされた、畑にあふれる魅力

阿部さんもともと食べることが大好きだったので、大学では農学部に進学しました。学問として追求しようと思ったのは、解明したい食べ物の謎が2つあったからです。1つは、中学校の家庭科の授業で習った「地産地消」という言葉。山口県の出身で、そこらじゅう畑だらけのところだから、なんで地産地消なんて言うんだろうって思いました。でも、スーパーに行くと、たしかに地元のものが買いにくいことに気づいたんです。もう1つは高校の地理の授業で習った、日本は食料自給率が低いにも関わらず、輸入量の3分の1に相当する量を廃棄しているという話。足りないから輸入しているはずなのに、なぜ捨てているんだろう?と不思議に思ったんです。

 

そうして大学に進学した阿部さんが、食糧廃棄について学んで知ったのは、規格外の野菜が、形が悪いという理由だけで畑に放たれているという事実。

 

阿部さん畑に放しても、土に返って肥やしにはなるんですよね。そう考えると、今度は、そもそもそれが食糧廃棄として問題なのかという疑問が沸いてしまって。これは現場を見るしかないと思って、畑に行ってみたんです。そうしたら、「ちょっと待って、そんなことより規格外の野菜って、めっちゃかわいいやん!」ってなって(笑)。そこで、同じく食糧廃棄に関心のある友人と一緒に仲間を集めてサークルを作り、規格外野菜を使ったお料理を提供する「でこべじカフェ」というカフェを始めました。規格外だからダメなのではなく、女子大生の自分から見たら、こんなにかわいいんだということを提案したかったんです。厨房は料理の得意な仲間に任せて、私は接客専門で、でこべじちゃんのことや、畑のことをお客さんに話していました。やっていることは今とあまり変わっていないですね(笑)。

 

カフェで使う野菜を仕入れるため、畑に度々訪れるようになった阿部さんは、畑の魅力にどんどん惹かれていきます。

 

阿部さん畑には、自然に戻ってリトリートされるような、空間的な気持ち良さがあるし、作物も育つ、とても魅力的な場所なんです。それに、自然という、どうにもならないものを相手に生きている農家さんも、考え方が謙虚で格好いいと思いました。農業というと、後継者がいない、汚い、給料が低いとか、ネガティブなイメージが強いんです。農業に関心の高い仲間内でも、どうしようもならないから、どうにかしようみたいな話をたくさん聞いていたのですが、いやいや素敵じゃん!と気づかされました。だめなものをよくしなければ、ではなく、魅力を上手く伝えられていないだけだから、上手に伝えていきたいと思ったんです。

必要なのは、食べる人が畑に関心を向けたくなるような仕掛け作り

そんな阿部さんが大学卒業後に就職先として選んだのは、大手の広告代理店。平日は会社員として、伝え方の修行をしながら、休日は、学生時代に農業系のサークル活動をしていた人の社会人サークルで、農業について議論する日々を送っていました。

 

阿部さんその社会人サークルで、いつの間にか「いかにだめな農家さんを支援するか」という話ばかり出るようになっていました。ある時ふと「畑に行ってただ感動していただけだったのに、いつからこんなに上から目線になったんだろう?」と思ってしまって。その時、作り手と食べ手がいるとしたら、自分の軸足が、作り手側ではなく、食べ手側だということに気づいたんです。作り手を支援するのではなく、食べ手が畑などに関心を向けたくなるような仕掛け作りが必要なんだと。それで、「いつかは農業のほうに……」と思っていた心にスイッチが入り、独立することを決めました。

 

その後、広告代理店から、女性が自分らしく働くことをサポートするベンチャー企業に転職し、会社の経営も学びながら起業準備。何からやればいいのかわからない中、まず頑張ったことは、twitterで自分の考えや価値観を発信することだと言います。

 

阿部さん転職したベンチャー企業で開催された、フリーランスや副業で仕事をしている女性向けの授業で、自分をブランディング化して仕事を取るためにはtwitterが大事だと聞き、やってみることにしたんです。幸い、始めてみたら意外とすぐに、バイブスの合う、共感し合える人が見つかったんです。独立するときは、この人とはいい仕事ができそうだな、という人が想像できている状態でスタートできたので、心強かったです。

自分の考えを臆せず発信することで、共感者も仕事も増えていく

そうして20191月に立ち上げた”TUMMY株式会社は、畑や農産物のブランド化をサポートするブランディング事業からスタートしました。

 

阿部さんTUMMYは、英語でお腹という意味の”stomach“の幼児語で、「ポンポン」のような意味です。畑に行って、本当に鮮度の高い野菜を食べた時の美味しさって、腹の底から「うまーい!」と飛び出すような感じなんです。そんな「お腹から感動する暮らし」をビジョンに、美味しいものを作る人の伝え方のパートナーとなって、より感動を増やしていこうと、農家さんや農業に関わる方々のブランディングをサポートしています。

 

起業当初から、営業活動は全くせず、元々の知り合いやtwitterで繋がった方から仕事が生まれることがほとんどだそう。

 

阿部さんたとえば、今TUMMYでブランディングを手がけているぶどう農家さんは、まだまだ駆け出しという段階で、twitterを通じて知り合った方です。畑に行かせていただいて、その人が夢に向かって努力している様子がものすごく格好よかったので、今から情報発信してファン作りをしていくのがブランディングになるから、一緒にやりませんかという提案をしたのが始まりでした。「素敵!」と思う農家さんをtwitterで見つけ、その人が共感してくれてるなと思ったら、その人の畑に行くようにしているんです。畑に行くと、その人の個性がわかるから。その人の「らしさ」を見つけ、「ここを発信したらもっと素敵だから、一緒にやりましょう」というような形で、積極的な営業活動はしなくても、業務自体は自分から仕掛けて始まることが多いですね。

 

ブランディング事業に続き、20194月に自社ブランド事業としてスタートしたばかりのyasaiccoは、「野菜がかわいい」という自分の無邪気な思いを前面に出したサービスなので、twitterでの発信には勇気が必要だったとか。

 

阿部さん本音を出すのが怖くて、リリース直前に寝込んだりしていました(笑)。でも、出してみたら共感してくれる人が多くて、勇気になりました。

 

次回は8/6(火)に公開予定です。今では、自分の無邪気な本音を発信することに怖さはなくなり、むしろ自分の考えを明確に打ち出すことで集まってくれる人がいると分かり、毎日ハッピーだと微笑みます。可愛らしい表情の奥に、芯の強さを感じさせる阿部さんは、今後どんな事業を展開していくのでしょうか。

(つづく)



– Information –
yasaicco

HP:https://www.yasaicco.com/

TUMMY株式会社

HP:https://www.tummy-inc.com/

 

黒木 瑛子

ライター / 黒木 瑛子

IT企業で営業職などを経験後、出産を機に、産後女性の支援事業立ち上げに携わる。その後、地域の子育て支援サイトの編集・ライティングや、コミュニティスペースでのイベント開催など、地域活動にも参画し、現在ライターとして活動中。仕事で知らない街に行くと、つい美味しいものを探してしまう食いしん坊。道の駅や物産店も大好き。