2024.11.12. | 

料理も実験みたいで楽しい!東大CAST宮﨑さんの好奇心と科学

いよいよスタートする食を科学の視点でわかりやすく伝える連載企画「美味しい科学」。今回の企画に科学の視点を持って協力してくれる東京大学サイエンスコミュニケーションサークル『CAST』の島倉さんと宮﨑さん。前回は、本編へ向けて、『CAST』のことや、島倉さんに科学に興味をもったきっかけなどを伺ってきました。Vol.2となる今回は、宮﨑さんが科学と歩んできた足跡をたどっていきます。

理科って楽しい!実験の考察レポートを褒められたことがきっかけ。

−−ここから宮﨑さんのお話も伺っていきたいと思いますが、改めて宮﨑さんが科学に興味を持ったきっかけを教えてください。

宮﨑さん:私は意外と単純なんですけど、小学校の理科の先生がすごく良い先生だったというのが大きく影響していますね。その先生は、私が長文で書いた理科の実験の考察を真剣に読んでくれて、すごい褒めてくれたんです。
もう、それがただ嬉しくて、それから、なんとなく理科って楽しいなって思うようになっていて、それが最初のきっかけになったんだと思っています。

 

−−なるほど、小学校の理科がきっかけですか!きっと真剣に取り組んだ分、先生に褒められた時の喜びも大きかったんですね!ちなみに、初めて科学という視点で何かを作ったり研究したのはいつ頃ですか?

宮﨑さん:小学校2年の時のセミの抜け殻の自由研究が一番最初だと思います。夏休みによく東京のおばあちゃんの家に遊びに行っていたのですが、私が当時住んでいた福岡と、おばあちゃんが住んでいる東京のセミの鳴き声が違うなと気づきました!

それをきっかけに、福岡で聞いていた「シャーシャーシャーシャー」という鳴き声はクマゼミで、東京で聞いた「ミンミンミン」という鳴き声はミンミンゼミだということがわかりました! そこで、そのセミの違いを比較してみたいと思って研究したんです!

でも実は、、、虫が苦手でセミそのものを触りながら観察をしたくなかったので抜け殻だったら触れると思ってアブラゼミ、クマゼミ、ミンミンゼミの抜け殻を比較したんです。そこで、クマゼミの方が抜け殻が大きかったり、色に違いもあることがわかりました。鳴き声が違うけど、抜け殻も違うんですよね。

 

−−セミの鳴き声から興味をもったんですね!それにすごいです!この絵も内容も!小学校2年とは思えないクオリティですね!その後も印象的な研究はありましたか?

宮﨑さん:印象に残っているのは中学に入って、夏の生物の自由研究で、お弁当箱の研究をしたんですよ。それは母に買ってもらった、わっぱのお弁当箱と今まで使っていた、プラスチックのお弁当箱での体験がきっかけでした。わっぱのお弁当箱で持って行ったご飯は、プラスチックのお弁当箱のご飯と比べて、食べる時にご飯がべちゃっとしてなかったんです。これがなんでだろう?って思って、それについて研究したんです。

 

−−やはり、セミの研究もそうですけど、その、なんで?っていう疑問や問いから「知りたい!」というきっかけが生まれるんですね!でも、なぜ生物の自由研究でお弁当箱を?

宮﨑さん:どうしても虫を捕まえるのが苦手なので、、、生物の自由研究どうしようってなったときに、昆虫に限らず、植物などの他の“生き物”でもいいじゃないかと思ったんです。でもこれ生物の自由研究になるのかなって不安なまま提出したら、先生に評価してもらえて、こういう自然科学系の研究が好きかもしれないって思いました!

 

−−生物の実験っていうと確かに「虫」を最初に思い浮かべるかも・・宮﨑さんの発想の豊かさが感じられるエピソードですね!

 

中学生の頃、新聞記事から着想を得て
醤油にモーツァルトの音楽を聞かせる実験へ

お弁当箱以外にも、お話を伺っていくと、その他にも実は中学校の頃からお醤油を自分で作る実験をされていたという宮﨑さん。その本格的な実験についてもお話してくれました。

−−お醤油の実験はどんなきっかけではじまったのでしょうか?

宮﨑さん:中高一貫の学校だったんですが、中3の夏までに卒業論文を書かないといけなかったんです。「何を書こう、どうしようかなぁ」って思っていた時に、通っていた小学校の目の前にあったお醤油屋さんのことを思い出して「あっ!これにしよう!」って思ったんです。このお醤油屋さんには、社会科見学に行ったことがあったので、漠然とお醤油に興味がありました。

テーマをお醤油にして、自然科学で卒論を何か書きたいなと思っていた時に、音楽を聴かせたワインについての新聞記事を見つけて、味噌や焼酎やお醤油などの発酵食品の中には、音楽を聴かせて作られているものもあるということが分かったんです。

「音楽を聴かせて醤油を作ったら本当に美味しくなるのか」っていうところに、私もすごく興味が湧いて実際にやってみることにしたというのが実験のきっかけですね。その後調べてみると微生物には耳がなく、音楽を聴いているわけではないとわかりました。音楽の振動が影響するのではないかと、実験では、醤油作りに関わっている麹菌と乳酸菌と酵母、3種類の微生物に音楽振動を与えることで増殖の仕方や発酵の働きがどうなるかを調べてみました。

 

−−醤油に音楽を聴かせる実験だったんですね!結果も気になりますねぇ、、ちなみにどんな音楽を聴かせてたんですか?

