SERIES
Food Future Session
2021.12.16. | 

[Vol.4]ふらっと立ち寄れる場が、地域を活性化させる【藤岡響 × Mo:take】

「Food Future session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:take の座談会。
今回は、フリーランスのバリスタ、カフェプロデューサーとして活躍している藤岡響さんとの対談です。

藤岡さんにとっても、Mo:takeの小野正視と坂本英文にとっても、ドリンク、そして食は仕事でもあり、生きていくうえでの毎日の営み。日々、食と向き合いながら、食についてどんな未来予想図を描いているのか、食に関するテーマで自由に語りあってもらう座談会を通して、その地図をちらりとのぞかせていただきました。

今回の座談会には、事前に複数のトークテーマをおみくじ形式で用意。3人それぞれに1枚ずつ選んでもらい、選んだテーマについて、3人で話していただきました。

今回3人が選んだテーマはこちら
ー各自のスキル×食で広がる可能性/藤岡さん
ー食に向き合う時間の価値最大化/坂本
ー料理×○○=地域コミュニティーの活性/小野

焚き火のように自然に人が集まる場を地域につくる

小野:では最後は、僕が選んだテーマ「料理×○○=地域コミュニティーの活性」にいきましょう。地域コミュニティの活性化の手法として、ディープなコミュニケーションでアプローチする直接的な方法と、空き家活性化のようなインフラを整える間接的な方法があるとしたら、Yuinchuが運営するHYPHEN TOKYOはその中間ぐらい、「公民館の中にコーヒースタンドという機能がある」という位置付けです。

今の時代、行為に意味を持たせることに慣れているけれど、昔は目的なしにふらっと集会場に足を運ぶような文化がありました。その、「何があるかわからないけれど、ふらっとコーヒーを飲みに行くか」ができる機能を持たせてみようと思ったんです。そこにコーヒーを置くことで勝手に人が集まり始めて何かをやりだす、そんな機能であり、そのための装置です。

 

藤岡さん:焚き火に似てますね。火がついていたら、誰が焚き火を始めたとか関係なく、自然と人が集まってきますよね。

 

小野:そんな場所が観光地にあってもいいのかな、とも思います。観光地に行く時って、観光以上に食べることが目的になっていることが多いと思うんですよね。一方で、出張でその地域に行く人はサッとパソコンを開けるような行きつけにできるお店を探していたりします。つまり、目立つ観光地がなくても、食文化を盛り上げ拠点となるような場所があれば地域が活性化するのかなと思うんです。

 

藤岡さん:例えばこだわりのコーヒーを飲みながら観光情報をリサーチでき、話題のホットサンドを食べることができて、さらにそこに地元の食材が入っていたりする観光案内所のような場所があったら面白いですね。「観光地に行ったぞ」という満足感も満たされると思いますし。

 

坂本:僕も都内、地方にかかわらず行ったことがない地域に仕事で行く時って、その土地のご飯が楽しみなんです。どこで食べようかなってワクワクするんですけど、良さそうなお店がパッと見つからなかったら、無難なチェーン店でもいいかって感じになってしまいます。

だからこそ、観光案内所みたいなところで地元のものが食べられて、オリジナリティのあるコーヒーが飲めると、日本中の地域はもっと変わっていくと思いますね。

 

お店の情報発信をどうするか

小野:藤岡さんにお聞きしたいのですが、カフェプロデュースのお手伝いをするとき、新規オープンしたお店の情報発信がうまくできなくて、思ったようにお客さんが来ないことがあると思うんです。例えばさっき話が出た観光案内所のようなところのプロデュースを考えると、情報発信の仕方も含めて僕らがプロデュースするべきなのかな、と最近考えています。

 

藤岡さん:お客さんが来るか来ないかは、本当に情報発信の仕方次第ですよね。

慶応大学三田キャンパスの中に、僕がプロデュースしたカフェがあります。重要文化財の一角にあって、ヴィンテージの家具を使っているお店で、大学関係者でなくても誰でも利用できるんです。でも、キャンパスの中にそんなカフェがあることを知られていないので、なかなかお客さんが来ないんですよね。

実際、集客が安定するまで半年ぐらいかかりました。情報発信は地道な作業になるので、クライアントさんの体力次第、という面もありますし。そういう意味では、SNSで店舗の情報などを毎日アップするとか、負荷のかからない情報発信の方法をカフェプロデュースの一部として提案するのもいいかもしれないですね。

 

小野:僕たちがこれまで携わったお店の中でも、いいお店なのに情報発信がうまくできてないという理由で残念な結果になることもあります。情報発信において、どこまで僕らが関わるのか、そしてどこまでクライアントさんにできるようになってもらえばいいか、これからの僕らの課題として取り組んでいきます。

 

スキルを持って領域を超え、飛び出していこう!

小野:では最後に、今回の座談会の感想や発見を、印象に残ったキーワードを交えながら一言ずつお願いします。

 

坂本:こうやって議論することで、今まで以上に深いところまで自分の考えを掘り下げることができ、さらに「この話とこの話を組み合わせるとこんなことができるな」という建設的な会話ができたことがすごく面白かったです。

印象に残っているキーワードは、うーん、悩ましいなあ……。でも、やっぱり「食」ですね(笑)。食に対してこれだけいろいろな方面から考える機会ってあまりないと思いますから。

 

藤岡さん:僕は食の中でもさらに狭い領域であるドリンク業界の人たちにむけて、「もっと大きな食の世界に飛び出していこうよ」と課題提起しています。なので、今日語り合えたことは貴重な経験ですごく良かったです。

印象に残っているキーワードは「越境」です。自分自身のテーマでもあるので、壁を作らずに飛び出していきたい、という思いを再認識できたと思います。

食との向き合い方は人それぞれなので、専門性を突き詰めて行くのもいいし、高級路線もいいし、逆に切り口を変えて遊び心でチャレンジしていくのもいい。ただ、来てくれるお客さんの母数という視点で考えると、身近な食の価値を高めていくこと、気軽に入れるお店の価値を高めることが、お客さんを短時間で幸福にする近道かな、と感じました。

 

小野:僕にとっても、今回の座談会は「越境」がキーワードでしたね。

これまで、僕のような食やドリンクの専門家ではない、プロデューサー側の人たちで議論して越境し、そのプロジェクトに飲食のスキルを持つ人たちに後から入ってもらうという方向で進めることが多かったんです。でも今日、飲食分野の専門家である藤岡さんや坂本と話して、スキルありきで領域を越境することを考えると、全然違う視点で捉えられることに気づきました。

古き良きものを否定せず、かといって凝り固まらず越境して、培ってきたスキルを生かしていく。それは僕の感覚では出てこないものなので、やはりスキルを持っている人たちが越境しようとすることが重要で、その方向を向いて一緒に進んでいきたいな、と思いました。

今日は、とても有意義な話ができたと思います。ありがとうございました!

 

– Information –

HYPHEN TOKYO
WEB:https://hyphen-tokyo.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/hyphen_tokyo/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
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