2019.06.18. | 

[Vol.2]「リラックスできる時間」が身近にある心地よさを提案したい ー yaunn 陳野友美 ー

青空が広がる、とても気持ちのいい週末。yaunnのポップアップストアが「the AIRSTREAM GARDEN」(表参道)で開催されました。陳野さんだけでなく、作り手の板倉和之さんと岡崎慧佑さんも参加し、制作秘話についてお話してくれました。

[PR]yaunn

たった一人のために、オリジナルコーヒーを100gから焙煎

まずは軽井沢コーヒーカンパニーの板倉和之(いたくら・かずゆき)さんにお話を伺いました。軽井沢には大手のコーヒー屋さんがいくつもあります。そのなかでどんな思いをもって、どんなコーヒーを作られているのでしょうか。

 

板倉さん:別荘の方や地元の方など、コーヒーにこだわりをもった方に向けて焙煎した豆を販売しています。始めたのは3年前。誰か一人のためにオリジナルコーヒーが作れたら面白いんじゃないかなと思ったのがきっかけです。

コーヒーって嗜好品ですよね。本来、店頭に並んだものを買うのではなくて、自分の好みにあったコーヒーを選んで飲むものだと思うんです。でも、なかなか巡り合えない。だから、軽井沢コーヒーカンパニーでは、100gから焙煎することにしました。その時に食べたいお菓子にあった焙煎だったり、その人の体調にあわせてブレンドするなど、ブレンドも焙煎も自由に選ぶことができます。

 

コンセプトは、楽しむこと。

 

板倉さん:店内では焙煎する様子がわかる焙煎器を使っています。工程を見てもらうことで、どんなふうにコーヒーが焙煎、ブレンドされて、ピッキング(焙煎後の豆の不要なものを取り除くこと)されているのかを知ってもらうことができます。そして家に帰って自分で豆を挽いて飲む。その過程こそがコーヒーを楽しむことなのかなと思っています。

 

今、日本でコーヒーの木を育てる話が進んでいるとか。

 

板倉さん:成功するかわからないのですが。コーヒーの木が育つところって、なかなか見られないですよね。そこまでお客さんに楽しんでもらえるものが提供できると嬉しいですね。

 

 

プロダクトを作ることは、苦しさも含めて、楽しいし、嬉しい。

私たち日本人の生活にとてもなじみのあるコーヒー。「朝起きたらまずコーヒーを飲む」という人も多いのではないでしょうか。それなのに、どこでどんなふうに作られるのかわからないものが多い。嗜好品なのに、そこを追い求めない。なんだか不思議です。そして、板倉さんの想いは、yaunnのコンセプト「作り手の想いや作る工程を知って、身近なものに愛着がもてる生活を」と重なる部分があります。

 

野さん:私は日常的に使うものの製造工程とか、誰が作っているかとか、そういうところを伝えることで、リラックスして使ってもらいたいという思いがあってブランドを立ち上げました。軽井沢コーヒーカンパニーさんは作る過程が丁寧なのはもちろんですが、売って終わりじゃないんですよね。

 

板倉さん:豆の販売だけでなく、コーヒースタンドを最近オープンさせたのですが、飲み終わったゴミをお店に持ってきてくれたら100円キャッシュバックしています。軽井沢は別荘文化がつくった町ですが、徐々に観光地になってきて、そこには観光公害というものが発生しています。飲んだものをポイ捨てして、町が汚れていく。そこで、町を汚さないためにはどうすればいいかを考えて、始めたのがキャッシュバック制です。

G20という環境会議が軽井沢で開かれるのですが、それなのにゴミ問題について考えないのはおかしいし、だったらうちがやってみようと。100円ものキャッシュバックは、正直きついです(笑)。でも、まずは何かやってみることが大事だよね、と思っています。

 

そういった板倉さんの草の根のような行動にも魅力を感じたと野さんは話します。

 

野さん:今回、カップ&ソーサーとのセット販売なのですが、陶芸家の岡崎さんにyaunnのコンセプトにあうカップを作ってもらって、さらにそのカップにあうコーヒー豆を板倉さんに作ってもらいました。板倉さんは、私がやりたいことをすごく理解して作ってくれたので、嬉しかったですね。最初の段階で、酸味が強いものや飲みやすいものなど、3パターンほど提案してくださって。その後、試作を3、4回繰り返して完成させました。

 

板倉さん:とても楽しかったですね。yaunnさんのキーワードや、陶芸家の岡崎さんの作品から感じたイメージをもとに提案することで、勉強になることがたくさんありました。

 

野さん:もちろん、板倉さんはプロフェッショナルなので、プロとしてまかせるところはおまかせしました。

 

板倉さん:僕は、お客さんに言いたいことをいってもらって、それを作りたい。嗜好品なので、正解はひとつじゃないですよね。自分の考えだけが正解じゃないし。相手のイメージが一番大事だと思うんです。

提案するときはいつも緊張します。「まずい」って言われたらショックを受けますし(笑)。でもコーヒーの好みは十人十色だから、美味しくないって言われることもあって当然だし、最初の提案から「美味しい」って言われることもある。だからこそ面白いとも思っています。

