
トークセッション、地元の朝市や体験企画も
10月18日に行われた「つちとまちPROJECT トークイベント」では、つちとまちや人のつながり、その可能性をテーマにした講演とトークセッションを中心に、地元農家さんの朝市やコンポストの体験企画も用意されていました。
このイベントは記事でもご紹介した『つちとまち』プロジェクトの一環として開催され、FARM SPOTのメンバーでもあるMo:takeの坂本と、土の専門家「DOJOYラボ」代表の愛敬さんが登壇し、FARM SPOTの取り組みをご紹介。
続くトークセッションには、一般社団法人まちやまの代表・塚原宏城(つかはら・ひろき)さんと、ニューマチヅクリシャの杉山智子(すぎやま・ともこ)さんが加わり、それぞれの視点からトークセッションを行いました!
イベント会場の「J Smile八角堂」の入口付近には、この日のために展示された『FARM SPOT』のオリジナルコンポスト屋台と一緒に、ニューマチヅクリシャさんが近隣の方がデザインして作ったダンボールコンポストも並んでいます。


他にも、初めて見る『つちとまち』のロゴ入りコンポストも。一見コンポスト?と思わされるこのコンポストは既製品ボックスを活用して作られていて、中には堆肥が入っていますが、ダンボールより安定感と耐久性がありそうです!
トークイベントが始まる前から会場の外では朝市も始まり、近所の方々がお買い物やお店の方との会話を楽しむ様子もあり、地域のつながりを感じられ賑わっています。
出店していたのは、有機農業に取り組む恵泉女学園大学の「Keisen CSA」。多様な人や生き物がすまう持続可能な社会やコミュニティ菜園を目指して活動しており、並ぶ野菜はどれも新鮮で手に取りたくなります。このまちの穏やかな朝の風景を感じられるひとときですね。
地元の人に混じってお買い物したい気持ちをぐっとこらえ(笑)、いざ会場へ!


『FARM SPOT』の取り組み
土曜の朝10時にも関わらず、会場には地域の方々が集まり、アットホームな雰囲気の中イベントがスタート。モデレーターを務めるニューマチヅクリシャの寺田さんは、開会の挨拶で、「ここにいる皆さん全員で、つちとまちと人のつながりを深める時間にしたいと思っています。そして、土が自分たちの生活にどう関わっているか、それぞれが再発見できるような場になればと思っています。」とイベントにかける想いを語り、笑顔でうなずく参加者の皆さん。
こうしてなごやかなムードの中、始まった講演では『FARM SPOT』の概要から取り組みまで、坂本と愛敬さんが紹介するところからスタートしました。
『FARM SPOT』は、全体のプロデュースやディレクション、デザインを担当する株式会社Yuinchuと合同会社こたつ、農業分野を担当するDOJOYラボ、空間設計などのハード面を担う株式会社ツバメアーキテクツの4社が、「小さな循環を可視化する」をテーマに、コンポストを起点とした場づくりをするプロジェクト。
現在では、実際のSWITCH STAND AKABANEでも取り組んでいますが、生ごみを堆肥に変え、できた堆肥を使って野菜を作り、その野菜でお料理をする、そうして料理をすればまた生ごみが出る。そして、その生ごみで堆肥を作り…そんな風に『小さな循環』を、“見えるかたち”で体験してもらうことに取り組んでいるFARM SPOTの話に、参加者の皆さんはメモを取りながら熱心に耳を傾けていました!

概要を紹介した坂本の講演を聞いていると、コンポストを起点に場を育てていくには、コンポストを導入した後に、“どのように日常に根づかせ、継続させていくか”。ということの難しさと大切さに気づかされます。
それと同時に、生ごみが堆肥になり、農作物ができる!ということを知らせたり、コンポストに取り組んでみようかな?と“誰かの心に芽生えた小さな衝動を動かすキッカケをFARM SPOTが作っていきたい”という、そんな想いも伝わってきました!

