SERIES
小さな循環を可視化する人たち by FARM SPOT
2025.12.05. | 

【Vol.2】食べられる土”も登場!身近な循環のヒントを探るトークイベント

FARM SPOT がプロデュースするシリーズ「小さな循環を可視化する人たち」。前回に引き続き多摩エリアの“小さな循環”をお届けします。10月18日、ニューマチヅクリシャさんの活動拠点となる多摩ニュータウンの「J Smile八角堂」で開かれた「つちとまちPROJECT トークイベント」。

今回はこのイベントに『FARM SPOT』のメンバーで土の専門家チーム「DOJOYラボ」代表の愛敬義弘(あいけい・よしひろ)さんと「Mo:take」の坂本英文(さかもと・ひでふみ)がゲストスピーカーとして招かれました。FARM SPOTとしても、ニューマチヅクリシャさんとの初のコラボイベントです。

Vol.1では、愛敬さんと坂本の講演内容を振り返りました。今回のVol.2では、一般社団法人まちやまの代表・塚原宏城(つかはら・ひろき)さんと、ニューマチヅクリシャの杉山智子(すぎやま・ともこ)さんも加わって、「つち」と「まち」や「人」のつながり、そして、その可能性についてたっぷりと語り合ったトークセッションの様子をダイジェストでお届けします!

“土と人”の距離を縮める?

「土と人の距離が離れると、生き物や作物との距離が遠くなる気がします。登壇者の皆さんには、その距離を縮める活動を通じて、感じたことや皆さんが大事だと思っているポイントなどを教えてほしいです。」

モデレーターの寺田さんのこんな問いからスタートしたトークセッションは、土と人の距離について、登壇者それぞれが日々の実践からのお話しを交えてトークセッションに。 そこで共通していたのは、 “特別な体験だけでは土と人の距離は縮まらない” という視点でした。

普段の生活の中で、土に触れる体験としては、想像した時「収穫体験」や「農業体験」といったイベントごとが頭に浮かぶ人もいるのではないでしょうか?

愛敬さんからは、
「収穫体験」や「農業体験」などこうした農体験の大事さはありつつも、体験する人からしたら非日常の体験の“イベントごと”になってしまいます。 だからこそ、 暮らしの延長で土に触れられる仕組みや、キッカケをどう作るかが大切だと思いますね!」という話しがありました。

その言葉の中に、ヒントがたくさん詰まっているようでした。

また、現在、多摩市内の公立小学校で菜園授業のお手伝いをしていて、いろんな子どもや親御さんと関わっている塚原さんは、「先生方も土に触れる経験が少なかったり、興味のない人にどうやって届けるかも重要だと考えています。土に触るといっても、体験自体が面白くないと土と人の距離は縮まらないので、とにかく楽しんでもらえるよう意識していますね!」と話します。

またベーカリーの運営を通して地域と生産者さんと関わる杉山さんは、「食には関心があっても、土や農業への関心は薄い方は多いように感じます。生産者への感謝はあるけど、やっぱり土に触れる機会が多くなればもっと距離は縮まるのかなって思います!」と“食べること”と“農の距離”が意外と遠いと感じているそうです。

 

そして坂本は、
「今日展示しているコンポスト屋台も、デザインで面白さを感じてもらい、それをキッカケにコミュニケーションが生まれて、コンポストや堆肥に興味を持ってもらえる。そういう流れを大事に、ニューマチさんや僕たちが手がける一見コンポストに見えないコンポストのように、“なんだろう?”と思わせることや、みんなでコンポストを作ったりすることも“楽しさ”や“自分ごと”になるキッカケになるんじゃないかと思います!」という視点で、“いろいろなデザインの力”も一つのポイントになるということを伝えました。

登壇者の話に、参加者の皆さんが何度もうなずいていたのが印象的でしたが、やはり日常に土に触れて、楽しいと思える体験をしてもらうことで、自分ごととしてインプットされると生き物や作物との距離も身近に感じられるのかもしれませんね!