宮﨑さん:音楽は、モーツァルトですね!モーツァルトはよく赤ちゃんとかにも聞かせると良いとか、頭が良くなるとか言われているので。(微笑)

実験では、音楽を聴かせたお醤油、肩こりのときに使う低周波治療器をつけた醤油、とくになにもせずそのまま作ったお醤油の3種類で実験をしました。それぞれのお醤油を家族や友人に食べてもらってみたのですが、結論から言うと味の違いは分からなかったんですよね。

ところが、成分を調べてもらったところ、音楽を聞かせた醤油と低周波治療器をつけた醤油は、音楽を聞かせていない醤油と比べて、発酵する過程で微生物によって生み出されるアルコール成分の量が多いということが分かりました。

 

−−そうなんですね!こうした実験を通して見えてくることがたくさんあるんですね。

宮﨑さん:はい、他にも色々やったのんですが、やりだしたら止まらなくなってしまうほど知りたいことが多くて。(笑)もともとは醤油作って味の比較をして終わろうってつもりでいたんですけど、生物の先生にそれだったら研究にならないって言われたのも影響していますが、結果的に色々な実験ができて楽しかったですね!

学内外で表彰を受け、高校でも取り組み続けた醤油の研究。
発酵や微生物に興味を持つきっかけに。

−−その実験結果は、学内外で表彰されたんですよね。

旺文社の全国学芸サイエンスコンクールの自然科学研究部門、理科自由研究部門に出して、部門の金賞と、文部科学大臣賞をいただきました。学内の卒業論文では、自然科学の部門で1番、学内全体でも1番でした。その後もいろいろご縁があって、高校生の時には、大学の研究室を紹介してもらって、お部屋を貸していただきました。高校では、麹菌の酵素に焦点を当てて、家ではできなかったような実験をやらせていただきました。

 

−−では、お醤油の研究を、中学生のときからずっと続けてきて、今に繋がっているんですね!

そうですね。醤油がきっかけで発酵とか微生物全般を面白いなって感じています。このまま醤油について研究したいかどうか、食品研究をやりたいかどうかもまだ決まってないんですけど、微生物を使った材料開発など、今後もそういう方面で何かできたらいいなと思います。

 

食べることも作ることも大好き。
夢中になって12年間集めているグッズも

−−まさに宮﨑さんは食に関わる実験を数多く経験されてきて、編集部としてはこれからはじまる新企画「美味しい科学」にとって頼もしい限りです!普段お料理もお好きでよくされるそうですね?

宮﨑さん:そうですね。母とケーキ作りとかしてました。小さい頃は丸いケーキに耳をつけたり、描いていたくらいでしたが、今ではさらに進化して、手の込んだものになっています。(笑)この間、20歳になったんですけど、四角のスポンジを焼いて20の型紙を作った状態で、母が私が帰るのを待っていてくれたんですよね。それを母と一緒に切って、重ねて間にフルーツをのせてデコレーションしました!

 

−−うわー!すごい完成度ですね!記念すべき20歳の誕生日ならではの特別なケーキ、これは嬉しいですよね!他にもいろいろと作ったりするんですか?

宮﨑さん:そうですね!先日は、焼かないオムライスを作ってみました。料理漫画でそういったレシピがあるのを聞いて、それを読んで作ってみたんですよ! 実際には、湯煎で卵を溶いて、じっくり半熟にしてそのままかけるっていう感じで作っていくんですが本当にできるんですよ!こういうのもお料理だけど、実験しているみたいでそれがすごく楽しかったんです!

 

あとは、水無月という京都の伝統的な和菓子も作ったりもしました!水無月は氷に見立てた和菓子で、無病息災や暑気払いの意味をこめて6月30日に食べるんです。福岡にいた頃までは、毎年買ってもらっていたんですが、東京ではなかなか売っていなくて。。。でもどうしても食べたくて、必要な原料や食材も、レシピも調べて、自分で作ってみたんです。これも上手にできました!

 

−−本当に、探究心と実行力が伴っているのが良くわかりますし、、自由研究や料理のエピソードから知的好奇心あふれる様子が感じられます!他にも普段から夢中になっているものはありますか?

 

宮﨑さん:駅のスタンプとか御朱印、ご当地キティを集めるといった収集癖みたいなものがあります。2012年頃から集めているので、ご当地キティの数は実は、100種類くらい持ってるんです!(笑)

 

−−いやぁ、意外なこだわりエピソードも聞けましたし、お話は尽きないですね!

これまで2回にわたるインタビューで、お二人の科学への熱量が良くわかりました!その好奇心と知識をぜひ新連載のコンテンツで解放していただけるのを楽しみにしています!

さて、いよいよはじまる新連載のコンテンツ第1回目のテーマ、実は、宮﨑さんが長年実験を続けてこられたという「お醤油」!

次回は、実際にお醤油を作ってみたり、調理をする過程での使い方や使うタイミングによって味わいが変化するのはどうして??など、身近なお醤油を科学的な視点で触れながらお届けします!

次回からいよいよ始まる「美味しい科学」。食を科学で一緒に紐解いていきましょう!

 

– Information –
東京大学サイエンスコミュニケーションサークル『CAST』

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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