“美味しさ”以上の価値あるものを提供する
小野が代表を務めるYuinchuでは、Mo:takeを始める前から、レンタルスペース事業を広く手掛けきました。
小野:レンタルスペースという業態は、もともと僕と坂本がいた別の会社がやっていた事業でした。そこから事業を受け継いで独立する形で今のYuinchuが始まったのですが、独立前から僕らはいつもお客様のご利用に立ち会うなかで「どうすれば満足度をあげられるか」と考えていました。
坂本:パーティーなどでスペースを利用してくださるお客様も多かったのですが、お客様が注文している外部のケータリングが、お世辞にも美味しそうと言えなくて。明らかに「チンしました!」みたいなものが、ラップをかけた無機質なトレーに並べられているんです。僕はその会社に入るまで料理人だったこともあって、「スペースだけじゃなくて、美味しい食事まで提供できたらお客様に喜んでいただけるのでは」と思ったんですね。
小野:せっかくなら、美味しいのはもちろんだけど、美味しさ以上の価値があるものを提供したいなって思っていました。「ケータリングってこんなもんだよね」っていう壁を超えたかった。
そんな思いから生まれたのが「体験型」というコンセプトでした。最初は試行錯誤しながら、次々とわいてくるアイデアを形にしていきます。
坂本:いろいろ試していくなかで、僕が好きなカラフルな色やアンティークのものがテーブルコーディネートとすごく相性がいいことがわかってきたんです。そこから装飾だけじゃなくて、料理もカラフルな野菜などの色を活かして作ってみようと、方向性が決まっていきました。
そのなかで生れたのが、「テーブルをお皿に変えてみよう」という発想です。
坂本:テーブルの方がどう考えてもお皿より大きいので表現方法の幅も広がると思ったんです。ただ、いろんな葛藤はありました。テーブルに直接料理を置いて食べることは、日本の文化的には若干タブーですよね。だから、どうすればお客様が食べやすくなるか、一つのスタイルとして受け入れてもらえるか、すごく考えました。こんなふうにやってきて、今がある感じですね。
つながるパンがつくり出した、体験の可能性
Mo:takeを2015年に立ち上げて約3年。これまでたくさんのケータリングを届けてきたなかで、2人のなかで強く印象に残っているのは、ケータリングを始めたばかりの頃のこと。ある医療団体からの依頼でした。
小野:その医療団体主催のセミナーが終わった後の懇親会でケータリングを提供させていただきました。先方からのご要望は、いわゆる「会議室」での懇親会なので、せめてテーブルだけは彩り鮮やかにしたいということ。そこからヒアリングをしていくなかで、そのセミナーのテーマが「つながる」だとわかったので、そのテーマを踏まえていろいろ考えた結果、パンを使って「つながる」の「つ」をひらがなで表現したんですよ。
坂本:バケットサンドに切り込みを入れてつながっている状態を作りました。全部のパンがつながっている状態を作って、お客様が手に取って食べることでお客様同士がつながっていくことをメニューのコンセプトにしたんです。とてもインパクトのある見た目なので、それを見た人が「これってどういうことですか?」って聞いてくれるんですよ。だから、「つながるっていうコンセプトなんです」と説明する。そうすると、それをきっかけにどんどん一体感が増していったんです。料理を囲みながら。体験型って必ずしも大それたことをする必要はなくて、一人ひとりがコミュニケーションをとるきっかけをつくることが体験なんだなと実感できた経験でしたね。
小野:ああ、これが僕らがやりたいことのすべてかな、くらいの感動がありました。
坂本:実際にお客様の反応が返って来るたびに、やっぱり大事なのはこうした体験なんだなと再認識ができますし、常にその時の気持ちを忘れずに提供し続けています。
次回は11/13(火)に公開予定です。
最終回は2人が思い描く、Mo:takeの未来図について語っていただきました。Mo:takeだけではなく、飲食業界に携わる人のためにも今できることにチャレンジしている2人のお話をどうぞお楽しみに。(続く)