 

yaunnとのコラボレーションでは、最終的にどんな味に仕上がったのでしょうか。

 

板倉さん:空と雲のさわやかさ、というyaunnのイメージを聞いた時に、最初に森をイメージしました。そこで、森の中ですっきり飲める、ちょっとまろやかでまるみのある味をまずは提案させていただきました。そこから陳野さんと会話を重ねながら、酸味、華やかさなどをプラスしていきました。完成した時は、「あ、なるほど」という発見がありましたね。とても勉強になりました。「ひとつのブレンドを作るのって楽しい」って再確認したというか。それをお客さまにお届けできるのは楽しいですね。もちろん、作る過程には苦しさもありますが、すべて含めて楽しいし、嬉しい。

 

野さん:偶然ですが、私も森をイメージしていました。緑に囲まれてリラックスするというイメージがあったので、お互いそこにたどり着いたのはすごいなと思いました。最終的な味は、陶芸家の岡崎さんの工房へ取材に伺ったときに決めたんです。カメラマンさんなどスタッフが5人くらいいて、みんなに飲んでもらって感想を聞く中で、ちょっと果実味のあるこの味がしっくりきたので、これに決まりました。

 

想いと工程を丁寧に重ねながら作られたyaunnオリジナルのコーヒー。どんなシーンで飲むことを想定していたのでしょうか。

 

野さん:やっぱり、普段使いをしてもらいたいんです。器もそうなのですが、毎日使ってほしい。リラックスして一日の始まりを迎えてもらったり、そばにあってよかったと思ってもらえることが理想ですね。特別なものを日常に取り入れる、そういう使い方をしてもらえればいいなと思っています。

 

板倉さん:岡崎さんの器と一緒に、yaunnのコンセプトを楽しんでもらえたらうれしいですね。そして、コーヒーを飲むタイミングって人それぞれですよね。それぞれのタイミングで飲んでもらって、その時間が幸せになればいいなと思っています。自分が焙煎して、作らせていただいたものと一緒に過ごす時間が幸せであればこんなにうれしいことはありません。

 

野さん:こういった制作工程や作り手の気持ちにちょっと思いを馳せてもらうと、楽しんで飲めると思います。このカップにあわせてブレンドされたということを思い出してもらうだけでも楽しんで飲めると思いますよ。

 

 

4回と数多く焼く過程で、繊細な模様を表現

陶芸家の岡崎さんが手がけたカップ&ソーサーは、澄んだ青と白の色彩がとても印象的です。スポンジでポンポンと叩いて色をつけることで、青い空に雲が広がっているような模様になるのだそうです。

 

岡崎さん:この技法は、陶芸を始めたときから目標としていたものなのですが、自分なりにアレンジし、少しずつ形を創っていきました。今はこれが僕の作風のひとつになっています。

 

このカップ&ソーサーは、4回焼いているのだそう。これは一般的な陶器の倍の回数にあたります。

 

岡崎さん:ベーシックなものは、素焼きと本焼きの2回で完成します。それに比べると、僕がつくったものは焼く回数がかなり多いですね。

 

お客さんに「これがいい」と思ってもらえる。
僕にとってはそれがすべて

器やアートピースなど、さまざまな作品を発表している岡崎さん。一つひとつの制作過程を伺うたびに、そこに向かう岡崎さんの想いが感じられます。yaunnのコンセプトをはじめて聞いた時、岡崎さんはどう感じたのでしょうか。

 

岡崎さん:個人的には、作る過程や想いを特別誰かに見せたいとは思ってなかったんです。でも、yaunnのようなブランドの存在はとてもありがたいことだし、大事になってくると思います。

ただ、お客さんに「大変な思いをして作られたものだから、棚にしまっておこう」と思われることは避けたいですね。普段使うものとして作っているので、できれば使って欲しい。だから、ものづくりの“大変さ”をアピールすることは、少し違うかなと思っています。完成したものを見ていいと思ってくれたら、それがすべてですよね。ものがいいと思ってもらえたら、それでいいと思っています。

 

野さん:第一弾のシャツをデザインしてくれた岡村さんも、よく似たことをおっしゃっていました。ものをつくるって、必ずしんどいプロセスがあります。だけど、そのしんどい部分をお客さんにあまり伝えたくないと。「あ、そうなんだ」って私は気づかされましたね。最後の完成した部分だけ、お客さまに届けばそれでいいと思っている作り手も少なくないのだなと気づきました。

 

生活の端っこにいつも転がっている、
それが理想のポジション

そんな岡崎さんとyaunnとのコラボは、一体どんなふうに進められたのでしょうか。

 

岡崎さん:最初に提案したものは、いまの完成品とはまったく違いましたね。日常に寄り添ったものを作るというお話だったので、はじめて作家ものの陶器を手に取る方にも馴染みやすいよう、もっと普通のカップを提案しました。

 

野さん:とてもスタイリッシュなカップだったんです。光沢があって、シュッとして、持ちやすくて。それもいいと思ったのですが、ちょっとかっこよすぎる感じがして。

 

