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意外と知らないローカルフード
2025.06.09. | 

【神奈川】ハマっ子が愛する、港町・横浜の鍋料理とは!?|意外と知らないローカルフード

食の歴史や文化、そして土地の魅力がぎゅっと詰まった“地域の味”を再発見して楽しく紹介する「意外と知らないローカルフード」。このコーナーでは“誰もが知っているあのメニュー”ではなく、知る人ぞ知るローカルフードや、昔から変わらないその土地ならではのこだわりの逸品、時代を超えて今もなお愛される一皿、その「食」の背景にある物語をひも解きながら、その地域ならではの味とは何なのかをカジュアルにお届けします!

第9回目となる今回は『横浜』。6月2日は開港記念日です。
1859年(安政6年)の同日に、五カ国条約にもとづき横浜港が開港したことを記念し、1928年(昭和3年)に定められました。毎年、開港記念日には記念式典が開催され、記念日前の5月から始まる開港記念月間には、ザよこはまパレードや開港祭をはじめ、さまざまなイベントが行われます。開港から166年目の横浜のローカルフードについて、さっそく調べてみました!

文明開化の味がする? 横浜発祥の食文化

さて、今回のローカルフードは、「文明開化」がテーマです。
文明開化とは、明治初期に日本が世界に門戸を広げ、西洋の文化や制度を積極的に取り入れ、近代化していくこと。この時期以降、都市部を中心に、洋風の服装や建造物などが普及し、生活様式が大きく変わっていきます。中でも、日本初の国際貿易港の一つとして明治維新の9年も前に開港した横浜は、いち早く文明開化の影響を受けた街でした。

来日した外国人によってもたらされた舶来品や文化は数知れず。鉄道、ホテル、公園など、日本でよく知られる西洋文化で、横浜が「日本発祥の地」とされているものが多いのもそのためです。

そして、それは食文化も同様です。食パン、カレー、ビール、サイダー、今日本で親しまれているものは、どれも横浜から日本各地に広がっていったとされています。

 

今回紹介するのは「牛鍋」。文明開化の影響を真っ先に受けた横浜ならではのローカルフードです。牛鍋とは、醤油や味噌を使ったたれで牛肉を煮込んだ鍋料理です。牛肉は日本にずっとある食べ物と思われがちですが、日本で一般的に牛肉が食べられるようになったのは、鎖国が終わった江戸末期以降と歴史は浅く、それも横浜の牛鍋がルーツの一つだと言われています。

開港以来、横浜港付近の居留地に住む外国人たちを中心に、主に牛肉を食す習慣があり、それが横浜に住む人々に広まっていくのに一役買ったのが、牛鍋なのです。

 

「牛鍋」こそ、あの国民食のルーツじゃん!

この牛鍋、そして肉食文化が日本に定着するには、大きな苦労がありました。
そもそも、牛鍋は外国人たちが食べていた牛肉料理にヒントを得て、横浜のとある居酒屋の主人が1862年に初の牛鍋屋を開業したのが始まりです。しかし、当時の日本では牛肉を食べることを嫌悪する人もまだまだ多かったそう。
その店でも、店主の妻が猛反対をしたそうで、わざわざ店を仕切って半分を居酒屋、半分を牛鍋屋としていたほどです。それでも横浜の人に広く受け入れられたのは、その調理法に妙があるといえます。

牛鍋は、牛肉を甘辛い割り下で煮込みます。割り下は醤油、みりん、砂糖をベースに、味噌や日本酒を隠し味として加えることでまろやかな甘みとコクが生まれます。長ねぎ、豆腐、しらたき、しいたけ、春菊など、季節の野菜も一緒に煮込み、最後に溶き卵にくぐらせて食べるのが定番です。

ここまで聞いて、ピンと来た方も多いはず。そう、実はこの牛鍋、「すき焼き」の原型なのです。明治時代に横浜で生まれた牛鍋が、その後関西で発展し、全国に広まったのがすき焼きです。
すき焼きは肉を焼いてから煮るのに対し、牛鍋は最初から具材をたれで煮るのが最も大きな違いですが、その話はまた別の機会にしましょう。

とにかく、牛鍋は、ただ外国人の食文化をそのまま取り入れたのではなく、食べ慣れない未知の食材である牛肉を、日本人好みの味付けにすることで日本中に定着させたことに、大きな価値があります。

 

日本の発展と、世界的な活躍に思いを馳せながら…

今の日本では当たり前になった肉食文化。開国当時の日本人にとって牛肉を食べることが革新的なことであっただけでなく、のちの日本にも大きなインパクトがあったといえます。
肉食文化と平均寿命の間には相関関係があるとも言われており、肉の摂取量が多いほど平均寿命が延びる傾向があるそうです。日本人の体格が年々大きくなり、さまざまなスポーツで世界と渡り合えるようになっているのも、まさに肉食文化のおかげでしょう。

さらにいえば、神戸牛や松坂牛をはじめとするブランド牛はWagyu(和牛)と呼ばれ、世界中で人気を博しています。横浜の牛鍋は、日本に肉食文化を根付かせただけでなく、その後の日本の発展にも貢献した、グローバルなローカルフード(?)ともいえるのです。
横浜に訪れた際は、世界と日本の繋がりを胸いっぱい舌いっぱいに感じながら、ぜひ「牛鍋」を味わいたいものです。

 

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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