2021.01.05. | 

[第8回]東京で自然と共存する飲食店から見える景色:地元の野菜に出会うきっかけを生み出す、秘密の冷蔵庫

駅のすぐ近くに綺麗な小川や緑が広がり、都内有数の畑面積を誇る、東京都国分寺市。この街の飲食店「SWITCH KOKUBUNJI」の店長・榎本彩(えのもと・あや)さんが、「都内」で自然と共存する、豊かな食文化に触れあう日々を綴ります。

SWITCHの一角にたたずむ、少し風変わりなデザインの冷蔵庫。色鮮やかにペイントされた表面には、“農家さんのおすそ分け野菜”という文字と、野菜の種類と値段の表記があります。

扉をあけてみると地元国分寺で採れた野菜が入っていて、野菜はその場で購入することができます。これは今年の七月からSWITCHに仲間入りした、いろんな人の思いが詰まった冷蔵庫です。

SWITCHは、地元野菜を目いっぱい使った定食やサラダボウルを提供しているカフェです。素材となる野菜は全て国分寺産を目指しています。このこだわりは常々お客様にお伝えしていますが、全員にこだわり全てを理解してもらうのはなかなか難しいです。

とはいえ、料理を食べたあと、「野菜が新鮮で驚いた!」と嬉しい感想をいただくことももちろん多いです。私が作った料理だけど、料理の味付けよりも、野菜が新鮮で美味しいと言われる方が嬉しいのはすっかりこの街に馴染んでしまったからだなあと思います(笑)。

するとお客さんは大体次にこう言います。「ここでは野菜は買えないの?」と。

ああ、せっかく興味をもってもらえたのに残念、野菜の販売はやっていないんです。・・・これまではそうお伝えしてきました。まず、カフェとして使う野菜の量がそもそも多すぎて、販売用野菜の保管場所がない。そして、販売野菜の品質管理ができる自信がない。この二つがネックとなり、野菜の販売はしてこなかったのです。

もちろん、野菜への思いが強いSWITCHのことですから、販売したいという思いはずっとありました。

スーパーに行くと、野菜がそれぞれに合った保存方法で、そして手に取りやすく並んでいますよね。直売所やマルシェの場合は、朝どれ野菜がその日のうちに売れるので、常温で並べてる場合もあります。カフェが主役のSWITCHでは売り切れるまで何日もかかってしまうことを考えると、この品質管理の壁はなかなか厚いように思えました。

お客さんは買いたくて、私は売りたい。こんなもどかしいことはありません。日々の営業や仕込みに勤しみながら、頭の片隅でぼんやり考えながら、二年ぐらい悩み続けていました。

そんなある日、こくベジ便のみなさんから、一般家庭向けの野菜の受注販売企画のお誘いをいただきました。お客さんがこくベジ便を通じて注文した野菜をSWITCHで受け取れる、というサービスです。事前注文が入った分だけ、「これは◯◯さんが注文したお野菜」という具合に農家さんから野菜が届きます。この試みが、野菜の販売を実現する上で、大きな進歩になりました。

すると今度は、その様子を見ていた地元企業の日立さんが、「冷蔵庫使いませんか?」と声をかけてくださったのです。日立のデザイナーさん達は、実は街の人から国分寺の「森」と呼ばれる緑豊かな場所に会社を構えていて、社食には国分寺野菜も出てくるのだそう。SWITCHやこくベジ便のこともよくご存知で、こんな素敵なオファーをくださるのは、地域密着型の企業だからこそなのだと思います。

さっそく、日立さんから冷蔵庫が届きました。スタイリッシュでとても綺麗なグリーンの家庭用冷蔵庫は、カフェ空間にもよくなじみます。注目ポイントは、野菜の鮮度をより保つ性能がある野菜室!自慢の商品を、ぜひお店のため、街のために使ってみてほしいとの嬉しいお声がけでした。

これがあれば、 SWITCHで野菜販売ができます。同時にこくベジ便のみなさんとも思いが繋がって仕入れルートも整い、すぐにSWITCH主体での野菜販売が開始。私の頭の中で思い描くだけでは実現できなかったことが、街の繋がりによりあっという間に形になりました。

冷蔵庫が店にきて、嬉しい誤算がひとつ。冒頭でお話しした、「お店のこだわり」が伝わりやすくなったんです。SWITCHが国分寺野菜を使用した地産地消のカフェであることを知るきっかけは、様々あります。お店を調べてくれた時やメニューを開いて気づいてくれる人もいれば、美味しいって思った時に店員さんに聞いてくれる人もいます。そんな中で「この冷蔵庫は何だろう?」と冷蔵庫の存在に興味をもち、地元野菜が販売されていることに気づいて、この店の野菜へのこだわりを知ってくれる人もいるんです。つまり、冷蔵庫を通じてお客さんと野菜のタッチポイントを増やすことに成功したわけです。

野菜が好きだから美味しい野菜を求める人もいれば、カフェが好きだから食事をした結果、美味しい野菜に出会える人もいる。馴染みのあるカフェで野菜を買ってみるってそれだけで新しい体験になりますし、きっかけを生むんですよね。そこから地産地消への興味を引き出していくことが、SWITCHの冷蔵庫の役目なのかなと思っています。

 

– Information –

店舗名:SWITCH KOKUBUNJI
住所:東京都国分寺市南町3-22-31 島崎ビル201
マッサージ屋さんの入っている建物2階
連絡先:050-1709-0492

営業日時
平日11:00-17:00 休日11:00-18:00 定休日:月曜、火曜

https://cafe-switch.jp/

ライター / 榎本 彩

1992年生まれ。女子美術大学芸術表象専攻卒業後、コミュニティデザインに興味を持ち人と触れ合える飲食業界へ。2018年4月25日にオープンしたSWTICH KOKUBUNJIの店長となる。人や街をつなぐ食の可能性に魅了されながら日々奮闘中。