コーヒーのマジックに引き寄せられて、気づいたら人が集まっている
−−コーヒーが人の集まる場づくりに役立つのはなぜだと思いますか?
山口さん:「茅ヶ崎とコーヒー」のイベントでコーヒーをテーマの一つにしたのは、コロナ禍で人と関わるのが難しい中、コーヒースタンドが人が集まる場所になっていると思ったからです。その時にも思ったのですが、コーヒーには、リラックス、ほっと一息のアイテムとしてのマジック、独特の魅力があるなと。焙煎する人が豆を挽く、ゆっくりお湯を注いで香り立つ、淹れてくれるのを待つなど、淹れる過程にもゆったりした時間が流れます。どんなに忙しくしてても、コーヒーを待つときぐらいは心にゆとりが生まれることを誰もが知っているので、自然とコーヒーのある場所に人が集まるのではないでしょうか。
−−だからコーヒーがあると人とのつながりができるんでしょうね。
山口さん:「濱時間」に集まる人も、ランチをしたり、午後のティータイムを楽しんだり、あんみつを食べたり、いろんな心地よい時間を過ごしていますが、どの場面にもコーヒーは合うんです。一日の始まりにも、心穏やかに過ごしたい夜にも、一日のどの場面にあってもいいアイテムだと思います。
−−山口さんにとっても欠かせないアイテムでしょうか。
山口さん:もちろんです。それに、コーヒーを知れば知るほどもっと知りたくなって、飲んでいるコーヒーの豆の産地や、農園とかをGoogleマップでチェックしちゃいますもん(笑)。
見知らぬ場所で作られたコーヒーを味わいながらその土地に思いを馳せると、コーヒー豆が世界を広げてくれるような気がします。
継続するからこそつながっていける
−−「濱時間」やイベントを通して、街の中に生まれた新たなつながりはありますか?
山口さん:わたしは2016年から、市民ボランティアによる「chigasaki kodomo cinema」を主催しています。そのワークショップを「濱時間」で行い、子どもたちが作った映画を上映しました。街の人に観てもらいたいと言う趣旨にぴったりの会場だと思います。みんなで肩を寄せ合って映画を鑑賞し、温かいコミュニケーションが生まれていました。
−−施主さんや山口さんの願ったとおりの場になっていますね。
山口さん:それが本当に嬉しいです。「茅ヶ崎とコーヒー」のイベントも、1回目に見聞きしたりつながったりした情報を2回目で生かしたという出店者さんもいらっしゃいます。茅ヶ崎に、株式会社コルさんという食品廃材等から商品開発をする、循環商品をビジネスにしている会社があります。そちらの会社は、1回目は食品廃材全般を対象にしていたのですが、2回目は、コーヒーのカスを再利用して作ったコースターや、コーヒーで染めたタオルなど、コーヒーに特化した商品の研究をして、イベントに持ってきてくれました。また、1年間、ためた本を持ってきてくれる人もいて、続けることで生まれるつながりがあるのを実感しています。
−−コロナ禍では特に、そういった場の必要性を感じたのではないでしょうか。
山口さん:そうですね。コロナ禍でも安心して集まれる場所にしたいと、イベントでも「濱時間」でも感染対策を徹底しました。そんな時だからこそ、人と関われる場所が大切だったのではないかと思います。
茅ヶ崎だからできることを。仲間とともに、新しいものを生み出したい
−−今後、茅ヶ崎の街でどんなことをやっていきたいですか?
山口さん:私はこれまで、何かを提案し、それを実施してきたので、これからも挑戦を忘れずに生きていきたいです。前例主義や、「常識」のもとを今一度問い直し、まちのひとたちがより活躍できる自立した暮らしやすいまちにしていきたいです。
茅ヶ崎は私にとって、生まれ育った街であるだけでなく、こうしておとなになった今、あらゆる活動を通して出会うことができた、たくさんの仲間がいる場所です。年代もさまざまで、仲間同士のつながりもあります。みんなそれぞれの価値観をもっていますが、コアにあるのは「何かに挑戦したい、変革していきたい」という思い。そんな思いから生み出されたパワーをもった人たちとお互いに考えをすり合わせながら、茅ヶ崎のまちづくりにつながる新しいものを生み出せて行けたらいいなと思っています。
– Information –
山口理紗子さん
生まれ育った茅ヶ崎で建築設計事務所「洋建築企画」に勤務しながら、chigasaki kodomo cinemaなど、地域の活動にも携わる。2022年、2023年とまち歩きイベント「#茅ヶ崎とコーヒー Tskasuna Greenery Coffee Festival」を主催。