ニューマチヅクリシャさんが「まちづくり」を進める多摩ニュータウンでの活動では、農家が少ない地域だからこそ、地域の方々が馴染みのある公園に「コミュニティガーデン」という場で、地域の人たちが土に触れることができて、作物をみんなで育てる体験などで、土を起点とした体験の楽しさや生産者さんを身近に感じるキッカケが生まれているようです。

そうした場でコミュニケーションが生まれ続けることで、土との距離が縮まり、地域の循環が続いていく、そんな未来の景色が浮かんできます。

 

土づくりを通じたまちづくりの可能性とは?

トークセッションの後半は、皆さんがそれぞれの活動をしている中で抱く葛藤や、課題についての話題に。

どんな話だったのか、ここは当日のトークセッションの様子を少しお届けします。

寺田さん:先ほどのお話しで(Vol.1)、DOJOYラボさんの活動の3本柱で「育てる」という言葉が出てきましたが、具体的なイメージや課題があればぜひ教えてください!

 

愛敬さん:たとえばFARM SPOTでもサポートした「Mo:take STUDIO 代官山」のバルコニーでは、そこで開催されたイベントなどで出た生ごみを資源として活用する小さな循環ができています。でも、「小さな循環」の活動を広げて、近隣家庭から毎日出る生ごみを集めて活用する、ということまでやろうとすると、ハードルは思ったよりも高いと考えています。

というのも、生ごみを分別・回収して堆肥として活用しようとすると、工場のような設備、運用の仕組みなどのインフラを作る必要があり、私たちだけで取り組むにはかなり難しいことです。

だから現実的に、これは行政に任せた方が良いと思っています…とはいえ、行政に任せるとしても、ただ回収して、堆肥にするという仕組みを作れば、良いというわけではなく、小さな循環で生まれるコミュニケーションを失わないようにするのが重要なポイントなんですよね。

こうした小さな循環と大きな循環の間の、中規模の循環を作ることが大事だと考えていますが、ここが悩ましいところですね。

 

寺田さん:今のお話しを聞いたご来場のみなさん、すごくうなずかれてますね!

 

塚原さん:私もすごく共感します!コミュニティが生まれたり、教育的な効果も期待できるので多摩ニュータウンの中に、こうした循環させる仕組みがある空間をもっと増やしたいと思いますね!

「人と土は本当は一体なんだ」って気づいていない人が多いから、身近に小さな循環があると、人と土の繋がりから生まれる学びやコミュニケーションの大切さに気づくキッカケになるんですよ。

ただ中規模になると担い手やお金の問題も出てきますから、ビジネスとして成り立つ形があるといいなぁと思いますね。

 

堆肥あるある!?参加者のリアルな堆肥事情

こうして、みなさんのトークを聞きながら、私はずっと「なるほど」とうなずきっぱなしでした。“小さな循環と大きな循環の間をどうつなぐか” という話から、まちの未来をつなぐ、そんな希望をふっと感じさせてくれる時間でした!

学びあり、気づきありのトークセッションを終え、最後に参加者の方々からの質疑応答へ!
印象的だったのは、参加者のみなさんが、すでに自分の暮らしの中で“小さな循環”を始めている方々が多いということ。

暮らしの中で感じるリアルなお悩みも多く、虫が苦手、堆肥の熟成が難しい、コミュニティの中でどう始めるかといった具体的なお悩み相談もありました。そのひとつひとつに、登壇者が丁寧に答えていきながらも、時間の都合もあり、名残惜しくトークセッションは終了。

今回のイベントは、登壇者の話を聞いて学ぶという側面もありつつ、参加者のみなさんが日常の中で土に触れていたり、コンポストに取り組んでいるなかで出てきた課題をシェアする場にもなっていました。このイベント会場にいた皆さん全員が一体となって「つちとまち」について考える機会になっていたと感じます。

 

「土」が主役!?驚きの新感覚ケータリング

こうして会場の皆さんとのコミュニケーションをとりながらトークセッションが終わり、寺田さんの案内で後ろを振り返ると……なんと先ほどまではなかったケータリングが登場していました!

