2020.06.02. | 

[Vol.2]コロナに負けない。そして、今ここから始める。「Mo:take」ヘッドシェフ 坂本英文 ×「Yuinchu」代表 小野正視

前回、二人をインタビューしたのは半年ほど前。そのときは、こんな時代がくると誰が想像したでしょうか。新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、日本では緊急事態宣言が発令され、飲食業界は特に大きな影響を受けました。「Mo:take」も厳しさに直面したと、Mo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)と、Mo:takeを運営する株式会社Yuinchuの代表、小野正視(おの・ただし)は言います。具体的に何が起こりどう考えてきたのか。まずは事実を語ってもらおうと、オンラインインタビューを行いました。

いろいろな仕掛けを
掛け合わせてできた、一つのモデル

小野:以前から、食の可能性を追求する場を持ちたいと考えていました。ケータリングの調理を行うセントラルキッチンであり、人の出入りがある店舗でもあるような。そこで生まれる化学反応を得て、新しいものを生み出す。一言で言い表すなら、 “LABO” だなと。コロナ以前からそんなことを考え、実はすでに拠点を探しはじめていました。そして今回、コロナの影響で事業計画を再考する中で、これまでケータリングのセントラルキッチンとして使っていた恵比寿の店舗を「Mo:take LABO」として、この構想をスタートさせようと決めたんです。

そもそも、飲食店の機能だけで物件を取得して運営し続けるのは、利益を生み出す事業モデルとしては厳しい面があります。そこにレンタルスペース事業を掛け合わせ、行政や企業のプロモーション会場として使ってもらうなど、多角的な空間活用をすることで事業としてもうまく回っていきます。

これまでも自分たち自身でそういう空間を持ってきましたが、最近、パートナー企業から空間活用のコラボレーションのオーダーも増えてきています。前回のインタビューで運営を任されているお店の話をしましたが、これらもそういった文脈から運営を受託していたものばかりです。事業モデルは同じなのですが、一つひとつのお店の打ち出し方や店舗名が異なるので、この概念を統合し、「HYPHEN TOKYO(ハイフン トーキョー)」というブランドとして世の中に提示しようと考えています。これもコロナ以前から進めていたことの一つです。

 

Yuinchuはこれまで、飲食店の運営を請負うだけでなく、さまざまなサービスや機能を掛け合わせて展開してきました。その中で見えてきたモデルをブランドとしてわかりやすく表現したのが、「HYPHEN TOKYO」ということでしょうか。

 

小野:そうです。事業モデルが複雑なのでわかりやすくしたい、というのがブランド化の目的です。

 

 

コロナの影響でアイデアを切り替えたメニュー
販売開始から1日で、100個完売

坂本:TARPtoTARPという、キャンプを通して人と人のつながりを作りたいという思いをもつカフェがあるんです。ここのオーナーさんからカフェメニューをリニューアルしたいというご相談を受けていました。ちょうど新メニューをリリースしようというタイミングで、コロナウイルスの影響を受けてしまって。そこで、お店で提供するメニューとして考案したものを、家でも食べられるよう、真空パックで届ける形に切り替え、TARPカレーという商品が生まれました。初回に生産した100個はわずか1日で完売したので、追加分の製造を進めています。

 

キャンプで人と人とをつなげたいという思いが込められたTARPtoTARPは、以前に「Mo:take MAGAZINE」でもご紹介しました。記事はこちら。ところで、オーナーさんは坂本にどんなことを期待して依頼したのでしょうか。

 

坂本:まず、僕たちが得意とする「オーナーさんの想いを食で表現する」ことに興味を持ってくださったんです。僕たちがお手伝いさせていただく以前から、キャンプでも楽しめる料理をお店で提供されていたのですが、作業工数やオペレーションなどを改善し、その上でTARPtoTARPの想いを表現できる料理としてクオリティをあげたいという希望に応える形でお手伝いさせていただきました。

 

TARPtoTARPにはすでにたくさんのファンがいるのだと思います。そのファンのみなさんにもっと喜んでもらったり、つながりを深くするには、どんな商品やサービスを展開していけばいいのか。そんなオーナーさんの悩みに、飲食店運営やフード開発の専門技術を注入したということでしょうか。

 

坂本:そうですね。そこが、僕たちの得意とするところです。コンセプトに沿ったものをいかに表現するか。そして、事業としても成立するように。TARPtoTARPさんのカレーもその一つです。

 

 

お客様のところへ
笑顔になれる料理を持っていく

小野:もうひとつ、「Mo:take FOOD TRUCK」事業もスタートしました。以前から、商業テナントスペースにキッチンカーを出してほしいというニーズがあったんです。要は、移動式のフード提供を、商業ビルのコンセプトを反映した形で実現したいということ。商業ビルのフード関係の入居者さんは、そのお店のメニューをエリアやビルのコンセプトに寄せたりします。「Mo:take」はオーダーした企業や人のコンセプトそのものを表現することが得意だから、ビルのコンセプトをメインにしたキッチンカーが出せるんじゃないかと。

面白いオーダーを受けて、ワクワクする一方、「僕たち自身がまだやったことがないキッチンカーをうまくプロデュースできるのか?」という思いもありました。そして、コロナをきっかけに、まずは自分たちでやってみよう!ということになりました。その先には、個人や少人数のニーズに応えられるようなサービスがあると思ったんです。
キッチンカーって、オフィス街や人がたくさん集まる場所に出店する印象がありますよね。でも今回、コロナ対策のために外出自粛する中で、キッチンカーで住宅街まで美味しい食事を届けることもできる、という考えに行き着いたんです。

 

まさに、「Mo:take」(持っていく)ですね。

 

坂本:そうなんです。来てもらうことが難しいなら、届けに行けばいいんだって。
小野:緊急事態宣言が解除された後も、感染対策は続きますし、すべてが一気に元どおりにはなりません。これからは、人が住む場所へ美味しい食事を持っていくことが飲食業界のキーになるかもしれないと思っています。どこに届けても同じように見えるかもしれませんが、オフィス街と住宅街では、求められることが少し違うような気がしています。

 

「HYPHEN TOKYO」、「TARPtoTARP」のTARPカレー、「Mo:take FOOD TRUCK」と3つの新しい取り組みについて語った小野と坂本。なかでも「Mo:take FOOD TRUCK」は、「Mo:take」(持っていく)の事業コンセプトをさらに追求した形となりました。6/9(火)公開予定のVol.3は、その「Mo:take FOOD TRUCK」の話をさらに掘り下げながら、未来についての二人の言葉をお伝えします。(つづく)

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

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