「美味しい」は人それぞれ違う、だからこそ素材のよさにこだわる
片山さん:HACARIには、いろいろなお店のシェフが突然来店するんですが、「これだけ産直の食材をそろえているお店はない。おもしろいね」って言ってくださるんですよ。そして、「こういう野菜はない?」ってどんどんリクエストしてくれるんです。
HACARIはいわゆる食材のセレクトショップのような存在になっているのかもしれません。
片山さん:食事における「美味しい」の基準は人それぞれ違うかもしれません。だからこそ、素材から美味しいものを提供したいですね。ケータリング事業では、調理してたくさん手を加えたほうが食べる人の満足度が高くなるのかなと感じることもあります。ですが、yolozのケータリングは、素材を美味しく食べてもらえるメニューにこだわっていきたいです。
坂本:僕は料理をする側として、「美味しい」をつくるのは足し算だけじゃないと思っています。調味料を全く加えなくても美味しいと感じられれば、そのままお出しするのも調理法のひとつだと思うんです。一番大事にしたいのは、何を伝えたいか。たとえばキュウリなら、味の濃いキュウリを食べてもらいたかったらそのままお出しするし、食感を楽しんでほしかったら何か調味料を足します。
片山さん:「美味しい」については難しさを感じることもありますが、僕にとって一番うれしいのは、「この野菜、美味しいね」と言ってもらえることです。ケータリングでも「これ、何の野菜ですか?」と言われると、うれしいですね。
八百屋は面白いプラットフォームになる
片山さん:八百屋の強みは野菜を調達できることです。その良さを活かしていろいろな方とコラボレーションしたいですね。八百屋って、実は面白いプラットフォームになれると思うんですよ。野菜という、世界中のほとんどの料理人が使っているものを揃えられるんですから。
そんな八百屋の中でも、HACARIのようにたくさんの生産者と直接つながっているところは少ないです。大半の八百屋は市場から仕入れています。ありがたいことに、すでにシェフのみなさんはその価値を理解してくださっているので、次は消費者にも伝えていきたいですね。
坂本:僕もシェフの一人として、本物の食材や生産者の想いを大事にしています。片山さんのように、その辺りをしっかりと理解して、農家さんたちと直接やりとりする専門家がいるのは心強いです。
片山さん:農家さんの大半は農協に野菜を卸しています。ですが、自分が作ったものに誇りをもっていて、たくさんの野菜の中のひとつではなく、特徴をもった野菜として世の中に届けたいと考えている農家さんもいます。ですが、農家さんは本当に忙しいです。朝3時くらいから畑で働いているので、農作業とは別に自ら販売先を開拓できる余力のある農家さんはごくわずかです。だからこそ、yolozが農家さんとシェフや消費者の間に入ってお役に立ちたいと思っています。農家さんが作ったこだわりの野菜を、鮮度が高い状態でみなさんにつなげることができればと思っています。
大きいもの、小さいものを好みで選べる世の中にしたい
1袋いくらではなく、1gいくらという単位で購入するHACARIのスタイル。この方法にも、片山さんの食材に対する想いが込められています。
片山さん:「規格」「規格外」という概念をなくしたいんです。1個いくら、1袋いくらという売り方に僕は疑問を感じていて、野菜は植物なのだから、大きく育つものもあれば小さく育つものもあるじゃないですか。それを規格という枠に当てはめたくない。海外では量り売りは当たり前なんですけど、大きいものや小さなものを自由に選べる世の中になればいいなと思っています。
フードロス(食品ゴミ)が社会問題になっていますが、規格品をなんとなく買うことも、ひとつの原因になっていると思います。野菜の規格って、この50年間くらい変わっていないんですよ。大家族が多かった当時に比べ核家族化した今、これまでの規格量で購入すると、当然余りやすいんです。消費者のみなさんに量り売りに慣れていただければ、食材の無駄をなくすことにもつながります。
最近うれしかったのは、珍しいキュウリを「おもしろいね」と1本だけ買ってくださったお客さんが、後日、「美味しかった」と追加で買ってくださったことです。そういうことって、フードロスをなくす大きなきっかけにもなると思うんです。
HACARIを通して産地直送の野菜がもつ可能性について話してくれた片山さんですが、構想はまだまだ広がっています。9/24(火)公開の次回では、HACARIが世の中のためにできるもうひとつのこと、さらにMo:takeとのコラボレーションについて話します。お楽しみに。
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