岡崎さん:野さんは今回のプロジェクトが始まる前に僕の作品を購入してくださっていたのですが、一回目の提案の後、「以前に購入させていただいた作品のような雰囲気のものを作れないでしょうか」と言っていただいて。yaunnの青い空と白い雲をイメージしながら、2回目の提案させていただきました。

 

野さん:はじめて見たとき、びっくりしましたね。yaunnのブランドイメージにすごくあっているし、こんなにきれいな色や形の陶器がつくれるんだって、本当におどろきました。

 

岡崎さん:今回は僕の作品にyaunnの要素をどう取り入れていくか、という作業になりました。やっていることはいつもとあまり変わらないけれども、いろんなことの再確認になりました。手に取ってくれた人がどう使うか想像しながら、そしてみなさんと話し合いながら細かく調整していきました。

 

野さん:毎日使ってもらいたいので、使い勝手の良さの部分、たとえば重さとか、あとは取っ手のことを結構話しましたよね。取っ手の幅によって重さの感じ方が違うんです。「どうやって持つのか」、「どの指で取っ手を支えるのか」みたいな確認をたくさんしました。改良を重ねて、そのたびに課題をクリアして、今の形に決めました。

 

岡崎さん:取っ手の厚みとか、重心の位置は、かなり個人差がある部分です。カップの部分は軽く薄くすると、熱がダイレクトに伝わってしまうし、冷めやすくなる。重くても、取っ手を付ける位置によって持ちやすくすることもできます。今回は自分とは違ったイメージや考え方に触れることができたので、そこがよかったなと思っています。

 

野さん:最初はどうオーダーしたらいいのか、本当にわからなくて。まずは「200cc入る」みたいな、とてもアバウトな仕様書のような感じで伝えましたね(笑)。

 

岡崎さん:ある程度ざっくり伝えてもらうほうが、僕も自由にできます。縛りが強すぎても作りにくいですし。「水はこのくらい入って、こういう使い方をしたいんです」くらいの話のほうが、「じゃあ、こういう感じでどうですか」という提案をしやすいです。

 

野さん:今、カップを見ながらお話していて、こういうプロセスを重ねてこのプロダクトができたのだと、改めて感じています。

 

野さんの想いとyaunnのコンセプトを見事に形にした、岡崎さん。このカップ&ソーサーは、どんなふうに人々の日常に溶け込んでいくのでしょうか。

 

野さん:毎日使ってほしいですね。カップとお皿をセットで使わなくてもいいと思っています。お皿にお菓子をのせてもらってもいいし、お惣菜をのせてもらってもいいですし。コーヒーだけじゃなく、スープも飲めますし。

 

岡崎さん:僕の作品が、生活の端っこにいつも転がっているといいなと思っています。飾るものというよりは、毎日着る服のように。

 

日常に当たり前のように存在するカップだからこそ、ただ便利なだけではなくて、何かほっとできるものであったほうが、安心できるし、毎日も楽しそうです。

 

岡崎さん:毎日使ってほしい気持ちはありますが、「毎日使ってね」とは思わない。「どこかにあればいい」くらい。いつも視界にあるけど、最近使ってないから使うか、くらいのものでもいいですし、買ってくださった人が見る景色のどこかに転がっていればいいくらいの感じです。わりと気になるじゃないですか。視界の端っこにあるものって。

 

野さん:わたしの家にもこのカップがあるのですが、今、そういう状態かもしれません。

 

岡崎さん:陶器なので、割れる時はどんなに丁寧に扱っていても割れますし、雑に扱っていても、運が良ければ、半永久的にずっとその場に居続けてくれます。使っている人といい距離感でいてくれれば、どんなふうに使ってもらってもいいと思っています。

 

野さん:人それぞれ違いますよね。だから、こう使ってくださいというよりは、その人にあった形で使ってもらうのが一番いいんじゃないかな。

 

たくさんの人の想いと工程を重ねながらひとつのプロダクトを作り上げいく。そのプロセスを発信することで、「使う人が、心からリラックスできる時間」を提案する。そして、穏やかで、幸せな日常をゆるやかに届けていく。優しくて広いyaunnが描く世界は、これからもますます多くの人の暮らしに溶け込んでいきそうです。

 


– Information –
yaunn

https://yaunn.jp/

 

軽井沢コーヒーカンパニー

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢555-1

<営業時間>10:00~17:00

定休日:水曜日(8、9月は無休)

http://karuizawa-coffee.jp/

 

岡崎慧佑さんHP

http://okazakikeisuke.com/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

Mo:take MAGAZINE > [Vol.2]「リラックスできる時間」が身近にある心地よさを提案したい ー yaunn 陳野友美 ー

Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

Mo:take MAGAZINEは、
食を切り口に “今” を
発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、
その時、その場所は、
より豊かになるはず。

みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

みんなとともに考えながら、
さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性を
きりひらいていきます。

さあ、いっしょに たべよう

OTHER SERVICE

様々な形で「食」が生む新たな価値を提供します。

ブランドサイトへ