DOJOYラボの取り組みの3つの柱
講演の後半は、愛敬さんから堆肥やコンポストについてのお話です。FARM SPOTのメンバーでもある有機農家3名で構成されたDOJOYラボの代表の愛敬さんは、埼玉県さいたま市で有機農家を
営みながら、「生ごみの堆肥化」を軸に地域の資源循環の取り組みを進めています。さいたま市には、大宮や浦和のすぐ近くに「見沼たんぼ」という広大な農地があり、土とまちのつながりが深い土地。今日のテーマにもぴったり。
愛敬さんは、単なるリサイクルや生ごみ回収ではなく、資源が循環できることを知ってもらい、その仕組みをつくり、広げていくことに重きを置いているというDOJOYラボの考え方と活動の3本柱「ひろめる」「つなげる」「そだてる」を、具体的な事例とともに紹介しました。
実際に、生ごみが堆肥になり野菜へとつながる循環をまず「知ってもらう」ために、家庭や学校、農家向けの勉強会を行っていたり、飲食店や家庭から出る生ごみを堆肥に変えて街へ戻すなど、暮らしの中で循環を「つなげる」取り組みも実践中。
そして今は、コミュニティスペースや保育園に常設コンポストを置き、生ごみが日常的に堆肥となって地域の畑に戻る仕組みを「そだてる」段階へと進めています。
愛敬さんの話からは、生ごみを資源として捉え直し、暮らしの中で循環を育てていくDOJOYラボの姿勢がまっすぐ伝わってきました。循環が特別な活動ではなく、地域の日常として根づいていく─そんな未来のイメージを参加者の多くが思い描いた時間だったと思います。

そもそも「堆肥」ってなに?
『小さな循環シリーズ』ではおなじみの「堆肥」。でも、いざ「堆肥ってなに?」と聞かれるとうまく答えられなかったりしますよね。そんな私たちのために、講演の中で愛敬さんが、初めての人でもイメージできるように、分かりやすく堆肥について説明してくれました!
堆肥は、堅く言うと“有機物を微生物が分解してできる肥料”となりますが、ここで愛敬さんが伝えたかったポイントはシンプルにたった2つ。
① 土を元気にしてくれるもの
② 野菜や作物を育てる力になるもの
そしてこの堆肥の元となるものは、落ち葉や野菜の皮、そして生ごみなど、身近な有機物ならほとんどが堆肥になることも教えてくれました。また、都会では木材や落葉や畜ふんを集めて堆肥を作るのは難しいけれど、人の暮らしがある場所ならどこでも出る「生ごみ」は、微生物が働きやすい“水分と養分の宝庫”となるため、実はとても貴重な資源になるそうです。
「生ごみ」を堆肥にして畑へ戻し、その野菜をまた食卓に届けるという“小さな循環”を地域の中で増やしていきたいと話している中、やはりこの取り組みを継続させていくには、乗り越える課題も多いという難しさも赤裸々に語ってくれました。

その中でも循環を動かし続けるため欠かせないポイントは、堆肥にする技術に加え、現場に合わせたオペレーション設計、そしてできた堆肥をどう使うかという出口づくりだといいます。
具体的には、生ごみを腐らせずに堆肥にしていくために必要な床材(とこざい)の工夫や、人の行動動線に合わせたコンポストの配置場所、そしてできた堆肥の受け入れ先の例として農家と連携した堆肥の活用先づくりなど、これらのポイントを抑えた場づくりにしていくことで、地域に循環のサイクルが根づいていくー。
こうした経験に基づくリアルなお話に、参加者のみなさんも真剣に耳を傾け、メモをとる姿もみられました。
堆肥って何?という人も、コンポストを始めたいけど、何から準備すればいいかわからないという人も、すでに取り組んでいる人も学べる充実した内容となった講演。実際に農家さんとお話しする機会や、日々、小さな循環に取り組む愛敬さんだからこそ語れるお話しを聞いて、「私たちにできることは?」と考えるキッカケになったのではないかと思います!
多摩ニュータウンの「J Smile八角堂」を舞台に開催された「つちとまちPROJECT トークイベント」。Vol.1では、Mo:takeの坂本と、DOJOYラボの愛敬さんによる、『FARM SPOT』やDOJOYラボの想い・活動についての講演の様子をレポートしましたが、いかがでしたか?
次回のVol.2では、一般社団法人まちやまの代表・塚原さんと、ニューマチヅクリシャの杉山さんも加わり、さらに一歩踏み込み、つちとまちと人のつながり、その先に広がる可能性について語り合うトークセッションの模様をお届けします!
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