近くで見ると、机の上にはオープンサンドが並んでいるんですが、その周りにふんだんに敷き詰められているのはまさかの「土」!?今回のケータリングは企画に添ったメニューということですが、この豪快さには参加者の皆さんも驚いたご様子で興味津々!

まるで土にオープンサンドが埋まっているようなこのメニュー。実はこれ、Mo:takeが手がける食のコンテンツ…土のように作ったドライドレッシング、その名も「食べられる土」なんです!今回は、杉山さんが「J Smile八角堂」で運営するモイベーカリーとMo:takeのコラボ!

モイベーカリーから提供してもらった焼き立てのパンと「食べられる土」を使った、この日だけの特別メニューということで、今回の食のコンテンツについて坂本と杉山さんに少しだけお話しを伺いました!

 

−−坂本さん、すごいインパクトで皆さん驚かれてますね!

坂本:嬉しいですね!Mo:takeのケータリングは「体験型ケータリング」がコンセプトで、「感動や驚きをキッカケに、「これ面白いね」「どうなってるんだろう?」とコミュニケーションが生まれることを大事にしています。 だから今日のイベントにぴったりだと思いました!

この土のようなものは実は「ドライドレッシング」なんです!今回はこの周りにある「食べられる土」をオープンサンドにかけて食べてもらうスタイルなんです。

オープンサンドは杉山さんからパンを提供してもらい、10時に焼きあがったばかりです!そしてパンの上には、DOJOYラボさんから提供頂いた循環野菜で、作ったマッシュポテトをベースに塗って、赤と緑の水菜、ピキーニョ、唐辛子、ルッコラ、玉ねぎ、ラディッシュを乗せてます。

 

−−なるほど!この「食べられる土」も今日のお話しにあったように、楽しさや興味をもつキッカケを作ってくれるものになりますね!

 

インタビューをしている間にも、“食べられる土”をサンドイッチにかけて、新しい食体験をした参加者の皆さんからは「なにこれ!すごい!」「美味しいです!」と驚きと美味しい感情が入り乱れた感想が飛び出します!ここで杉山さんに、パンへのこだわりについても伺いました!

杉山さん:今日ご提供させていただいたのはカンパーニュというパンで、今回のこのメニューに合わせて全粒粉を多めにして気泡を減らし、もっちりした食感に仕上げました。
実は気泡をなくすことで、土が落ちないように工夫しているんですよ。

 

−−なるほど!「食べられる土」が落ちない工夫もあって、気泡が少ないのでもっちりに仕上がっているんですね!わたしも早速いただきましたが、これ一つで大満足な一品になりますね!

 

こうしてイベントは無事に終了。ケータリングを囲みながら、登壇者も参加者も垣根なく、今日のイベントを振り返りながら盛り上がる人、質問をする人、料理について話す人、それぞれのコミュニケーションがあちこちで生まれまていました。
また、この日提供したお料理の調理の際に出た生ごみも、コンポストに入れて土に還すということで、まさに小さな循環を可視化する瞬間にも立ち会えるイベントでした。

帰り際、入り口に展示されている『FARM SPOT』のコンポスト屋台に手を触れる人の姿もあり、「土」と「まち」をめぐる発見や気づきが、会場のあちこちに広がり、やがて小さな循環へとつながっていくように思えました。

それぞれの異なる立場で“循環”をつくる人たちのつながりは、分野は違っても、日常で取り入れられる「小さな循環」のヒントがたくさんありそうです。

今回のイベントにFARM SPOTが参加し、地域のみなさんとお話をする機会をいただけたこと、改めてニューマチヅクリシャさんに感謝をしつつ、これからの「つちとまちPROJECT」がどう未来に繋がっていくのか。今後も注目していきます!

 

– Information –
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DOJOYラボ
FARM SPOT
つちとまちPTOJECT
ニューマチヅクリシャ
Instagram(ニューマチヅクリシャ)

 

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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